第319話

「ん、なんかきた」


色々とショックを受けている面々を前にしてこの後ダンジョンに……という気分にはならず、今日はこのままダラダラと過ごすかーと考えていると、パッドに何やら通知が飛んできた。



「注意喚起か」


「食べてしまった種については別途対応する。ドロップした種についてはドロップしたと分かる様にしたと……カードも同様にか」


「見落とし怖いんで地味にありがたいですね」


タイミング的に種関係だろうなと思ったら、カードについても修正が入るようだ。

カードはねえ……ドロップ率くっそ渋いし、うっかり見逃そうものならショックなんてもんじゃないからすごいありがたい。

たまーに動画とかでカードに気付かず先に進んじゃったPTとか見るしね。いやほんとあれは泣いて良いと思う。


「レアドロップについてはオートで回収してくれると一番良いんだけどな」


「まあ何かしらやらない理由があるんだろう。素材を大量に持ち帰るのも未だに出来ていないからな」


未だに素材は自力でバックパックに詰め込んでるからねえ。

容量自体はかなり増えていてドラゴン1匹なら余裕で入るぐらいあるけど、牛とか10体ぐらいで満杯になるんじゃないかな? 試したことないから分らんけど。


その後は通知の内容を確認に……なんてことにはならず、皆ぐったりしてたんでダラダラして解散となったよ。



「ん、オークションは今週末開催と……リストもある」


夕飯を食べてクロとソファーでだらけていたら遥さんからオークションについてメールがきた。

前に参加した時と違い、事前に何が出品されるか分かるのはありがたい。

当日になってからリストをみるとなると、どうしても落としたい物がある……でも手持ちにちょうど良い交換品がないってのが起きかねない。

それをある程度防げるのは助かる。


ま、その品を用意出来るかどうかは別問題だけど……こればっかりは運だからさ。

とりあえずリスト眺めよっと。



「結構カードあるな……これとこれ、あとこいつも確保しておきたい」


「残りは落とせたらラッキーぐらいで良いとして、交換用のカードもうちょい確保しておきたいな」


ダンジョンが出来てからそれなりに時間たっているからか、予想していたよりカードの出品が多い。



「やっぱソロでカード出すまでRTAやるっきゃないよなあ。でもあれきっついんだよなあ……うーん……ぬぅん……」


おそらくクロは何度か付き合ってはくれると思う。

でも二人で浅い階層で黙々と狩るとなると飽きるんだよね。精神的になかなかくる……そうなると俺一人で潜ることになるわけで……もう少し人数いれば多少ましになるんだけどねえ。



「むぅん?」


腕を組んで唸っているとスマホにメッセージが飛んでくる。

おそらく遥さんか中村だろうな……と思いスマホを手に取った。



「ふむふむ」


メッセージは中村からだった。

それも明日、撮影もしたいし一緒に狩りいかね? というまさにこちらが望んでいた内容である……なんだろう、ここまでタイミング良いとちょっと怖いよね。

どっかで俺の独り言聞いてんじゃないだろうな?



ま、冗談はさておき。


「カードの在庫補充したかったし良いよっと」


申し出はありがたく受けることにした。

向こうは太郎もくるそうなので、こっちもクロと一緒に行くとしよう。


これなら数こなすのもそんな負担にはならないだろう。


リスト眺めて悩んでいるうちに夜も更けた。

今日は明日に備えて寝るとしよう。




そして翌朝。


「おいーす」


「お、もうきたか。今いくから待ってて」


「あいよ」


予定の時間よりも結構早めに中村がきた。

こちらも用意は……つっても何時も持っていく一式以外に何かあるわけじゃないので、バックパックを背負い、靴を履いてすぐ玄関を出る。



「太郎は相変わらず元気だな」


久しぶりに俺たちと……というかクロと潜ることもあってか太郎のテンションはマックスだ。

庭で意味不明な動きを繰り返してはクロに近寄りはたかれている。


仲良きことは素晴らしきかな。


太郎とクロの様子を元気だなあ……と思いながら眺めていると、中村が荷物を車から引っ張りだしてきた。

……はて、いつも使ってる機材と違うような……?


「もしかしてそれで撮影すんの?」


あんま見慣れてないもんで一瞬何かわからなかったけれど、中村が手にもつそれはドローンだった。

結構大きいのでカメラを乗せて飛べるやつだろう。


わざわざここに持ってきたということはダンジョン内で使うつもりなんだろうけど……攻撃の余波で壊れそうだなあ……ってのが第一印象だ。

あとクロとか太郎がじゃれて叩き落しそう。

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