第324話


「危うく社会的に死ぬところだった……」


個室から出てきた中村は、すっきりした表情を浮かべそう呟いた。


種を食べて光りだしたゲーミング中村であったが、消化された種が徐々に下へと移動しついに股間辺りまで到達、あわやゲーミングうんこを生産することに……といったところでようやくアマツが対応したらしく、なんとか危機を逃れることが出来たのであった。



ちなみに太郎は普通に生み出していた。

なんだろね、ダンジョン内だと消化が早いとかあるのだろうか。それとも種だからなのだろうか……謎である。

出したものについては安心? して欲しい。ダンジョン内に放置しておいたので、今頃ダンジョン側でどうにか処理してくれていることだろう。



ちなみにこの後は戦闘の打ち上げってことで、喫茶ルームあたりでケーキでもぱくつく予定である。



「股間光らせてた時点でアウトじゃねーかな」


「別に誰からに見られた訳じゃないからセーフよセーフ」


戦闘中も容赦なく光ってたからな。それを目の前で見せられ続けた俺の身にもなってくれ。

……てか、こいつ配信してたの忘れてないだろうな。


まあいいや、とりあえず空いている席に……あ、隊員さん達がこっちみて手を振ってる。

ちょうど休憩中だったのかな、せっかくだからお邪魔しよう。




「え、でも配信してたよね……ほら」


どうも俺たちの会話が聞こえていたらしい。

そういってスマホの画面を見せる北上さん……映っていたのは股間を光らせ羊に突撃する中村の姿だ。


「……」


「動画のネタとしては良かったんじゃなーい?」


そう北上さんに慰められる中村であったが、その目にはうっすらと涙が浮かんでいたのであった。


やっぱこやつ配信してたの忘れとったな。




自分で撮影してないと、うっかり撮ってることを忘れることもあるよね……あるかあ?


「そういえばカードは手に入ったのー?」


そんな事を思いつつスプーンを咥えてぴょこぴょこしていると、北上さんから今日の成果について質問がとんできた。


俺はそれに答えるように指を2本ぴっと立て、笑みを浮かべる。



「何とか1枚ずつ手に入れました」


「おおー。すごいね2枚も出るなんて」


「かなりついてましたね。普通は何度も潜らないといけないんすけど」


いや、本当にね……カードって出ないのよ。

一週間、二週間とひたすら同じ敵を狩り続けてどうにか必要数揃うとかそんなんだから。

下手すりゃ数日でないとかもざらにある。


牛さん、羊、鹿……ひたすら狩っては食ってたのも今となってはいい思い出……じゃないな。

げろ吐きそう。


「大丈夫? 目がいきなり死んだけど……」


「前にカード集めた時のことをちょっと……もう大丈夫っす」


北上さんに心配され、そう返したのだけど……周りにいた隊員さん達の目も死んだ。

やっぱ皆のトラウマと化してるな、カード集め。


アマツさん、アマツ様。

もうちょっとだけカードのドロップ率緩和してくれても良いと思うんですよ。


緩和してくれたらきっとみんなから感謝感激雨あられですよ。

アマツさまー??




こんな時には反応しないアマツであった。



「さて……そんじゃ試しに食ってみるかな」


俺がそう言ってバックパックから種を取り出すと、みんなの視線が手元へと集まる。

どうやら仕様変更後の種をどう扱うかがまだ決まって無いようで、食べた人はまだ居ないんだそうな。


「いくつ上がるかな……あ、動画とってもいいか? ステータス秘密にしたいなら撮らんけど」


「別に撮ってええよ」


「お、そんじゃ用意するわ」


ケーキ食って中村も元気を取り戻したようで、ごそごそと撮影の準備をはじめる。

……それ、配信になってないよな? なってない? なら良いけど。


食う時にうっかり素顔が配信されちゃったらちょっとね? それに、ここには俺だけじゃなくて隊員さん達もいるからその辺りは気を付けんとね。



「あれ、中村くんがもう食べたんじゃ?」


「光ってたってことはそうだよな」


「食う前のステータス控えてなかったんで……」


すっと顔を背けてそう質問にこたえる中村。

……これに関しては俺も気づいてなかったから何も言えねえ。


お、種でたぞ! よっしゃ中村食ってみ! そんなノリで食っちゃったからさ。

ハハハ。



さ、そんな過去のことは忘れてステータスだよステータス。

ここしばらく確認してなかったけれど、前よりどれぐらい上がってるっかなー?



【名 前】 島津 康平

【種 族】  人

【レベル】 28

【耐 久】 18656(27984)

【M P】 280

【STR】 7463(11195)

【VIT】 7963(11945)

【AGI】 5249(7874)

【DEX】 5203(7847)

【スキル】 夜目、不動、障壁、火事場、土蜘蛛、毒付与、衝撃波、治療、威圧、竜化、ブレス、呪殺の視線、滅びの光、龍化

【魔 法】 氷礫、火球

【称 号】 □□神の寵児



ふむ。

前の数値がちょいうろ覚えだけど……ざっくり1.5倍ぐらいになってないか、これ?

レベルは3つかそこらしか上がってないから、レベルによる補正がどんだけえぐいのか良くわかる。

やはりレベルは正義か。


「ぶっ飛んだステータスしてんなおい。やばそうなスキルも並んでるし……てか最後に変なのが……文字化けしてんだけどなにこれ」


「文字化けしてるってことはたぶん秘密にしたいだろうから、言わないでおく」


「おう」


どうやら称号については□の部分だけじゃなくて、全部文字化けして見えてないみたいだ。

アマツはフレーバーだよ! みたいなことを言ってたけど、フレーバーなら他人にも見えたほうが……いや、それとも完全に自分だけで楽しむようなのだろうか。


まあいいか、とりあえずこいつが種を食ったらどう変化するのか見てみるとしよう。

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