第4話 時化が続いたら

文木:

「学校に給食はあったの?」


石和:

「給食はありましたよ。普通に。でも、ネットの情報では給食が始まったのは一九七〇年からってなっているので、私が小学校に入る二年前からなのですね。知りませんでした」

 ほらっと、石和がスマホを差し出して指を指す。それを文木、原澤、早良の三人が覗き込む。ネットに沢山転がっている軍艦島の歴史が書かれているサイトだ。


石和:

「給食が始まるまでは、昼食は自宅に帰って食べていたって書いていますね。まぁ、どんなに学校から遠い家でも直線距離で四〇〇〜五〇〇メートルだから、それもありですね」

「ん、ということは、うちの兄貴は自宅で昼食を食べていのたのかな? 当時の自宅は三十一号棟っていう学校とは反対側の島の端にあるアパートだったから、ちょっと大変だったのかも。今度聞いてみよう・・・・・・」

「学校の隣に二階建ての体育館がありました。その一階に給食センターがあったのは記憶にあります。給食当番になったら食べ物を取りに行かないといけないし、しっかり記憶にありますよ」


早良:

「学校の裏側にある建物ですよね。上空写真で確認したけど体育館も二階建てだったのか。さすが。」


石和:

「体育館の一階は格技場がありました。剣道と柔道でしたね。友達のおじさんにあたる人が師範をしていたこともあって、私は剣道を習っていました。隣の柔道場に遊びにいったりで真面目ではありませんでしたが、おじちゃん、お兄ちゃん達に可愛がってもらった楽しい記憶があります」


「そうそう、給食でしたね。給食の内容は特に変わったことはなかったと思いますが、ちょっとした思い出があります」


文木:

「ほう、なんです?」


石和:

「実は一度だけ菓子パンだけってことがありました。種類はバラバラでした。実は何日も海が時化て食材が入ってこなかったからなんです」

「ごめんね。我慢してねっていう先生の気持ちとは裏腹に、私たちは大盛り上がりでした。ちょっと特別ってなんだかワクワクしますよね。私はお気に入りの砂糖パンをゲット出来たこともあってやたらと記憶に残っています」


文木:

「ははっ、なんかわかる気がするな。そうそう、こんな話が記事とかでは分からないんだよな。まさに実体験ってやつだ」


早良:

「本当ですね。話は変わりますけど、さっき話にでた石和さんが住んでいた三十一号棟ってどれでしたっけ?」


 早良がスマホに軍艦島の上空写真を表示して石和に差し出した。

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