第5話 くの字に曲がった建物
早良:
「三十一号棟ってどれでしたっけ?」
石和:
「上空から見てくの字に曲がったこの建物が三十一号棟です」
早良の差し出したスマホ画面の上空写真を石和が指差した。
石和:
「先程話をした通り学校とは離れた場所にあります。まあ、距離は知れていますけど」
「六階に住んで居ました。確か最上階だったと思います。島をぐるりと取り囲んだ岸壁よりもずっと高い位置にありましたから、玄関側通路の窓の外は見渡す限り海でしたよ。オーシャンビューってやつです。素晴らしい眺めでしたが、台風の日などは荒れ狂う海が怖かったです」
早良:
「玄関側通路に窓があるんだ。吹き曝しじゃないんですね。まぁ、これだけ海に近いんだから、波風考えたらそりゃそうですね。でもいいなぁ~窓一面が海かぁ~。なんだかリゾートホテルみたいだ」
石和:
「屋上でもよく遊びましたよ。一面コンクリートで特に何があった訳でもなかったですが、島では少し開けた場所はどこでも子供の遊び場でした。屋上は大人の胸位の高さのコンクリート塀で覆われていましたから安全でした。テレビのアンテナが立ち並んでいたのと、物干し台が沢山あったのは記憶に残っています」
「三十一号棟の一階には郵便局がありました。また、地下には理容美容室や共同浴場がありましたので他よりはちょっと便利なアパートだったかも知れません。アパートを北側に出ると目の前に映画館があって、その前にあったちょっとした空き地も子供達の遊び場でした。その傍には売店もあって、よくジュースやアイスを買っていましたよ」
「遊び場は本当に島中あちらこちらにありました。学校の運動場や公園は当たり前で、屋上が緑化されてちゃんと広場になっているアパートもありましたね」
スマホの上空写真でひとつひとつ指さしながら石和が説明する。
文木:
「なんだか興味深い話が沢山でたね。ひとつずつ確認させてください」
「三十一号棟の一階には郵便局があったの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます