第330話
「なかなかやばい条件が大量に……」
「金額やべえ! こっちはダンジョン潜ってる人か……いいな、宝石俺も欲しいわ」
「改造できるのは20階突破してからだけど……そうじゃなくても単純に装備の素材として魅力的だもんねー」
「俺もドラゴン素材の装備ほしい……」
入札を開始した直後から、次々に新たな条件が飛んでくる。
お金だけであれば、最低でも億単位。ダンジョンで入手できるものであれば、そこそこ有用なカードだったり、宝石なんかもあった。
どちらかというと企業関係の人が気合入れて入札している感じだ。
ダンジョン潜ってる人は素材を入手してもすぐさまポイント使って改造できる人ようは……おそらく居ない。なので入札も控えめである。
仮に飛竜の素材を入手しても装備を作るには時間も掛かるし、作成しても再び強化しないといけないし……20階突破してない人にとっては何を代価にしてでも入手したい! って程に魅力的ではないのだろう。
まあ、それでも飛竜の素材を使用した装備を作れば戦力アップは間違いないので、落とせるなら落としたいってところかな。
……これが出品したのが飛竜カードとかだったら、とんでもない事になっていただろうけど。
「うおっ」
「お? どした?」
条件をいろいろ眺めていたら目を引く条件があって、思わず声が出てしまった。
「一人だけ食いたいからって大金ぶっこんで来たのが居る……食った後は剥製にするらしい」
……世の中には物好きがいるもんだ。
企業っぽいところからの入札は大体装備を開発するだったり、研究目的だったりてのが多いんだけど、まさかの食用である。
しかも他より大分提示された額が大きい。
「やべえなおい!? どこの石油王だっての!」
「え、まさかの2回連続で食材に……?」
「ど、どうしよう?」
個人的にはそんな物好きは嫌いではない。
あとネタ的にも再び食材とするのも……いや、でも宝石とか欲しいし。
どうするべ……。
「さすがにまた食材にするのは気が引けるからさあ」
冷静になって考えるとあまり大金貰っても困るし、それよりはダンジョン攻略に役立つものを頂いたほうがずっと良い。
結局宝石と交換にした。これカードより貴重だからねー。
「ほんとかよ」
ほんとだよ。
司会の人喜んでたし、あの笑顔を曇らせようなんてひどいことおれにはできないよ。
「次が最後かなー?」
「何出品したんだろうな? 飛竜のカードとか?」
「いや、さすがにカードを相談せずに出すってことはないから……まあ順当にいけば飛龍の次のやつだと思う」
俺の出品は無事に終わったので残るはクロの出品だ。
ちなみに太郎は出品してないようだ……いちおう中村が聞いたらしいんだけどね? ごはんごはんと要求されて終わったらしい。
興味0だね!
「あのでっかいやつ?」
「そいつっす」
「へー……」
俺と話しながらバックから取り出したおつまみに手を伸ばす遥さん。
飛竜のジャーキーとワームのさけるチーズがだいぶお気に入りのようである。
きっとあのバックにはおつまみが詰まっているんだろう……使い方それでいいのかという気もしないでもないが、そこはまあ人それぞれと言うやつだ。
「さて、会場の皆様! いよいよ次が最後の商品となります!! 現在攻略が進んでいる最下層となる24階層、そこで待ち構える全長100mを超える巨大なワーム……なんとその全身はドロドロに溶けた溶岩で出来ており、今回出品されたのはそのコアとなります!!」
「あ、やっぱか」
「コアってことは、ちゅーるにしろとはならんか、さすがに」
「……そうねー」
出品されたもの聞いて納得する俺。
肉や魚系ならともかく、コアのような物体であれば前回の二の舞にはならなさそうだと安堵する中村。
じーっとおつまみのさけるチーズをじっと見つめる遥さん。
そしてもぞもぞと起きだしたクロ。
反応は様々だが今回は無事にオークションを終えられそう……そう思ってしまったのがいけないのだろうか。
「ではここで出品者より一言……は? え、え??」
「んんんー??」
「あー」
「これ何か変な条件だしたろ、絶対!」
出品者の一言を読み上げようとして、視界の人は分かりやすく狼狽していた。
あれれー? おっかしいなああああ??
「……大変失礼しました。ええと……『さけるチーズにした』……はい、今回出品されたのはコアより作られた……さけるチーズです……噓でしょ」
会場中から悲鳴が上がった。
「クロ、おま、なんてもんを……」
「おいしいもんねー、これ」
「さっきから何か食べてると思ったら、まさかそれ??」
食材どころか加工してだしやがりましたよ!!
もう食いもんになってしまった以上は再び装備の素材として使うことはできない。
いつぞやのアメちゃんの前で焼かれたドラゴンと同じだ。
一部を素材にとかそんな希望もありゃしない。
「……出品者より追加のコメントが……「誰でも入札して良い」…………以上です」
「追い打ちはやめよう」
「司会の人かわいそー」
止めの一言で膝から崩れ落ちる司会の人。
会場中からの騒めきは暫く止むことはないだろう。
……ちらっと視線をクロに向けると、こちらはすごく分かりやすいぐらいにドヤ顔していた。
猫のドヤ顔をここまで理解できるのはきっと俺ぐらいのもんだろう。
「前回はちゅーるに限定しちゃったから、みんな入札できるようにした……と」
クロ的には前回用途を限定してしまったことをちょっと悪かったと思っていたらしい。
それで今回は指定しなかった訳だと……いや、加工しちゃった時点でもう食うしかないじゃんダメじゃん。
クロにとっては素材というか食べ物としての認識が強いのだろうか……とりあえず褒めろと目で訴えてくるクロをなで、周囲の視線から意識をそらすのであった。
……いやね、出品したの俺らだってバレバレだから視線が集まること集まること。
視線がすごく痛い。目は口ほどに物をいうって本当だね!
とりあえずしばらくは気配消して大人しくしておこう……。
「……いやでもこれまじでくっそうめえ!! なにこれ???」
静かにしようぜ中村ぁっ!
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