第20話 ウイルス

 女はパンツ一枚で大の字になって寝ていた。


 「おい長友襲うなよ」


 長友は前屈みになって女の裸を視姦している。


 「そ、そんなことするわけないじゃないですか!」


 「いやだってお前性豪だし」


 「ゴブリンじゃないんだし理性で抑えることぐらいできますよ……」


 俺が一緒じゃなかったらやってんなこいつ。


 とりあえず近くに放られていたTシャツと病衣を収納し、女のパンツを一気に脱がせてそれも仕舞った。


 「『ちょっと!?何してるんですか!?』」


 「何が?」


 だいぶ汚れていたので新しい物と交換してあげようとしただけなのだが。


 「だ、だめですよ!」


 『わたしじゃ不満なのですか!』

 

 長友、お前見すぎだ。


 ソラに用意してもらった着替えのジャージと肌着、スニーカーを置いて小屋を出た。


 彼女は裸足で病衣を着ていたようだが入院でもしていたのだろうか。





猶本誠なおもとまこと、20歳、聖女

ステータス補正値

 生命力Lv1

 魔力Lv1

 身体能力Lv2

 精神力Lv1

スキル

 「光属性魔法Lv1」

 「回復魔法Lv1」

 「性転換Lv―」


 (たしか聖女の使う回復魔法は部位の欠損も直せるんだよね)


 『はい。しかも死亡直後であればヒールだけで蘇生も可能ですし、どんな病気も治せます』


 ということは再生の購入を少し待っていれば、今頃転移を覚えて日本へ帰れていたわけか。


 まあ、たらればでものを考えるのはやめよう。


 どうせあと数日で転移を買う金も貯まるのだ。


 そんなことよりも気になるのはスキル性転換である。


 名前が誠でそのスキルを持っているということはそういうことだろうか。





 どこかへ行っていた長友が帰ってきたのと時を同じくして小屋から彼女が出てきた。


 「えっと、この服を用意してくれたのはあなた方ですか?」


 「さすがにあの格好で森を抜けるのはちょっとね。それはあげるよ」


 「え!?僕からはお金を取ったのに……」


 長友よ、今までどこで何をしていたのかね。


 「ところでマコトさん」


 「どうしてわたしの名前を?」


 「こっちの世界は物騒だからね、わるいけど鑑定させてもらった。でだ、男にもなれるよね?なるべく人前では男の姿でいたほうがいい」


 意味の分かっていない長友が頭に?を浮かべている。


 「……、嫌です。せっかく女の子になれたのに……」


 「でも危険だよ?げんにこの長友は性豪というスキルをもっている。いつ理性のたがが外れてもおかしくない」


 「ちょっとイルマさん!僕はそんなことはしません!」


 「ようはもしもの時のために男の姿でいたほうがいいってこと」


 彼女はしばらく考え込んでいたかと思ったら突如淡い光に包まれる。


 光が収まるとそこには少しだけ背の高くなった猶本誠が立っていた。


 「ほとんど変わらないね。でもこれでマコトさんの貞操の危機はなくなる」


 猶本はパンツの中を確認して項垂れていた。





 彼女から日本の話を聞く。


 インフルエンザに罹患し意識が朦朧としていたためはっきりとしたことはわからないようだが、令和2年5月の中頃の日本から来たそうだ。


 地球とこの世界の時間軸は同じのようで一安心である。


 「日本ではもう学校は始まってるの?」


 「いえ、世界中でウイルスの感染は拡大し続けていて百万人以上の死者が出ているので」


 「え……」


 「まじか……」


 「日本も例外ではなくすでに医療崩壊が起き都市機能もダウンしました」


 「「……」」


 「日本は落ち着いているようですが、世界中で暴動、略奪が相次いでいるようですね……」


 どうやら向こうでは大変なことになっているらしい。


 俺の家族は無事だろうか。


 


 


 

   


 


 


 

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