第12話 狩猟ギルド

 教会で手に入れたスキルは衝撃波だった。


 かぶってしまったがただで貰ったものでもあるし良しとしよう。


 お次は狩猟ギルドで登録して収納内にあるものを売却する。





  狩猟ギルドには随分と大きな解体作業場が併設されていてたいそうな賑わいをみせていた。


 「こんにちはー、登録お願いします」


 受付の気難しそうなおじさんに声をかける。


 「はい、登録ですね。ではこちらに手を置いてください」


 おじさんは眼鏡をくいっとさせるとガラス?のはめ込まれているタブレットのようなものを差し向けてきた。


 その魔導具に手をのせるとものの数秒で作業は終わったようだ。


 「カワゴエ様は迷い人なのですね、スキルは衝撃波だけですか……」


 話すときにくいっとやるのは癖なのだろうか。


 「スキルが一つだけだと何か問題があるのですか?」


 「狩猟ギルドに登録出来るのは戦闘系スキルの所持者にかぎられます。カワゴエ様は得物は何を使われていますか?」


 ウサギの毛皮を使った小鬼の巾着から愛用の鉄のこん棒を取り出す。


 収納スキルを持っていることを誤魔化すために巾着を用意したのだ。


 「意外と剛力なのですね。なるほど、それなら衝撃波との相性も良さそうです」


 (こん棒と衝撃波の相性が良い?)


 『衝撃波は相手との接触時打撃面に発生し、与えるダメージを底上げするものです。その件で後ほどお話があります』


 「いいでしょう。ギルドカードを発行します。規約等についてはこちらの小冊子をお読みください」





 ギルドへの登録を終えて買い取りカウンターまできた。


 「魔物と魔石の買い取りお願いします」


 ムキムキだが美人のお姉さんだった。


 「ん?アイテムバッグ持ちかい?」


 「はい。量が多いのですがどうしたらいいですか?」


 「なら、奥の作業台のほうで直に出しな」


 (この人ぶっきらぼうだけどなんかエロいな)


 『じー』





 すべて収まりそうもないので作業台の周辺にぶちまける。


 なんせ森熊フォレストウルサスを含めた魔物の死体が百体近くあるのだ。


 ゴブリンの魔石だけ作業台の上に置いた。


 「なんだいこの量は……、しかも未解体か……、お前名は?」


 「イルマです。なんかすいません」


 「あたしはエマだ。解体料として一体につき売却益の一割いただくよ。明日また来てくれ」


 他の従業員の刺す様な視線に晒されながら狩猟ギルドを後にする。


 その日は洋服店で灰色のパーカーのようなフード付きハーフローブを購入して、そのまま冒険者ギルドの自室で休むことにした。


 もちろんソラにはたっぷりと耳掻きをしてもらった。





 翌日エマさんのもとへ直接出向いた。


 寝ぼけ眼のエマさんは機嫌が悪そうだ。


 「イルマ!次からは狩った獲物はため込まずにすぐに持ってこい!」


 「わ、わかりました」


 森から出られなかったため貯まってしまっただけなのだが、余計なことは言わないほうがいいだろう。


 「まったく、従業員総出で夜中までかかったよ!これをもって受付に行きな!」


 エマさんから明細書を受け取り受付で精算をした。


 口座を作ってそこに振り込んでもらい、領収書だけ受け取って狩猟ギルドを出る。





 往来で領収書を見て絶句した。


 日本円にして総額一千万円弱稼いでいたのだ。


 明細書を見てみると森熊11頭の売上が七割近くを占めていた。


 森熊の胆嚢だけで三百万だ。


 (なんでこんなに高いんだ……)


 『森熊の胆嚢はたいていの状態異常に効果のある万能薬の原料に使われているので高額で取引されています』


 (これなら一億稼ぐのなんて余裕だな)


 『そう簡単ではないです。このペースで売り続けると供給過多で値崩れしますから。なので熊はともかくとして猪と兎は冒険者ギルドに売却するしかなくなります。それにうちのほうが買い取り単価は高いですよ!』


 (なるほど。じゃーさ、冒険者ギルドに売れる物って魔物以外だと何があるの?)


 『なんでも買い取ります。さすがにその辺の石ころや雑草は無理ですが』


 (なんでも?例えば木とかは?)


 『買い取ります。グラム百円ですが』





 良い金策が見つかるまでは何でもやってみることにしよう。


 とりあえず今日は斧を買って木こりでもしてみることにする。

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