第13話 暗殺者
「衝撃波を使うな?どうして?」
鍛冶屋で買った両手斧を担いでの森までの道すがらソラから忠告された。
『現在イルマは内容の異なる同名のスキルを保有しています。それを使用した際に誤作動を起こす危険性があります』
ソラから聞いた二つの衝撃波の違いを簡単に説明すると、もとから所持していた衝撃波は魔法のように相手に対して放出するもの、教会で覚えた方は相手との接触時に発生するものだそうだ。
「衝撃波は封印するしかないってこと?」
『いえ、そこは何とかします。もうしばらくお待ちください』
森に入って伐採する木を適当に選ぶ。
直径30cm、高さは……10mほどだろうか。
ソラによると樫の木の亜種とのことらしい。
「これ一本でおいくら万円になるのか」
戦闘用の両手斧を握りしめ構える。斧を手にするのは初めてだ。
野球の要領でバットもとい斧をフルスイングする。
斧の刃が木の幹に当たった瞬間両手に衝撃が走った。
「ぐおー!て、手があああ!絶対折れたあ!あああ!」
『落ち着いてください。折れてはいません』
幹を確認してみると樹皮は貫通していたが白太(皮の下にある中身)にはわずかに傷がついている程度だった。
「硬すぎだろ……。伐採用の斧じゃないからか?武器スキルがないから?それとも俺が非力だから?」
『それらすべてだと思われます』
両手斧を収納する。
「うん。諦めよう。俺には無理だ」
突如脳内に警告音が響き渡った。
どうやらマップから送信されているようだ。
こっちに向かって赤い点が急接近している。
警告音をなぜビープ音に設定したのか気になるところだが今はそれどころではない。
襲撃者は人間離れした速度で近づいてきている。
コロンド方面からこちらへ向かって来ていることからゴブリン長友ではない。
だとしたら解せない。
(俺は昨日街に入ったばかりだぞ……)
誰かに恨みを買うような行いはしていないのだ。
しかしマップには赤い点で表示されている。俺に対して害意があるということだ。
「チェンジ・ザ・ワールド!」
時の流れを緩やかにしてマップを見る。
「は!?」
襲撃者の速度は確かに遅くはなっている。
だが他の魔物のようにまるで静止しているかのごとく緩慢にはなっていなかった。
『同系統のスキル持ちか、もしくは目視できないほど速く動けるのでしょう』
「それはまずいって!俺のアドバンテージは時間に干渉できるってだけで戦闘に関しては一般人レベルだぞ!」
襲撃者の姿を視界の端に捕らえた。
この弛緩した時の中で俺の全力疾走と同程度だろうか。
ルイージ・サラソータ、32歳、暗殺者
ステータス補正値
生命力Lv51
魔力Lv36
身体能力Lv99
精神力Lv89
スキル
「短剣術Lv99」
「韋駄天Lv99」
「隠密Lv99」
鑑定してみたらやばい奴だった。
「異世界転移二日目にしてこの世界で最強クラスの暗殺者に狙われるとか……」
『何をボケっとしているんですか!早く逃げてください!』
「逃げるってどこへ!?」
『冒険者ギルドに決まっているじゃないですか!』
「その手があったか!」
俺は冒険者ギルドに緊急退避した。
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