第309話

「ごちそーさま」


「ごちそーさまでした」


ほどよい感じでお腹が満たされた。

魚半分で足りるかなーって思ったけど、腹八分目って感じでちょうど良かったね。


「じゃ、つぎはこれかなー」


「おー……?」


お腹いっぱいで動けない! なんてこともないので、遥さんは早速次の遊びを始めるようだ。

食後休憩なしとかすごい元気。でもね。


「破裂しないっすかね」


やろうとしてるのビーチバレーなんだよな。

二人でやるもんだっけ? という疑問が浮かぶが、それよりも俺と遥さんの力にボールが耐えられるとは思えんのだけど。


え、マーシーが用意してくれた特別性? 強く叩くほど強度と重さがアップする? なるほど、それならいけるか?


「じゃ、このへんでいいかなー? 森と海にボールはいったらアウトだかんねー」


「ういっす」


ボールは平気と分かったところで、適当なところに支柱を立てネットを張る。

とりあえず相手の砂浜にボールを入れればOKと……だいぶ範囲が広いけど、なんとかなるかな。



ところで。

みんなビーチバレーと聞いてどんなのを想像するだろうか? たいていはオリンピックの試合だったり、砂浜で遊んでる映像なんかが浮かぶんじゃないだろうか。


俺と遥さんも普通のバレーはともかくビーチバレーなんてやったことはないし、二人だけだしで試合みたいなことにはならないだろう。


それでもそのうち熱中してきて、ボールを追って飛んだり跳ねたりと……それはそれは眼福な光景が広がることだろう。



普通なら。



「よいっしょー」


「ほっ」



すべてはボールがわるい。


強く叩くほど強度と重さがアップする……最初は便利だなーとか、割れる心配しなくていいやーとか暢気に考えていたのだけどね。高レベルの連中が使うとそれはただの凶器と化す。

やっていること自体はボールを追って飛んで跳ねて打ってとビーチバレーの範疇なんだけど。

はた目からみたらそうは見えないだろう。


飛び交うボールは音速を超え、一発撃つたびにソニックブームで辺りを薙ぎ払い。

踏み込む足は地面にクレーターを生み、あたりの地形を変えていく。

せっかくリゾート地として用意したであろう無人島が……見るも無残な姿に変わっていく。

一晩で直りそうだけどね。直らなかったごめん!



「ん-……っしょ!」


キュゴッとあまり聞いた事のない音を立て、すさまじい勢いでボールが飛んできて……ガクッと目前で曲がる。


「おぉっと」


だが、ボールを受け損ねることはない。

なぜなら未だかつてない程に俺の集中力は高まっているからである。



……いやね? だってほら目の前ですっごい揺れてるし。どうしても視線がそっちに行っちゃうでしょ。

でもあまり見すぎるとちょっとあれですし……かといってずっと薄目でばれないようにってのもそれはそれでキモイ。


んで、どうするかと言うとだ……ボールが遥さんの顔を隠した瞬間だけチラ見するというダンジョンで高まった動体視力、脳の処理能力など極限まで使っているのだ。

正直、一番最初にゴブリンとやりあった時より集中しているかも知れない。


やばいな。自分でやっててドン引きだ。


「うりゃー」


「ちょ、蹴りは」


そんな邪な俺の視線に……ボール越しでも気づいたのだろうか。遥さんがボールを素手ではなく足で思いっきり蹴り飛ばす。


腕と足、どちらが力が強いか? 当然足だ。筋肉量が違う。


「んおっ!?」


どうにか受け止めることはできた。できたのだが……威力が強すぎた。


足が砂浜を削り、深く深く潜り込んでいき……やがて海まで押し込まれた俺は、大量の波と砂に埋もれることになった。




「ひどい目にあった……」


「やー、たのしかったねー」


楽しそうな遥さんの笑顔をみると……こう、なにかくるものがある。

邪な視線を向けてゴメンナサイ。




その後も遥さんと遊び、少し疲れたところで海辺を少し散歩しようという話になった。

この無人島は場所によって色々と見える景色が変わってくる。

最初の海岸は波がなく、次は遊ぶのにちょうどよい砂浜。そして今歩いているところは……。


「何か探してるんすか?」


「うん。ほらこれ。綺麗っしょー?」


「おー……あ、これ貝殻なんだ。てっきりガラスかと」


点々と落ちていた色鮮やかな何か。

遠目でみたときはシーグラス? とかいう砂浜に落ちているガラス片かと思ったのだけど、それは透き通り様々な色をみせる貝殻であった。


「貝殻でこんな綺麗なのすごいよね。お土産に持って帰ろうかなーって」


「あ、いいですねそれ。俺もちょっと持って帰ろう」


普通の海でも勿論きれいな貝殻はある。

でも透き通ったのは見たことがない……もしかしたらあるのかもだけどね。

なんにせよ珍しいものってことでお土産にはなるだろう。


果たしてこの貝殻をクロがもらって喜ぶかというと疑問ではあるが、それならそれで中村にでも……いや、野郎にこんなんあげて喜ぶかというと……まあ、いいや。

とりあえず持って帰るとしよう。



ちなみに中身入りの貝殻もあったとだけ報告しておこう。

透けて見えるせいでちょっとグロかったぞっ。





いちゃこら回は次回で終わりです。

運営さんに怒られないと良いですが(っ´ω`c)コシハマダダメデス

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