第3話 始まり
神崎翔は高校に入学した。
神崎翔は1組。1組は学年主任が担任である。
神崎翔は新しい生活に期待に胸を膨らませ、下駄箱で靴をシューズに履き替え、2階にある1年1組の教室に向かう。
神崎翔の席は左端の一番後ろ。窓から外を眺められる位置だ。
神崎は舞い上がってしまい、つい叫んでしまった。
「特等席だぜ」
神崎翔が叫んだと同時に、同じクラスの生徒が神崎翔に視線を向ける。熱を帯びた視線は、神崎翔の心を溶かすのではないかと思うほどだ。
そんな神崎翔の机に、歩いて行く女子がいた。周りには誰もいない。だから来るとしたら神崎翔にだけ。
神崎翔は生まれてから一度も女子と話したことが無い。あるといっても身内だけ。だから「話しかけられるのでは」と期待する神崎翔は緊張していた。
女子生徒が一歩を踏み出す度に、神崎翔の心臓の鼓動を速くさせる。だが女子生徒は、静かに神崎翔の横を通り、女子の集団の所に戻っていった。
今度は、さっきとは違う女子生徒が神崎翔に近づくが、その女子生徒はクスクス笑いながら通りすぎていく。
ーー俺が陽キャだったら女子に話しかけられたのかな?
だがその答えは今の彼には得られない。
神崎翔は冷静に周囲を見渡す。さっきの女子たちが神崎を見ながらクスクス笑っている。
「そういうことか」
神崎は察した。女子に遊ばれていることに。
再び神崎のもとに女子生徒が歩く。今度は金色の長髪でおしとやかな見た目の女の子。
ーーあの子もやるのか。
神崎は女子の怖さを知っていたので、その女の子も悪女だと思っていた。
ーー恥をかかせてやるよ。魔法使いを怒らせるとどうなるか、思い知らせてやる。
金色の髪をなびかせて歩く女子生徒が、神崎の正面に来た瞬間、
「
神崎が空中に物体浮遊と指を走らせると、女子生徒は少しだけ浮く。その瞬間を見逃さず、魔法を解除した。
女子生徒は足を踏み外し、神崎の真横に倒れた。
「いたたた」
それでも女その子生徒は顔を赤らめ、神崎の顔をじっくり見る。
「神崎……翔君だよね。私、
ーー話し掛けてきた?
神崎は女子との初めての会話に、何を話せば良いか分からないので、絶妙に噛みまくる。
「あ、あ、あの、ぼ、ぼ……」
神崎は途中で喋るのを諦めた。
「神崎くん。君ってコミュ障なんだね。どうりで端っこが似合ってると思ったら」
月島は天然なので、思ったことをすぐに口に出してしまう。
「コミュ障」と言われた神崎は、少し落ち込んだ。だが女子と話せたと前向きに捉えた。
「神崎くん。あいつらが神崎くんに恥をかかせたお詫びに、私が君の友達になってあげる」
月島は神崎を仲間外れになどしなかった。
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