第322話(コロナに掛かってしまい、しばらく死んでおりました(っ´ω`c))

ドローンにくっついていたスマホを取り外し画面をのぞき込むと、絶賛進行中で羊を屠るクロと太郎の映像が流れていた。


「お、すごい100人もいるじゃん」


もちろん映像だけではなく、コメント欄だったり現在視聴している人数なんかも表示されている。

下手すりゃ一桁も覚悟していたけれど、思ったより居るなというのが感想だ。


ただ、そう思ったのは俺だけで中村はそうは思わなかったようだ。

俺の言葉を聞いて不思議そうに首をかしげている。


「え、100?? ……今日って平日だっけ?」


「いや、祝日。なに、100人で少ないの?」


「チャンネル登録者数考えるとな、桁が一つ違ってもおかしくは……」


「へー」


中村のチャンネルってそんなに登録者いたのか。

たまに撮影の協力はしていたけど、そこのとこは余り気にしてなかったなー。


登録者全員がライブ見るわけじゃないだろうから……10人に1人見るとして、登録者1万人以上? めっちゃ多い気がするようなしないような……あんま詳しくないから分からんなっ。


ま、それはさておき。

本来ならもっと視聴者いるはずがそうではない、ということは配信内容なりに何かしら問題があるってことだろう。ていうか問題しかない気がしなくもない。



まあ、でも……でも? もしかしてもしかすると、俺が考えていること以外に原因があるかもしれない。

コメント欄を見ればきっと分かるだろう……そう思い俺はコメント欄へと目を向けた。ついでに後ろから覗き込んできた中村も。



"まだ狩ってるのか(絶望)"

"見るのもきつい。かと言って音声だけでもしんどい"

"まともに見られるのは最初の5分ぐらい。俺は30分ぐらい粘ったけどもう無理だ。すまん"

"音声小さくして、画面の端に置いとくと割といけるぞ。たまに頭が転がってくるが"

"せめてモザイクかけよう"

"羊の悲鳴と雑談をバックコーラスに、ひたすら虐殺映像みせられるとかそれなんて拷問"



「単に見に来た人がすぐ落ちちゃってるだけじゃね?」


「……確かに良く考えると結構きついものがあるかあ?」


「そらきついべ」


予想通り過ぎる内容が並んでいたよ!

てか中村さんよぅ何でそこで疑問形なんですかねえ?



"やっとコメに気付いた!!"

"お願いだから羊以外を映してくれないか(切実"

"休憩しよう。ちょっと広場にでも戻ろう"

"たすけて"

"モザイク処理と音声どうにかしてくれ・・・"

"やっぱガチ勢の狩りはライブで流しちゃあかんのじゃないかと"


首をひねる中村をよそに、コメの流れが一気に加速する。

そうだね。今までずっとコメに反応してなかったね。

ごめん!


気付いたからにはきっと放送内容改善されるよ。きっと。めいびー。もしかしたら。



「結構ライブで狩り流してる配信者いるんだけどなー……」


コメント欄をみていた中村がさらに首をかしげる。


たぶん、他の配信と何か違うんだよ。

具体的にいうとひたすら虐殺動画流したりしてないとか、そういうところが違うじゃないかなって、俺思う。


「わりと苦戦するところで狩ってるとか? 作業にはならないようにしてるんでね」


「そっかー。そうだよなー……よし、いったん休憩しよう。広場で飯にしようぜ!」


「おう」


一応作業配信は作業配信で需要あるんだけどね。

ラジオ代わりにしながら自分も作業するとかさ……まあ、ひたすら悲鳴流れてる配信とかラジオ代わりになんてなりゃしねえってことですわ。

それで作業が捗るやつなんてほんの一握りだろう。



"休憩きたああああああ"

"え、このあと広場で飯ってまさか羊食うんじゃ"

"やっと解放される"

"もうずっと休憩しよう"

"長かった・・・"

"羊の前で食わないだけまだ優しい"


飯はたぶん羊だろう。

何せお肉たっぷり確保してるし、最近羊食ってなかったし、食べない理由があまりない。

あとはおにぎりがあれば……米ぐらいは自分で炊くかな? 配信的にもそっちのほうがいい気がするな。

これは帰りがてら中村に聞いてみよう。


てか、放送のコメント結構ラグあるな。

コメント打たないとだから、どうしてもワンテンポ遅れるんだろう。あとは回線。


そのせいで視聴者が何かこちらに伝えようとしても、どうしてもこちらの反応も遅くなってしまう。



"なにあれ"

"あっ"

"え、ちょ"

"ああああああああああ"

"まじでwww"

"後ろみてえええええ!!"


そう、こんな感じに……後ろ?


コメント欄に書かれた言葉にしたがい後ろを振り返る俺と中村であったが……振り返った先にいたのは、首元を7色に輝かせた太郎の姿であった。



どういうことなの。

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