第2話 スライム

 それは半透明の瑠璃色でなめらかな表面をしたゼリー状の生物だった。


 スライムだ。気持ちの悪い不定形のドロッとした奴ではなく可愛らしい外見をしたほうのスライムだ。なお目と口はない。


 (ちょっとかわいいかもしれない)


 『見た目に騙されないでください。魔物です』


 触ろうと手を伸ばす。


 俺の周りをぴょんぴょんと跳ね回っていたスライムは、突如機敏な動作でその手を躱すと体当たりしてきた。


 「ぐほっ!」


 腹部に強烈な一撃をもらって崩れ落ちる。


 (くっ、そういう手か……)


 『あー!だから注意したのに!次の攻撃がくる前にスマホの中のアプリを消費してスキルか魔法を創りましょう!』


 『え!?どうやって?』


 『イルマのスマホ内にあるソシャゲから何かイメージしてください!魔法か何かあるでしょ!?』


 DLしてあるゲームは少ない。


 パズルゲームの「パズクエ」、経営シミュレーションゲームの「冒険者ギルドをつくろう」の二つだけだ。


 どちらにも魔法は登場しないが「パズクエ」にはスキルが存在する。


 「パズクエ」とはいわゆる3マッチパズルというやつで、上下左右に三つ以上ドロップをつなげることでモンスターにダメージを与えて倒すというパズルゲームにRPG要素を加えたものである。


 (敵を攻撃するスキルか……)


 『急いで!次の攻撃がきます!』


 気づけば先ほどまでの愛らしい見た目をしていたスライムが、ドロドロの粘液へと姿を変えて俺を取り込もうと眼前まで迫っている。


 「うあ!、チェンジザワールド!」


 とっさにスキル名を口にしていた。





 スライムはすんでのところで中空に止まっていた。


 正確には止まっているように見えているだけで緩やかにだが接近してきている。


 その間にスライムとの距離をとる。


 「んー、ゲームでは時を止めるスキルだったのに完全には止まっていないな」


 『さすがに時間停止のような強力なスキルを創るにはリソースが足りませんでした』


 ゲーム内での効果時間だった10秒はとっくに過ぎているがいまだに俺以外の世界は緩やかだ。


 俺は木の棒を拾いスライムに近づいてむき出しのコア?魔石?に突き刺した。





 激しい運動をしたわけでもないのに疲労感に襲われたため手頃な岩に腰を下ろす。


 『魔力が尽きかけたようですね。スキルを使用するときに消費しますから』


 「魔力か……、ほんとにゲームみたいな世界なんだな」


 (この様子だとLVとかもありそうだな)


 『それでは魔力が自然回復する間に他のスキルも創ってしまいましょう』


 


 


 


 


 


 


 

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