第6話 郵便局の電話 ~第一夜の終わり~

文木:

「三十一号棟の一階には郵便局があったの?」


石和:

「はい。それはハッキリ覚えています。でもね、私の中では郵便局というよりも電話局でした。日本電信電話公社ですしね」


早良:

「電話ですか?」


石和:

「はい、各家庭には電話はありませんでした。島の住民の多くは三菱鉱業の社員とその家族でしたが、会社の上役の方の自宅には電話があったと聞いていました。子供達の中でも家に電話があるか無いかで偉い人の子供だとか違うとかの会話はありました。だからといって子供達に上下関係は無かったですけどね」

「で、自宅に電話が無い我が家なんかは郵便局に電話がかかって来て、郵便局のお兄ちゃんが家まで電話が来たことを伝えに走って来てくれていました。両親の実家からたまに電話が掛かって来て、親子で一階の郵便局まで急いで階段を下りたことが思い出されます。なんと非効率とも思うけど、困ったような話を大人から聞いた事はなかったですね」


早良:

「へぇ~、郵便局員が態々呼びに来てくれるのですか。すごいなぁ~」


石和:

「あれ? よく考えたらそうですね。まさか島内の隅々の家まで局員のお兄ちゃんが走っていたって事はないでしょうから・・・・・・。他に公衆電話があったとも聞かないし、三十一号棟だけの特別サービスだったかも知れませんね」 


文木:

「そうか。こりゃ~ちょっと調査が必要だな。じゃ、次の質問といきたいところだが結構な時間になっちゃったな」

 柱の時計を見ると、二十二時に近い


原澤:

「本当だ」ここまで黙って話を聞いていた原澤が声を出した。


原澤:

「時間が経つのが早いですね。では、続きは次回に持ち越しということで。石和もすっかり溶け込んだし、また集会に顔を出してもらうことにしましょう」


石和:

「はい。よろこんで」


早良:

「じゃ、次回は三十一号棟にあったというお風呂についてですね」


石和:

「はい。今日は楽しかったです。ありがとうございました」


文木:

「よし、では本日はお開きということで」

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