第6話 ゴミの価値


「いらっしゃいませ。当店は買い取り専門となっておりますが、どういった御用件でしょうか?」


店に入ると男性の店員が出迎えてくれた。


間違って買い物客が入って来たと思ったのだろうか。僕は慌ててハンカチに包んだ金と銀の金属片を取り出した。


「これが引き取って頂けるモノかどうか、鑑定して頂けませんか?」 


店員に渡しながらそう伝えた。


「ちょっと測定致しますのでお預かり致します」 


彼はカウンターの向こうにある測定器を使い、それが何なのかを調べ始めた。


「おにいちゃん、金とかだったらどうする?」


みのりは何故か楽しそうな口調でそう言った。


「道端や部屋のすみに投げ捨ててあったモノだからなあ、あんまり期待はしてないよ」 


僕はあまり期待もせずにそう答えていた。


スマホを取り出しタイマーを見る。 

もしもまた転移するのなら、今日も夕方の6時位になりそうだった。


昨夜は何事も無く夜を過ごせたが、みのりの言うようにテント位は持って行かないと雨でも降られたら辛い夜になりそうだった。 


この店を出たらアルペンにだけは行くのを忘れない様にしよう。


もう1つ気にかかっている事があった。

 

それはあの狩人達のものものしい武装した姿を見ていたから、もしもそれが必要な相手と夜に出会ってしまっても身を守るすべが何も無かった。


家にある物でと言ったら、包丁、父のゴルフクラブ、中学の修学旅行の時記念に買った木刀位なものか。 


何を持って行けば良いのか悩んで居ると店員の呼ぶ声が聞こえて来た。

 

「お待たせいたしました。」


3分と掛からずに結果が出たのが僕は少し意外に感じた。


「こちらは純度99.99パーセントの純金になります。それでこちらは純度100パーセントのプラチナになりますね・・・お売りになりますか?」 


部屋に捨てられた金属片が、見た目通りの金とプラチナだった事に正直あまり驚きはしなかった。 


みのりは目を丸くして僕の顔を見ていた。


エルフのエミリアを見ての驚きに比べれば、異世界なんだからそういう事もあるのかな?程度の感慨だった。


ただ転移させられたらバイトや就職活動が不可能になるので、お金を稼ぐ方策だけは何とかなりそうで少し安心した。


「おにいちゃん、どうする?売るの?」 


みのりはこの小さな金属片が幾らになるかと興奮していた。


「売るとおいくら位になりますか?」 と聞いてみた。


店員は何やらプリントアウトした表を眺めながら、書類に数字を書いていた。


「純金が2グラムちょうどで、プラチナが2.5グラムありますので、買い取り価格は今日の相場ではこうなります」


見積りには1万8045円の数字が書かれていた。


それが異世界で道端に捨てられるゴミの価値だった。


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