第34話 どうして俺は……
月島さんは泣きながら俺に抱きついてきた。その表情から寂しさがうかがえる。
「神崎くん……。私、お父さんとお母さんが病気で倒れて寂しかったんだよ。一人になって寂しかったんだよ。家に帰っても誰もいない。そんな寂しい生活を送ってきた。神崎くん。助けて……」
喉が枯れながら月島さんは俺に言った。
魔法で二人の病気を治せるなら、月島さんはまた笑顔を見せてくれる。でも、俺にはそんな魔法を持っていない。
「神崎くん……。今日はお見舞い行かなくていいから、私の家に来て」
「……ああ」
今の俺には、月島さんから一時的に寂しさを紛らすことしかできない。でも許してくれ。俺は、弱いから。
もし病気を治す魔法があったら、そんな魔法があったら。
そんなことを考えている間に、俺は月島さんの家についた。
「神崎くん。風呂入っていいよ」
「え!?」
「大丈夫。覗かないから」
そう言った月島さんの目には、一粒の涙がこぼれ落ちていた。
俺は脱衣場で服を脱ぎ、月島さんの家の風呂に入る。普通だったら興奮するシチュエーションなのに、今はなぜか興奮しない。
俺は風呂の壁を叩いた。
「どうして……どうして俺は、月島さんを救ってやれないんだ? 救いたい。護りたい。でも、なんで……。この
ーー
俺は何もできない自分に腹を立てた。
いつも何もしていない俺だから、何もできなかった俺だからこの力を誰かの為に使いたかった。
でも、ここで月島さんを助けられなかったら、俺は一生後悔する。この力を一生憎み続ける。
何で……何で……
そんな俺のもとに、一冊の本が歩み寄ってきた。
「魔法の書!?」
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