第327話
「何狙うかなー」
「カード全部いかんの?」
「いや、さすがに数が多いし全部は無理よ……ほかの人も交換用カードある程度持ってそうだし」
カタログを眺めながらどれを取るかと悩んでいると、中村がなかなか無茶なことを言い出した。
会場に入ってから太郎の毛皮について溶けた雪をタオルで拭いているので、中村はまだカタログの中を見てないのだ。
前回のオークションからそれなりに時間が経っていること、ダンジョンに潜る人がまだ増え続けていることからカードや宝石などを入手した人も増え、それにつれて出品数も増えているのである。
もっとも宝石はともかく、カードは浅い階層のものが多くどうしても入手したい! と思うものは余り無いが……それでも二桁近い数はある。
なので俺やクロが余っているカードを交換条件にしても全部を手に入れるのは無理だと思う。
相手の欲しいカードをピンポイントで持ってる訳じゃないからね。
なのでここは欲しいものに的を絞るのが無難だろう。
今の攻略状況を考えるに、できるだけ強力な氷系の攻撃手段を増やすのは必須。
それと有用そうなものがあれば確保したい。
カタログの中で街頭するのは……。
「……とりあえずこの、氷山と寒天へどろ……和訳ひどくね? このカードは欲しい」
ちょっとモンスターの名前があまりにも酷い気がするが、ざっと見た感じ効果を考えると確保しておきたいのはこの2枚になる。
火に対する耐性カードがあれば欲しかったが……あいにくとそちらの出品はなかった。
羊カードがあるんだから恐らくカード自体は存在しているとは思う……ただ需要は高そうなのでなかなか出品はされないんだろうなあと、何となく思ってる。
「……まじであった! せめてカタカナにすりゃ良いのに」
最初は何いってんだこいつ? みたいな顔をしていた中村であったが、実際カタログにその名前をみつけるとなんとも言えない表情を浮かべる。
ちなみに氷山ってのは、小山のような体躯をした全身が氷で出来たモンスターだそうだ。
おそらくゴーレムとかそっち系かな?
寒天へどろは……ジェル状のスライムだそうな。
一気に体に纏わりついて、呼吸できなくする上に体液は強い酸性と非常に嫌らしいモンスターとなっている。
どちらも16階に出るモンスターで、日本以外も攻略進んでるのがよく分かる。
「体液操作と氷柱? あ、氷柱は魔法なのねー……巨大な氷柱を出して攻撃できる。刺さった周囲の温度を奪い続け持続ダメージを狙える。寒さ対策をしていないと自パーティーにも被害が出るので注意が必要……だって」
「なんか氷系ってその手の多くね?」
「多い気がする……でも有効ではあるんだなあ」
氷童とかね!
あれは強力ではあるし絶賛使用中なカードではあるのだけど……それこそ溶岩フィールドみたいなところでも無い限り使いにくいなんてもんじゃないだろう。
氷礫は割と使いやすいんだけど、今のところ3つの内2つがあれな感じだ。
「んー……? ねえ、島津くん。体液操作って似たような効果のカードなかったー?」
「あるんすけど、枚数制限使えないんで……付けるならドラゴンと飛竜優先にしたいんすよね」
「あ、そっか。全部体用だもんね」
ドラゴン、シーサーペント、飛竜と全部体用カードなのがね……レベルの関係で同時に使えるのは2つまでだ。
そうなると効果を考えてシーサーペントが除外されることになる……強いには強いんだけどさ、どうしても使いどころを選んでしまうから、仕方ないのかなーと思う。
その点、寒天へどろカードであればレベルの関係で問題なく使用できる。
効果は体液限定だけど、それなりに役に立ちそうなのと、もしかするとワームの次の相手で使うかも……と確保しておこうと思ったのだ。
「そういや島津は何出品したん?」
「俺? カードと余ってたポーションを大量にぶっこんだよ」
最近手に入れた羊カードから2枚と、他にもいくつか余っていたカードを数枚、再生を手に入れてから飲む機会がへったポーション類。
あとはこっそり飛竜を丸ごと一体。
たぶんオークションの目玉商品になってるんでないかな?
「……ポーションって20階以降の?」
「以降の」
「おっそろしい争奪戦になりそうだなおい」
需要やばいからね。
大抵の怪我や病気は治るし、何より若返り効果がやばい。
大枚はたいてでも……って人はかなり居るだろう。
「二人は何だしたの?」
「俺は羊カード。同程度の有用カードと交換希望で」
「私はオーガとミノタウロス。できれば宝石と交換希望でー」
「宝石は確かに欲しい……まじで出ないんだよねあれ」
宝石に関しては今のところ全部有用な効果だからねえ。
でもカードよりずっと出ないので、今回も出品自体はなかった……もしあればカードぶっこんでも良かっただけに残念である。
「島津も出てないんか?」
「どうも最近出ないんだよね……まさか20階以降は出ないとかじゃないよな?」
「さすがにそれは……あー、んー、どうだろうねー?」
俺の疑問に、どこか遠くを見ながらこたえる遥さん。
……まさかねえ? 20階以降に宝石ドロップないとか、そんなうっかりをアマツがやるわけないよねえ? 宝箱とかもしばらく見てない気がするけど、まさかね??
信じてるぞアマツっ。
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