第249話
さて、ゴブリンの犠牲を最後に今日撮る予定の映像はすべて撮り終わった。
「とりあえず映像はたりそう?」
「おう、これだけあれば大丈夫だろ。いくつか分けてアップするよ」
「さよか」
中村はそう言うとすぐに動画編集に入る。
ウサギ、でかウサギ、犬にゴブリンと各モンスターごとに動画を作成するつもりのようだ。
最初のネズミの動画を考えれば、おそらくは夕飯前に終わるだろう。
隊員さんたちと夕飯一緒に食べて、ちょっと感想聞いてみたりするのも良いかもね。
「さって、どんな反応くるかね」
なんか適当にだべったり、クロと遊んでいる内に動画が出来上がっていた。
んで今はゴブリン以外の動画をアップしてどんな反応があるか見ているところである。
「1本目の動画と違って、視聴者も落ち着いてきてるっぽいな」
ウサギについてはそこまでの反応はなかった。
いや、あるにはあったんだけどネズミの時ほどではない。
あー、やっぱそうなるよねーみたいな感じ。
クロがずっと寝ていたもんで『まだ寝てるよ』とか『猫ちゃんよくこの状況で寝られるな』とか『もう猫だけ映して』とかそんなコメントが目立ったかな。
ただこれが犬の映像になると大分反応が違ってきた。
「あー、実際に犬やべえもんね」
「ウサギからの差が激しすぎっからな」
でけえ犬が殺意むき出して襲い掛かってくるもんで、迫力あるんだよね。
あと主観視点もあったほういいんじゃね? ってことで、俺がつけてるカメラからも映像を提供したもんで、余計迫力ある映像に仕上がっている。
カメラの存在すっかり忘れていたけれど、ちゃんとつけてるんだぞ。映像も提供してるしね。
視聴者の反応は色々だ。
ダンジョンに関しては、犬にビビッて『こっわ、まじこっわ! 警告いれとけよ!』とか『わんちゃんいじめるなんてかわ……いそうじゃねえな』それと『こんな危険なところに猫つれてきて何考えてんの?』といったコメントがあった。
あとはこの動画というか、俺たちに対する個人的な質問も増えてきてたね。
「収入聞くとかちょっと……いや、気になるのはわかるけど」
「答えにくい質問多いな、おい」
収入、年齢、ダンジョンの場所、性別(どういうことなの)、二人と猫の関係、レベル、働いてるの? などなど。他にも色々あるけど、ぱっと見でこんな感じかな。
「答えにくいのはスルーして、答えれるのは答えていこうか」
収入はちょっとね。
知らない親戚がダース単位で増えそう。いとこのはとこの知り合いとか。
年齢もなー……まあ若いってのは分かるとは思うけど、あえて言う必要はなかろう。
場所はちょっと言えない……まあ、そのうちバレるだろうけど。
性別はスルーした。
関係については知らない人と我が家の飼い猫ですと答えておいた。
レベルは一応秘密ってことに。
働いてるの? については俺たちニートですって言っておいたよ!
「装備はどこのメーカーのですか……米軍のお下がりとアメリカの警察? の盾でしょ」
「鉈と靴は?」
「鉈は小屋にあったやつだしなー……なんか銘がはいっとんな。画像だけ上げておく? 靴は海外のブランドっぽい。これもロゴの画像あげよか」
装備についても聞かれたもんで、鉈をよくよく見てみると何やら銘が入ってたんだよな。
これもしかして量産で作ったやつじゃなくて、職人の手作りとかだったりするのだろうか? 確か量産品よりそっちのほうが性能良くなるとかって話だったよな。
小屋に放り込んであったから、なんてことはないタダの鉈だと思ったら……まあ、これに関しては嬉しい誤算ってとこだね。
まあ、銘は読めなかったので画像あげれば詳しい人が調べるでしょ。
さてさて、あとはゴブリンの動画をあげるだけだ。
クロの戦闘シーンもあるし盛り上がるのは間違いないだろう。
盛り上がらなかったらちょっとゴブリンにブレス吐いてもらおうかな。
「これが最後な訳だけど……どんな反応くると思う?」
「クロを崇め奉るような?」
「……」
なに無言なっとん。
冗談だよ。
さって、どんな反応あるかなー?
ちなみに動画は無修正だよ! モザイクなしとかチャレンジャーだよね。今更だけど。
これでBANされたら笑う。
「わあ、ちょう荒れてる」
「……まあ罵詈雑言ってわけじゃないから良いけどさ」
なんか阿鼻叫喚って感じ。
そんなことよりもっとクロのこと褒めなさいよ!
まったく……。
とりあえずコメントちゃんと読むか。
「……クロはCG説。実は島津とかが攻撃しててクロは何もしていない説。猫又説。癒しなんてなかった? は?」
最後の書いたのどこのどいつだ。
見つけ次第ブレスぶっぱなして……まあ、なんかクロは満足そうだからしないけどさ。
まったくもー。
……ざっと見た感じ、最後のあれ以外は変なコメントはなかったよ。
クロに襲いかかるゴブリンを見て焦ったり、爆散したゴブリンをみて混乱したり、その後の俺の解説を聞いて、納得したりしなかったりと……まあ、そんな感じだ。
「そこまで過激な反応はないね」
「下手すりゃ自分の首絞めることになるしな。てかお前の反応が過激で怖いわ」
「冗談だよ」
ほんとだよ?
「あと島津は猫の言葉わかるのか? ってのも多いな」
「猫耳尻尾勧めよう。これがあればそのうち猫と会話できるようになるぞ! ってやっとけばダンジョン潜る人増えるかもよ」
「まあ、あとで作るか。猫以外もあるってのは付け加えるけど」
それは残念。
まあ、人類の半分は猫好きらしいから、半分は猫耳尻尾になることだろう。よし!
あ、そうそう言ってなかったけどね。
視聴数だけどね、すんごい勢いで増えてたりするよ。
中村が言うにはSNSやらどこぞの掲示板で広まっているらしく、そこから人が大量に流れてきたんだろうってことだ。
これ、また掲示板が凄いことになってそうだな。あとでちらっと見てみるかな?
ま、何はともあれ動画の投稿に関しては成功したと言ってもいいんじゃないかな?
チャンネル登録者もすごい勢いで増えてるみたいだし、これからも動画を上げればみんな見てくれることだろう。
……ん? 中村がしかめっ面して画面みてるな。何かあったんじゃろか。
「あとは……彼女いますか? なんでいると思った?」
「え?」
「え?」
うん?
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