第244話


「そういや太郎は?」


太郎の存在忘れかけてた。


「あー、どうなんだろうな。できれば出て欲しいけど……頼めば出演させてくれないかな?」


「クロとセットで出せば人気でそうだよね」


モフモフが二匹そろえば間違いないだろう。

俺とか中村はおまけになりかねない。


まあ、それはそれで問題ないけどねっ。


「うーん」


「俺から隊員さんに聞いてみるよ」


「まじか、頼むわ」


中村は平日は仕事だからね。

隊員さんに連絡とるのも大変だろう……メッセージでやりとりとかしないのかな? って疑問はあるけど。


まあ、とりあえず隊員さんにあったら今回の件を聞いておくとしよう。


とりあえずその後、お腹がいっぱいになるまで焼き鳥を食いまくって解散となった。

お会計二人合わせて1万超えなり。お酒飲まないのにどんだけ食ったんだって話だね。

どうもダンジョンい潜るようになってから食欲が旺盛でして……まあ、とりあえず帰るべさ。

コンビニ寄るの忘れずになっ。




「たっだいまー」


家に帰るとクロが出迎えてくれたので、抱きかかえて居間へと向かい買ってきたチーカマをあげるとしよう。



「と言うわけなんだけど、どう?」


うにゃうにゃとチーカマを食べるクロを眺めながら、先ほどの中村の話を伝えるが……。


「……興味なさげね」


口のまわりを満足気に舐めるクロであるが、あまり反応は芳しくない。

チーカマ自体は気に入ったらしくすぐに二本目を催促されたので、ぺりぺりとシールを剥がして差し出すと、すぐに食べ始める。たまにポロポロとこぼすのもまたご愛敬。


……っと、返事きかねば。


「おーい」


背中をつんつんとつつくと、めんどくさそうに小さく『にゃ』と鳴くクロ。


「勝手に撮影する分には構わないと、了解あんがとねー」


面倒なことをさせなければ、別に勝手に撮ってなにしようが構わないとのことだ。

クロらしいね。



とりあえずこれでクロの了解は得たから……早朝に茶でもしばきにいけば誰かしら居るかな?

早めに寝て、朝一に行ってみようかな。




そんなわけで一晩明けて朝ですよっと。


「クロ、ちょっと隊員さん探してくるねー。すぐ戻るよ」


クロに一言残して、ささっとダンジョンに入る。

早朝なのでまだ外は薄暗いような時間だけど、隊員さんの姿はちらほらと見える。

これなら誰かしら喫茶ルームにいるんじゃないかな。



「あ、都丸さん発見」


期待しながら中を覗くと、都丸さんが一人で茶をしばいてた。

よかったよかった。


「おう、どうした? 朝から珍しいな」


「ちょっと話したいことがありまして、もしかすると中村から話いってるかも知れないですが……」


かくかくしかじか。

と、都丸さんに昨日の話を伝えるが、うーんと首をひねって固まってしまう。

あかんかったか。


「なるほどな……さすがに俺たちが出演するのはなあ」


「やっぱ厳しいですか」


現役の隊員さんだしなあ。

装備も明らかに自衛隊とわかるものだし、さすがにダメか。

下手に出演して問題なったらまずいもんなあ。


「ああ……だが許可が下りる可能性はある」


「おおっ?」


なぬ。


「脱落する者が続出しているのは知っているか?」


知っていますとも。


「上はかなり気にしているようでな、その辺りを考えるとその話、許可が下りるかもな」


なるほどなるほど。

俺でも知っててちょっと心配しているぐらいだし、そら上の人はもっと心配するわな。


そうなると、曲がりなりにもダンジョン攻略のトップ組が出演する動画ってのは、上の人らもそれなりに便宜を図ってくれる可能性があるのか。


「確実とは言えないからな。許可が下りたらラッキーぐらいで考えておいてくれ」


「うっす! 期待して待ってます!」


おっしおし。

これでおそらく隊員さんも出演OKになりそうだ。

いざとなればお偉いさん方に生首を嗾けよう。


あとは太郎についても聞いておかないとな。


「あとできれば太郎も出演してもらえると嬉しいなーって」


「ああ、まあそうだろうな。絵面的には居たほうがいい……のか? まあ、聞いておくよ」


「頼んます!」


とりあえずクロと太郎がおれば、映像はなんとかなるっしょ。

よしよし……よし?


