第17話 転校生は猟奇的

教室に入ってきた転校生は女性だった。


ザッザッザ!


歩き方は軍人のように力強くて速い。

身長はさほど高くないが、纏っているオーラは強大で、野性的で、冷酷で、重い。

息苦しいほど圧迫感を感じる。


教台に立ち、堂々と話し始める。


「私はルイ・エナジー。貴様らと同い年にあたる。先日シグマーノ4世様より、

この学校の、このクラスに、入隊するように命が下った。帰任日までよろしく頼む!」


髪はショートカットの金髪で、

前髪を三つ編みにして耳にかけている。

外人の整った顔つきだが、目が恐い。

獲物を狙う野獣のように、鋭く光っている。


「な、なんか、凄みがあるな。」

「この息苦しい感じ。俺けっこう好きかも。」

「あの目。俺を狙ってるに違いない。」

「栗田キモいぞ。」


男どもと栗田がキモい。


「え?シグマーノって誰?」

「ちょっと痛い系?」

「でも、ちょっとカッコいいかも。」


ルイさんに対する評価は、男女共に賛否両論といったところだ。


「では、ルイさん。栗田の隣の席に座りなさい。」

佐野先生が栗田を指差して言う。


「了解した。」


ザッザッザッ!


「おおおおい!俺にも女神が微笑みやがったぜ!!うっほほい!!」


栗田は最近、性欲モンスターのようになっていた。

なぜなら、俺ばかりに美女との、美味しい展開が訪れ。

栗田には、女の子は見向きもしない。

隣の席の女の子は、栗田のせいで転校したとまで言われている。

そのため、焦りと不満が溜まりに溜まり、

栗田を性欲モンスターに変貌させた。


ザッザッザッ!


「来たーーーーーーー!!」

「退け。」


ブンッ!!

バキッッッ!!!!


「く、栗田!!」


栗田はルイさんの裏拳をくらって、隣の席まで吹き飛んだ。


ドカッ!!


栗田のいなくなった席にルイさんが、

俺の方に椅子を向けて座る。


「貴様がシグマーノ様の主か。」

「え?」

何を言ってるかわからない。

シグマーノって、たしか、どっかの国の革命軍リーダーだったよな。

その人の主が俺?


「とぼけた面構えだ。にわかには信じ難い。貴様がシグマーノ様の主とはな。」

「初対面の人に、そういう事言っちゃダメだぞ。」

「ふっ、甘ったるいことを言う。シグマーノ様の主が貴様のはずがない。」

ルイさんは右の拳を握り裏拳の体勢に入る。

「ちょ、ちょっと待て!!俺はシグマーノの主だ!!」

つい適当な事を言ってしまった。

だが、今も白目を向いてピクピクしている栗田を見たら、言わざるおえなかった。


「ほう。では、問おう。シグマーノ様どうやって、この世に産まれた?」

「…え?」

ええぇ!?それは誰かと誰かがエッチして、産まれたんだろ!?

人間の産まれ方なんて全員同じだろ!!

でも、これを問題にするってことは、特別な産まれ方をした、人間だったに違いない。

「南の大陸で、猪と戦っていた獅子が、猪に止めの一撃を放った時、

太陽が西から出て獅子の目を焼いた。目を焼かれて一撃を外した獅子は体勢を崩し、

己の喉に猪の牙を深々と刺してしまった。。その横で男女がエッチをして産まれた。」

「違う。」


よし。西日の奇跡がエッチした男女の横になかったことはわかった。

次は、北日の災いがエッチした男女の横にあったか確かめよう。

こうして一つ一つ可能性を消していこう。


「正解は、神、スズキーノ三世により創造された。」


スズキーノ三世!?

俺じゃん!?

いや!正確には、シグマの基本設定の中の俺じゃん!!

待てよ??

点と点が繋がっていく。

きっと、シグマはあの日、俺から離れて国外に出たんだ。

そして、一ヶ月で俺の学校を掌握するほどの、

カリスマ性を存分に使い、革命軍を統率する立場まで、のし上がったんだ。

たぶん。

だとしたら、主の証明は簡単だ!!


「身長は165cm、傷の急速再生。車より速い脚力。

男女問はず魅了する美貌。」

「ほう。問いてはないことだが、いずれもシグマーノ様の特徴に当てはまる。

だが、メディアにその特徴は報道されている。主とは認められない。」


げげ…他のシグマの情報を言わないと。。

何かないか。マニアックで分かりやすいシグマの特徴は。。


「あ。恐竜のTシャツ着てないか?」

俺の発言に、登場から常に鋭かった目が、僅かに緩む。

驚いているようだ。


やはり、あの日公園で、パンツ一丁で気絶していた理由は、シグマが俺の服を剥いでいったからだな。


「それを知っているのは側近の私のみ。正解だ。

貴様はシグマーノ様と近しい仲だったと認めよう。」

「主とは認めてくれないらしいな。まぁいいさ。

気が済んだなら授業を受けようじゃないか。」


栗田が吹っ飛ばされてから、全員が俺たちに注目しているに違いない。

会話を聞かれても、何の話だか理解できないだろうが、注目は極力浴びたくない。

この場は先生に収めてもらおう。


「ふっ、そうだな。貴様を問いただす時間はたっぷりある。」


ルイさんは、ようやく体を先生に向けた。


「ふぅ。。」

とりあえず、裏拳の危機を乗り切り、辺りを見渡す。


「アッハハハハ!!栗田マジうける!!」

「栗田きもいぞ!!はっはっは!!」

パシャパシャパシャ!!

「栗田!!寝るんじゃない!!」

パチーン!!


先生も生徒も、俺とルイさんの会話より、

気絶した栗田に興味津々だった。。

よくやった栗田、こういう時に助けてくれる奴こそ、

本当の友達なんだろうな。きっと。






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