第8話 ゴブリン狩り

 衝撃波ショックの精神的ダメージは何度か戦闘しているうちにいつの間にか消え去っていた。


 なぜかゴブリンとのエンカウント率が上がっている。


 マップを見ても赤い点が多い。


 収縮してみると赤い点がかたまっている箇所がある。ここはもしかしたらゴブリンの集落かもしれない。


 俺はそこへ向かっている。


 ありていに言うと時空干渉はチートスキルである。これがあればゴブリンなど物の数ではない。


 きっといい金策になるだろう。


 マップを見ながら積極的にゴブリンを狩ってゆく。


 時空干渉は危険な時以外は基本使わないようにしている。さすがに常時発動していると魔力がもたない。


 衝撃波のスキルLv上げも怠らない。


 刃物で傷つけるのは未だに抵抗があるので殴っているのだが、それと同時に衝撃波を使っている。


 今のところ衝撃波でダメージは与えられないが、少しのけ反らせることができるぐらいにはなってきた。





 ゴブリン戦の俺の基本戦術は奇襲である。


 オーダーメイドした靴のような何かの靴底に兎の毛皮を付けたものを履いて足音を消し、ゴブリンの背後から近づいて殴りつけるのだ。


 たとえ気づかれたとしても衝撃波で体制を崩せるので素人の拳でも普通に当たる。


 そしてゴブリンが倒れるまで殴りつけ、倒れたらマウントをとって殴り殺す。もしくは何度も踏みつけて殺す。


 日が暮れようかという時分までゴブリンを狩っていたら、殺生にたいする忌避感はいつの間にかなくなっていた。


 ようやくゴブリン集落の近くまで来たので戦う支度をしに冒険者ギルドへ戻った。





 ゴブリン13匹の売却益は百万弱。


 新たに購入することができるようになった装備品は、こん棒、短剣、木の弓・矢、スニーカー(黒)、鉄の胸当て、革の鎧、革の靴などである。


 (スニーカー!?)


 それは誰でも見覚えのあるロゴの入った若者向けのものだ。


 つまり俺の他にも転移者がいるのだろう。


 だがこれをゴブリンが履いていたということは……


 「もう生きてないだろうな」


 俺はそう呟いてスニーカーを購入した。





 スキルはゴブリンの集落に捕らえられた人間(主に女性)が生存していることを前提にして習得する。


 暗視、言語翻訳、消音、消臭(五万)・身体強化、応急手当(十万)・浄化(五十万)。


 言語翻訳、応急手当、浄化がそれだ。


 回復魔法は高すぎて買えなかったので劣化版の応急手当で妥協した。


 おそらく生きていればゴブリンたちの性の捌け口として慰み者にされているだろうから値が張ったが購入に踏み切った。





 武器は鉄製に変えたこん棒と予備の短剣を複数用意した。


 身体強化のおかげか両手に持てばなんとか振り回せる。


 これで準備万端である。


 襲撃の決行は深更。


川越入間かわごえいるま、18歳、冒険者

ステータス補正値

 生命力Lv3

 魔力Lv8

 身体能力Lv5

 精神力Lv3

スキル

 「人工知能ソラLv15」

 「時空干渉Lv10」

 「衝撃波Lv5」

 「浄化Lv1」

 「応急手当Lv1」

 「身体強化Lv1」

 「冒険者ギルドLv―」

 「収納Lv―」

 「鑑定Lv―」

 「地図Lv―」

 「言語翻訳Lv―」

 「暗視Lv―」

 「消音Lv―」

 「消臭Lv―」





 集落の入り口にはいっちょ前に歩哨が二匹立っているが他にはいないようだ。


 鉄のこん棒は気づかれて乱戦になるまで収納しておく。


 時空干渉を使って歩哨を短剣でさくっと始末して収納する。


 わざわざ戦う必要もないのでこれの繰り返しでいいだろう。


 ゴブリンたちの住処はモンゴルの移動式住居のゲルをみすぼらしくしたような粗末なものだ。


 大きいものは二棟だけでどちらかにこの集落の首領がいると思われる。


 なので小さいところから襲撃していく。


 消音スキルの効果か走ってもまったく音が聞こえないので、バラック小屋の中に入るときに時空干渉を使えば事足りた。


 さすがに常時発動していては魔力がもたない。


 小屋の中ではゴブリンたちが雑魚寝している。


 息の根を止めたそばから次々と収納していく。





 大きい小屋のうち集落の中央付近にあるのが首領の住居と思われる。


 残すはここだけである。


 中に入ると他の個体と比べてあきらかに大きなゴブリンが一匹で寝ていた。


 といっても俺(175cm)と同じくらいだろうか。


 いくらゴブリンといえども寝顔は穏やかなものである。


 何か寝言を言っているようだが声が間延びして聞き取れない。


 言語翻訳がゴブリン語にも対応しているのか確認してみるのもいいかもしれない。


 時の流れを元に戻すと聞こえてきたのはだった。


 「クチャクチャ……、母ちゃんおかわり……」


 (……)


 鑑定してみると長友圭祐ながともけいすけというらしい。


 だが種族名がホブゴブリンとなっている。


 これはさすがに殺せない。


 俺はゴブリンの集落を後にした。


 明日、素知らぬ顔をしてここを訪れればここの惨状が俺の仕業だとは思わないだろう。


 こうして俺の異世界生活の初日が終わった。


 


 


 


 



 


 


 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る