月島編

第33話 神崎天矢という神の存在

 俺たちの脳内に聞こえる声。それが神の声という確証は無いが、神と言っている以上は真実ほかない。


「君たちはとても愚かだ。だから君たちには少し罰を与える」


「罰?」


「ああ。リセットという名の罰を与える」


 おいおい。やめろ。


「やめろおおおおおお」


 その時、世界は再び時を戻した。これは何度目なのだろうか。それは神にしか知り得ないことだ。

 これほどまでに楽しい世界であったというのに、俺はまたやり直さないといけないのか?

 忘れてしまうかもしれないのに。失ってしまうかもしれないのに。もう二度と会えないかもしれないのに。


 だが、世界の歯車はもう戻ることを止めない。


 ーーー


 俺は、いつのまにか寝ていたらしい。確か昨日は入学式があって、そこで月島杠という女子とメールアドレスを交換したんだ。

 壁につけてある時計を見ると、まだ時間は朝の5時。


「速いものだな」


 俺は昨日見つけた魔法の書を見て、魔法の練習をする。

 机の上には一本の鉛筆が乗っている。


書く魔法ライティングマジック魔法No.9 操作空間コントロールエリア


 俺は鉛筆に向かって"操作空間"と指を走らせる。そして鉛筆に意識を向けると、鉛筆は俺の意思通り宙に浮く。だが集中力はすぐに切れ、鉛筆は机に戻る。


「やっぱり集中力が無いと、この魔法は難しいな」


 この魔法は自分の意識をその物体に向けることで、その物体を自由に動かす魔法。だから気がそれればこの魔法は使いこなせない。


 それから俺は何時間も練習し、いつの間にか時間は朝7時30分。

 ここから学校までは20分でつくからギリギリだ。


 俺は家を飛び出し、学校までチャリで駆け抜ける。


 学校に行く途中、俺は月島さんに遭遇した。緊張していたが、俺は月島さんにナチュラルに話しかける。


「月島さん。おはよう」


「神崎くん。おはよう」


 どことなく月島さんは元気がない。いつもはもっと明るくて、天使のような振る舞いをしてくれるというのに。

 俺は月島さんの身に何かがあったことを悟る。


「月島さん。どうかしたの?」


「べ、別に。何でもないよ」


 そう言って、月島さんは笑った。だけどその笑顔が偽物なんだって分かっていた。

 授業中も元気はなく、いつも明るい振る舞いをしている月島さんは、少し暗い。


 俺は心配になり、下校中の月島さんのあとをつけることにした。


 月島さんは花屋に行き、花を買った。その後に向かった場所は病院。俺は月島さんのあとをバレないように追っていたが、月島さんは気づいていたようだ。


「神崎くん。ついてきてるんでしょ」


 月島さんは俺のほうに向かってくる。


「神崎くん……。私……」


 月島さんは泣きながら俺の体に抱きついてきた。


 そうか。そうだったんだ。月島さんは、一人で孤独だったんだ。

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