第67話 目良総操

 迷路エリアの外ーージャングルエリアにて


 住宅が立ち並ぶ迷路エリアを囲むように、ジャングルが生い茂っている。

 木々がきれいに生え揃うその場所でも、戦いは起きていた。


 青いペイントと赤いペイントが一緒くたに交じり合い、戦いを繰り広げる。


「ちっ。少し厄介な敵だな」


 一人で十人ほどの相手と戦っている男ーー目良総操は、ハンドガン型のペイント銃を両手に持ち、木の陰から銃を乱射してくる相手を狙い撃つ。


「ちっ。木が邪魔だ」


 目良のペイント弾は全て木に当たり、まだ二人しか倒せていない。


「残り八人。だが数が多すぎる」


 目良は苦戦していた。

 目良はロッククライミングや跳び箱など、運動なら何でもできる男でったが、冷静さだけは人一倍ない。

 目良は今、多くの相手に囲まれ、冷静な判断ができていない。


「奴を右から追い詰めろ」


 目良の相手は確かにそう言った。

 だが、相手が現れた方向は右ではなく左。

 冷静に考えれば逆で指示しているのだと理解できるが、今の目良ぬはそれほどの冷静さはない。


「さすがにキツイ」


 目良の呼吸は深くなっていくばかり。

 目良はいくら走っても、八人という敵から逃れることはできない。


「諦めな。もうお前の負けだよ」


 目良は止まった。

 なぜならば、目良は八方を敵に囲まれたからーーその内の一人、筋肉が全身に異常なまでについている男ーー彼はPTAの幹部である。


「負けているんだよ。俺を相手にした時点で」


 その男は、目良を見下しながら言う。

 目良は銃をその男に向けたが、PTAの幹部の男は一瞬で目良の背後に回った。


「何!?」


 あまりの速さに目良は驚き後ろを向くが、その前に目良は殴られ、遠くに飛ばされる。

 後方に吹き飛んだ目良は、銃を一つ手放してしまう。

 目良が手放した銃を、PTAの幹部は拾う。


「ゲームオーバーだな。生徒会」


 PTAの幹部は銃を目良に向けた。

 目良は終わったかに見えた。


「なあ、敗北って、どんなことを思う?」


 PTAの幹部は足下に何かがあるのを察知する。

 丸い球状の物体ーーペイント爆弾


「一つ良いことを教えてやろう。俺は生徒会メンバーの中でも、混乱状態から冷静な状態になるまでが誰よりも速い」


 そう。

 目良は殴られた時、既に冷静さは取り戻していた。

 だから彼は殴られた瞬間、幹部の男の足下にペイント爆弾を転がしておいた。


「さようなら」


「くそおおおおおおお」


 幹部の男とともに、その周囲にいた全てのPTAメンバーは青いペイントに染まる。

 目良は一人で十人のPTAメンバーを倒した。

 彼はゆっくりと立ち上がり、木に寄りかかって電話を掛ける。


「ああ。今、ジャングルエリアにいた敵も全て討伐」


「よくやった。あとは自由に行動していろ」


「分かりました」


 目良は静かに電話をきる。

 そして目良は銃を両手に持ち、迷路エリアき入る。


「やはりスリルのある人生は、最高に楽しいじゃんか」

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