なんだろ、都丸さんがまた首を傾げてるけど……。


「……ああ、そうだ。上のほうで何かあったらしくてな? 島津に話を聞きたい……とかそういう噂を聞いたぞ。何かあったのか?」


「あー……ダンジョン増えるかも知んないですよ。たぶんその話ですね」


そっか、すでに生首が夢枕に立っちゃってたか。

あとでさらに嗾けるかも知れないので、さきに謝っておこう。ごめんなさい。


「なるほど。気になるが今は詳しくは聞かないでおこう。話せるようになったら教えてくれ」


「うぃっす」


生首はのことはねえ……言ってもいいのかなーって気もするけど、都丸さん祟られたらあれだし。もうちっと様子見てから話そうと思う。


お偉いさん方は本当、災難だなーと思いますっ。



とりあえず都丸さんにお願いしたので、戻って朝食食べて、中村に報告しようか。


「とりあえず許可が下りるか聞いてくれるってー……ぽちっと」


反応すぐくるかなーと思ったけどこないな。

もう業務始まってるからか。となると反応あるのは昼だろうねえ。


んま、そろそろ飛竜の階層も突破したいし、狩りまくってカード狙うとしますかね。

そこまで数を狩れないから、時間掛かりそうなのがあれだけど……まあ、こればっかりは毎日地道に狩るっきゃない。


一枚でもカードが出れば、それで狩りが楽になって数こなせるようになるだろう。




「検索、検索っと」


50匹狩ったあたりでお腹空いてきたので帰ってきた。

今は昼飯を食べ終えて、中村の動画の参考にでもするかーと動画サイトをあさっているところである。


「……結構あるな」


適当に検索してみたら結構な数が引っ掛かったぞ。

全部が全部、攻略動画ってわけじゃないけど……とりあえず人気順でみていくかね。



「悪ふざけしているのが7割。残りは検証動画……攻略情報のせてるのもいくつかあるね」


がちで攻略情報のせているのもいくつかあった。

比較的浅い階層だったけど、需要はあるのか再生数は結構いってたね。


悪ふざけしている動画は……別にみなくていっか。

とりあえず攻略情報載せている動画をみて、あとはー……。


「検証動画面白そう。レベルアップによる装備の性能の変化とか、身体能力の変化とか……素材の検証なんかもある」


俺が面倒でやってないやつをまめな人達がまとめてくれていた。

これはあとで見ようと思う。素材の検証もみようかな。いくつかは中村にもURL送っておこう。




「ふんふん……お?」


ほほーって関心しながら動画をみていると、スマホに着信がある。


「都丸さんだ……はい、島津です」


相手は都丸さんである。

今朝話した奴がもう結果分かったのかな。

さて、どうなるか。


「昨日の件だがな、あっさり許可でたぞ」


「お、すごい。ありがとうございますー!」


やったぜ。

これでダメだったわーとか言われていたら、ちょっぴり凹んでたぞっ。


「まあ、中には出たくないやつも居るかも知れん。そのへんは上手くやってくれ。あと太郎についても許可は出ている。タイミングあえば連れてっても構わんよ」


「はいっ」


おっしおっし。

嫌がる人を参加させるつもりはありませんとも。


とりあえず中村に報告だー!




なんかメッセージ送ったら、即行で電話かかってきた。


どうも許可でたことで撮影したい欲がマシマシになり、会社早退しちゃったゼ。とのこと。

やる気満々だな、おい。


「これから撮影する? 俺とクロしかおらんけど」


「するする! 機材用意してそっち行くから、とりあえず自己紹介考えておいてくれっ」


「おう」


隊員さんはさすがに今日は平日だし無理だろうけど、俺とクロだけならいけるからね。

お試しに撮影しちゃってもいいだろう。


……ん?



「…………自己、紹介?」


まじで? そんなん最後にしたの何年前だよって話なんだけど……なんて言えばいいのだ。

猫耳ついてるし『にゃーん』とか言ったら誤魔化せないかな? 意外といけるんでね?

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