第三章 『神人類』

 神々の世界において、反逆者というものは全て神であった。

 たとえどんな理由があれ、神よりも弱い生命体、つまりこの世にいる全ての生命は神という圧倒的過ぎる存在には太刀打ちなどできるはずもない。


 ーーそれは人が限界を超越していない場合


 今、神崎天矢という努力で塗り固められた存在が、圧倒的力を持って、神に挑む。


「久しぶりに楽しいゲームになりそうだ」


 神崎天矢は人差し指で自らに神と刻む。

 これこそ神崎天矢が所有する一つの能力。

 ーー書く魔法ライティングマジック


「天矢様。オリュンポス十二神が動き出しました」


 一人の兵が神崎天矢に報告する。

 神崎天矢は予知していたように笑う。


「案内しろ」


「はっ」


 その者は、神崎天矢をオリュンポス十二神が現れた場所に案内する。

 そこは平野。

 神崎天矢が連れてきた戦士が多く倒れていた。


「おい。オリュンポス十二神はどこだ?」


 神崎天矢は案内人に聞いた。

 するとその男は薄気味悪く笑う。


「神崎天矢。俺はオリュンポス十二神の一柱、ゼウスだ」


 そう言うと、その者の姿が少しずつ変貌する。

 細身だった男の姿は、大型の筋肉質の強面の男に変わった。


「ゼウス!?」


 ゼウスと名乗る男は体に電気を纏っている。

 ビリビリと流れる電流は、黄色から青、青から黄色に変わっていく。


「神崎天矢。お前じゃ神の頂点には立てない」


 ゼウスは上から目線で神崎天矢を見下す。


「ゼウス。君は一つ勘違いをしている。神の世界にある憲法。その一つ」


 神崎天矢はポケットから一枚の紙を取り出す。神崎天矢はその紙を広げる。そこに書かれていた言葉。


「神に人が下克上できるもう一つの条件、それは正式に神と遊戯をすること」


 神崎天矢は最初から決めていた。

 神と異能で戦うつもりはない。ただ異能で遊戯すると。


「ゼウス。お前は知っているか?」


「あ?」


「異能ドッジボール。始めようぜ」


 神崎天矢は空中に"仮想世界"と指を走らせる。その瞬間、ゼウスと神崎天矢の周りの景色が平野から砂浜に変わる。


 神崎天矢の背後には十一人の人間が。

 ゼウスの背後には十一名の神が現れた。


「十二対十二の異能ドッジボール。当たれば脱落のこのゲーム、どちらが最後まで生き残れるか始めよう」


 神崎天矢の手のひらにはボールが乗っている。


「最速ショット」


 神崎天矢の投げたボールは、ゼウスに当たって弾けた。

 ーーゼウス、脱落

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