第332話
「ふいー……お疲れ、クロ。やっぱ冬道舐めちゃいかんね」
会場を出て中村と太郎を送り、家まで帰ってきたのだけど予想以上に時間が掛かってしまった。
やはりこれだけの吹雪となると除雪が追い付かないようで、通れるところを探す必要があったのだ。
今回のオークションで入手したカードなどを試す予定だったけれど、お腹も空いたし時間も遅い。なにより色々あって肉体的にはともかく精神的に疲れも溜まっているので検証は明日……遥さん家の道場に顔を出してからにしよう。
別にすぐに来て欲しいって話ではないのだけど、向こうは俺は来るのを楽しみに……楽しみにしていたはず?
だからなるべく早めに行くべきだろう。
まあ、向こうの予定次第だけどね。
とりあえず遥さんにはお義父さんの予定を確認してもらうようお願いしたよ。夜には結果を連絡してくれるそうだ。
「と言う訳で、色々やるのは明日にしようと思うんだけど」
検証するのは俺一人でやるわけじゃないので、クロにも了解をとらないとだ。
……まあ、帰ってくるなりソファーでゴロゴロしだしたから、もう今日はやる気無さそうだなーって気はしたけれど念のためね。
「いでっ……あだだだァッ!?」
がっちり腕をホールドしてからの猫キック。
それがクロの答えであった。
やはりお腹は触ると危険なゾーンなのだ……。
へそ天で寝ているのを見るとつい触りたくなってしまうのもいかん。
「うっし、ご飯にしよか? クロはいつものカリカリ?」
まあ、明日でいいか? と言うのについては何も言及はなかったので、クロとしては何時でもいいってことだね。
お昼ご飯美味しかったし、ビュッフェだったとのもあって中村と競うようにしこたま食ったけれど、きっちり消化されたようで結構お腹が減っている。
クロもなんだかんだで色々つまんではいたけれど、わりと嬉しそうに「うにゃ」とかえってきたのでクロもお腹空いてそうだ。
「作るのめんどいし、時短かねて適当にチンして……む、全部食っちゃったか」
作り置きのだったり、ばあちゃんに作って貰ったりした料理で冷凍効くものは冷凍するなりしてストックしていたのだけど、うっかり全部食いきってしまったようだ。お漬物が冷蔵庫にあるけれど、それだけだとちょっと寂しい。
非常食替わりの袋麺はあるけど……どうしようかな。
何か他に食えるものあったかな。ちょっと棚でも漁ってみよう。
「……あ、缶詰ある」
非常食その二が出てきた。
冷凍ご飯はあるし、どちらもチンして食えるのは良い。
鯖の味噌煮なのでご飯との相性もぴったしだ。あとは漬物も出して……まあ簡単にすますならこれで十分だ。
「ん? 鯖食べたいの? ……しょっぱいし、ちょっとだけな」
温めたご飯をほぐし、鯖の味噌煮を食べようとしてたところでクロがじっと俺の手元を見ていることに気が付いた。
もちろんクロにはカリカリとお水を出してあげている。でも他人の食べてもいるものって美味しそうに見えるものだからね……中心部分から少しだけ身をとり、手のひらに乗せてクロの前まですっと持っていく。
「いや、食わんのかい」
一瞬匂いを嗅いだと思ったら、すぐにカリカリを食べだした。
なんとなく気になっただけで匂いを嗅いだ時点で満足したんだろう……まあ、よくあるやつだ。
「じゃあ、明日の10時ごろ伺いますっと」
ご飯を食べてソファーでクロとごろ寝していると、遥さんから明日はいつでも大丈夫と連絡がきた。
あまり早すぎてもあれだし、かといって午後も……お昼時には被らない時間ってことで、10時にしてみた。
「んー……ん?」
遥さんに連絡してから1時間ほど……あれからずっとソファーでごろ寝を継続しつつ、パッドを操作しているとクロが首元に寄ってきた。
クロはのしっとその場に座り込むとパッドを除きこむ。さっきから何を見ているのか気になったらしい。
「ちょっと良い施設ないかなーって。ほら、今度遥さんの家に行くことになったからお土産持っていこうと思ってさ」
ちょちょいと前足でパッドにいたずらするクロをガードしながら、何をしていたのかざっと説明する。
毎日行ってるとからなともかく、久しぶりに行くのだから手土産は必要だろう。
「ケーキは買えちゃうだろうから、下手すりゃ毎日食ってそうだし……それなら新しい施設追加して、今まで扱ってないのを持っていこうかなと思ってねー」
前までならダンジョンのやたら美味しいケーキを持っていけばよかったんだけど、おそらくダンジョンに潜ることになったお義父さんやらお義兄さんが結構な頻度で買ってると思うんだよね。潜り始めたばかりだとちっとポイント高いけど。
前回の様子を思い出すに、下手すりゃ毎日食ってる可能性もある。
で、そうなると他のお土産にしたほうが良いだろうなーと思ったんだけどさ。
ケーキ以外で何かあったかなーと……マーシーにお願いしてジャーキーやら何やら持っていくのはねえ?
遥さんは喜ぶだろうけど、義妹さんやお義母さんが喜ぶかというと……ちょっと微妙なところだろう。
そんなわけで何かよさげな施設がないかなーって眺めてた訳。
「和菓子でいいじゃんって」
クロ曰くケーキが飽きたなら和菓子にすればいいじゃない。ってことらしい。
よい考えだと思うけれど、問題は和菓子屋なんて施設はなかったんだよな……いや、でもよく考えたら喫茶ルームでケーキ買ってるな、俺。
「……あ、もしかしてこの茶屋がそうなのかな? 喫茶ルームの日本茶版……ってこたあ和菓子とか買えそう。ありがとうクロ、助かった!」
お茶とお団子とか出てきそう。
たぶん茶屋ってあれだよね。時代劇とかでみるようなお店の前に長椅子おいてあって、そこでお茶とお団子しばくやつ。
「甘いのとしょっぱいの半々でいいかな……毎日ケーキで甘いのばかりだときつそうだし」
お団子って甘いのばかりじゃないからねっ。
みたらしは……ちょっと甘いけど、いそべ巻きとかもあるだろうし一人各種2本ぐらいで買っていけばいいかな? きっと喜んでくれるだろう。
「……なんか色々施設増えてる? 茶屋とか前には無かったよな」
施設をぽちっと追加して、ふと思ったんだけどさ。前にはこんな施設なかったはずなんだよな。
いくら何でも気付かなかったってことはないはずだ……そうなるとアマツが追加したんだろう。いろんなお菓子をお土産に持って行ったのがよかったのかな。
……今度ほかにもいろいろ持って行ってあげるとしよう。
「これだけあればまじでダンジョン内で生活できちゃうぞ」
……まあ、半ば生活しているようなもんだけどなっ。
遥さんとかダンジョンが自宅と化しているし、実家にたまに帰るとき以外はずっとダンジョン内に居そうだ。
さて、寝るまでにはまだ時間があるな。
「味見しにいく?」
ちょっとだけなら寝る前に食べても怒られないべ。
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