幕間 薄暗くなった王城

 ライトが去ったあとの王城。

 素人目にはわからないような異変が起こっていた。


「おい、なんか魔法の明かりが暗くないか?」


「おかしいな……。普段と同じくらいの力で魔力を込めたはずなんだけど……」


「魔道具の故障か?」


「そうかもしれないな。あとで見てもらおう」


 城の中が薄暗いと、照明を担当している者たちがざわついていた。

 魔力で灯るたいまつ型の魔道具が、なぜか反応を鈍くしているのだ。

 魔法使いたち以外は、少し気になる程度。

 しかし、異変はそれだけではなかった。


「う、うわっ!? 俺の召喚獣が制御できない!?」


「俺の方は……普段より持続時間が短いな……」


「回復魔法の効きも弱いです……」


 照明だけではなく、魔法使い全体に影響が出ていた。

 魔力に関するものが、すべてワンランク効果が落ちている。

 城というそれなりの範囲で、同時に起こる現象としては珍しすぎるケースだ。

 何が原因かは皆目見当が付かない。

 魔法使いの中で疑念が広がっていく。


「これだけの影響だ。神が作りし伝説の装備が蘇って――」


「いや、きっと地下に新種の災害級モンスターでも現れて――」


「もしかして……ブルーノが喚び出した、不吉な黒いキングレックスが何か関係あるのでは?」


「たしかにタイミング的に……」


 その中で、先日ブルーノが喚び出したキングレックスが話題にあがった。

 喚び出した当初は黒い風が巻き起こるくらいだったのだが、それから徐々に召喚獣自体が黒いもやに包まれるようになっていった。

 初代王とは色の違う黒いキングレックス。

 宮廷召喚士副団長の息子ということで多少のことは目をつぶっていたのだが、この状況になって不吉と言われ始めたのだ。


「チッ、オレのせいなはずがあるかよ」


 ブルーノは酷く機嫌が悪かった。

 キングレックスのことだけではなく、婚約者になれそうだと思っていた第三王女のソフィが会ってくれないからだ。


「まだライトのことを考えてるのかよ……クソが……」


 城に居づらいブルーノは、逃げるように街へ出かけるのであった。




 ――この異変の正体、それはライトが消えた日から始まっていると気付いた人間は誰もいなかった。



――――――


 あとがき

 次回、第二章スタートです。

 一区切りということで、評価として☆を頂けたら作者のモチベーションが上がります!

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