第68話 生徒会執行係

 迷路エリアの木製の家が立ち並ぶエリアにてーー


 ここは木製の家が不規則的に立ち並び、屋根の高さもバラバラであるその戦場。

 その周辺の道は狭く、そのかわり多くの抜け穴が存在する。


「幹部様。相手は既に後方の部隊を……」


 一人の男が喋るのをやめる。

 この戦場において、喋るのをやめるということは二つの理由がある。

 一つは気絶したり恐怖によるもの。

 もう一つは、ペイントを体に付着させられること。

 この場合、後者が正解である。


「幹部様。後ろにいた五人の姿が見えないのですが……」


 一人が心配そうに言う。

 だが屋根の高さがバラバラであるこの戦場では、味方がどこにいるのかさえ見失ってしまう。

 幹部ははぐれたのだと思い、一旦停止する。


「お前ら。一時休憩だ」


 その言葉が幹部の彼から放たれた途端、幹部についてきた四人は一斉に体を屋根の上に転がす。


「相当疲れていたのか。やはり大人になっていくと色々と衰えてくるんだろうな」


 この部隊を指揮している幹部は、他のPTAメンバーより少し若く、二十九歳という年齢であった。

 非常に若く、彼は策略の天才である。

 だが、策略は圧倒的な力の前では無価値であることに、まだ彼は気付かない。


「お前たちはここにいろ。俺が少し後ろを見てくる」


 幹部の男は後方にいる部隊のもとへ行くが、そこで目にしたのが青いペイントに染まった彼らであった。

 それを見た彼は、すぐに何かを察知し、さっき休憩させた者たちを見る。


「うわあああああ」


「い、いきなり誰だ!?」


「て、敵だああああ」


「助けえええええええええ……」


 四人は青いペイントに染まってしまった。

 彼らを青という色で染めた者ーー生徒会執行係。

 彼は一本のペイントが塗られた固まを握っている。


 もし彼の刀に塗られているペイントの色が赤ならば、誰もが人を殺したばかりの侍と見間違えるだろう。


 そんな彼を見て、幹部の男は少し震える。

 圧倒的すぎる存在を目にした彼は、その男を恐怖としか認識していなかった。


「お前、いつからそこにいた?」


 幹部の男はハンドガン型のペイント銃を執行係に向けて問うも、執行係の男は何も答えない。


「なるほど。クールだな」


 幹部の男は執行係を前に少し怯えているが、武器を捨てるほどではない。


「降伏しろ。降伏すればお前はペイントまみれになることはないぞ」


 幹部の男は言うが、やはり執行係の男は沈黙を貫く。

 幹部の男は執行係の男が何も答えないのだと察し、ペイント銃をしっかりと構え、狙いを定める。


「これで、終いだ」


 幹部の男はペイント弾を執行係に向け放つも、執行係は華麗なステップで全ての銃弾を避けた。

 さすがの回避能力に、幹部の男は驚く。


「さすがにそれはないだろ……」


 執行係はあっという間に幹部の男の背後に回った。


「これで……俺も終いか……」


 執行係は沈黙を貫き、幹部の男の首を斬ることで、青いペイントを付着させる。

 幹部の男は倒れた。


 そんな静寂の戦場で、彼はある人物にメールを送る。


【from執行係

 このエリアにいた全PTAメンバーは討伐。

 私は引き続き討伐を続ける。

 返答は不要】


 執行係は携帯を閉じ、ポケットにしまう。

 その後、彼は戦場を駆ける。

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