第323話なかなか全快しないですね(´・ω・`)

「太郎ぉおおおっ!?」


「え、ちょ太郎だい……じょうぶそうだな?」


ゲーミング太郎をみて慌てて駆け寄る中村であったが、とうの太郎はというと……嬉しそうにヘッヘッヘッと舌を出し、尻尾をぶんぶんと振っている。


おそらく光っているだけなのだろう……なんで光ってるんですかねえ?



「まじで何があったし……あ、これバー動かせる?」


コメント欄を見ると光る太郎に対してコメントが流れまくっていて、何があったのかいまいち分からなかった。

ただこの手の放送はシークバーを動かせば過去の映像をみることができるようだ。

俺はバーを動かすと、太郎が光る直前の映像を中村と確認することにした。




「あー」


「ほーん?」


何があったのかはすぐ分かった。


羊の死体から飛び出た7色に光り輝く種。

躊躇することなく口にする太郎。

口元から喉へと移動する7色の光……そして振り返る俺と中村。


それが起きたことの全てである。

てかよくみたらクロすげえ顔してんな、おい。

さすがに太郎の行動が予想外すぎたのだろうか。



「そっかー、アマツさんの対策ってこれだったんね」


「でも太郎が食っちまったぞ」


「まあ、普通は7色に光る種を食おうとするとか思わないじゃん? 太郎には通じなかったみたいだけどさ……」


「そうだよなあ……クロも食おうとはしてなかったし、普通そうだよなあ」


絶対食い物じゃないって感じの光かたしてるもん。

アメちゃんの蛍光ケーキよりやばそうだよこれ。




「ところ島津よぉ、さっきから光の位置が徐々に動いてんだけど……これ何時まで光ってんのかな」


「え……ゲーミングうんこになって出てくるんでね?」


「嫌すぎる……」


太郎のお腹で絶賛消化中であろう種だけど、光が弱まる気配がないんだよね。


自分でいっといてなんだけど、ゲーミングうんことか出されても処分に困りそうでいやだ。

たぶん袋に回収しても光ってるんでないかな? ゴミ収集車で回収しようとして……光る袋を不審に思った職員が袋をあけ……ゲーミングうんこを目撃すると。


回収拒否られそう。



「これ知ったらアマツさん頭抱えそう」


「可哀想に」


せっかく対策したのに、対策ガン無視で食われるとかねえ?

下手すりゃこの放送みた人がふざけて食ったりするかも知れんし……踏んだり蹴ったりだね!





やはりというか、少し待っても一向に光が収まる気配がなかったのでゲーミング太郎を連れてBBQ広場へ向かうことにしたのだけど。


「なあ島津。むっちゃ見られてね?」


「そりゃそうよ」


隊員さんの視線は太郎に釘付けだった。

中には手元の種と太郎を何度も見返してる人もいた。

え、あいつこれ食ったの? マジ? みたいな顔してたよ。


マジだよ。




「おにぎりほしい」


「後ろにあんぞ。てか島津野菜も食えよ」


羊といえばジンギスカン。

ジンギスカンといえばおにぎりだ。


焼けたジンギスカンをぱくり。

そこにおにぎりをぱくり。


そんな幸せな時を邪魔するかのように、中村が串にささった野菜を俺のほうへと押し出してきた。


いや、まあ別に野菜は嫌いじゃないんだけどね。ジンギスカンともやしとか凄く相性いいし。



「玉ねぎとカボチャってさ、焼けたタイミング図るのむずくね?」


ただね、串にささってるこいつらはあまり得意じゃない。

ちゃんと火が通っていたら良いんだけど、大抵ジャキッていうかガリッていうかなんだよなー。


ならなんだ用意したって? 中村が彩りも欲しいよなーっていうから、家にあった野菜に串ぶっさしてきたんだよ。


「……これとか焦げてるし、焼けてんじゃね」


「ちょっと齧ってみ」


焦げたの食わそうとするんじゃねーですよ。



「生だこれぇ」


焦げてても中身生焼けとか罠すぎる。




「あ、いたいた」


野菜を飲み込めずにモゴモゴしている中村をみながらおにぎりをぱくついていると、背後から遥さんの声がした。


「すごいね本当に光ってる……」


どうやら隊員さん達の間で光る太郎が話題に上がっていたようで、実際にみにきたらしい。

物珍しそうに太郎を撫で……ふと、中村へと視線を向けて首をかしげる。


「ってなんで中村くんそんな顔してるの?」


「カボチャ生焼けだったんす」


「レンジでチンして焼かないと……え、そんな驚くとこ??」


そこに気付くとは天才か……いやほら、普段はカボチャとか煮物とかにしかしないし、玉ねぎも刻んで炒めたりするからレンジで調理することが無いんだよ。

なかなか焼けないなら、下ごしらえの段階で火を通しちゃえばいいんだよね。次からはそうしよう。



レンチン……ではなく、マーシーに調理してもらった野菜串をもぐもぐしていると、端末にいつもの通知が飛んできた。


「お……ああ、なるほどそうしたのね」


「種をそのまま食べると永続的にステータスアップ。ただし個数制限あり……ああ、効果あるのはドロップ品だけか」


「なかなか悩む内容だねー」


たぶん、太郎が種食った現場を見ていたんだろうね。

もう食わないようにするのは諦めたらしく、代わりに種を食べたらステータスアップするように仕様を変更したようだ。

種を買い占めてひたすらステータスアップ! とかは出来ないように種はいくつか種類を用意し、それぞれにステータスアップ上限値を設けたようだ。

あとは畑に植えて増やした種については食べてもステータスアップ効果はなしと……そうじゃないと一気に上限値まで持って行けちゃうだろうから、妥当なところだと思う。


野菜にして食うか種のまま食うか結構悩みどころではある。

とりあえず1個は畑に植えて、あとは種のまま食えばいいかな? と一瞬考えたが、畑に植えてどれだけ種回収できるかまだ分からないんだよね。下手すりゃ回収できるのは1回のみです! とかなるかもだし、この辺は上手い具合にバランスとってくる気がする。



そういや種をそのまま食べるとどれぐらいステータスがアップするか通知には書いてないんだよね。

ステータスアップ量確認するのに、とりあえず1個食べてみるのはありかも知れない。

ま、ドロップしたら相談かな。





「食ったら光るのそのまんまかいっ!!」


ゲーミング中村が誕生した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る