第238話

それから二日ばかりが経過した。


ちょっと予想とは違ったトラブルはあったが、ほぼ問題なくすべての日程を終えることができた。


とはいえまだ時刻は昼を回ったところなので、本当にすべてを終えた分けではないが、今は食後の休憩ということで茶をしばいてるところである。



「最終日かー……なんか思ったよりトラブルなかったっすね?」


「そりゃ、あれだよー」


「あれ……?」


来る前はもっとやべーことになると思ってたんだけどね。

ドロドロな感じで陰謀蠢くみたいな。


まあ、平和が一番である。


「あんな皆の前で言ったんだもん、そりゃそうなるよ……はずいなあもうっ」


不意打ちやめてぇっ!?


あの会話がまわりに聞かれていたかと思うと、もう恥ずかしくてやばいなんてもんじゃないぞ。


……ま、まあ結果だけ見ればよかったってことだし、恥ずかしかっただけだから……うん、忘れよう。俺はあくまで普通に告白しただけっ。もうおしまいっ。



……ふう。


「ちょっと早いですけど、目標の数狩り終えたんであがりますか」


恥ずかしさを誤魔化すようにトレインしまくった結果、予想より早く終わった。

カードが欲しいけど、さすがに期間内に三枚そろえるのは無理だったよ。


残りについては、出たら交換してもらえるように交渉済みではあるので、後々手に入れることは可能だ。


……さて、暗くなる前にやること済ませてしまおうか。

アメリカの暗い夜道を歩く気はさすがにない。

銃で撃たれたぐらいなら、ダンジョン外でも平気な気がしなくもないが、さすがに試す気にはならない。


てか、うかつに反撃でもしようものなら、うっかり殺してしまいましたとかなりそうでさー……怖いわ。



ま、今の時間なら大丈夫だろう。

俺一人だし、いざとなれば全力で走れば普通の人は追いつけない……車で追われたら建物内にでも入ればなんとかなると思う。


ベジタリアンのお店は割と近くにあるらしいので、中村のお土産をさくっと選んで買って帰るとしよう。

あ、英語はできなくても平気らしいよ。嘘だったら……まあ帰るしかない。肉体言語なんぞ通じないだろうしさー。



そんなこんなで歩くこと数分、思った以上に店は近く……俺の目の前にはやたらと立派な建物がズーンと建っている。

まさかこれ全部お店か?


「……思ってた以上に立派だ。しかもやたらと混んでるし」


ちょっとその外観に圧倒されていたけれど、すぐに店へと入るが……中はどこも混んでいた。

日本の店と同じように、ダンジョン様々な装備が並び、中にはいかにもアメリカちっくな装備もある。

赤と白を基調とした盾とかね。星マークもはいってるしヒーロー的なあれかな? 結構派手だけど見ている人は結構いるので、人気はあるのだろう。


まあ、それはさておき。俺の目当てはナイフなのである。

ネタで盾も買ったけど、ナイフはちゃんといいもの選ばないとだね。


「よさげなナイフはあるかなっと……おお?」


武器コーナーをうろうろしていると、ナイフのコーナーを見つけた。

ほかの武器と比べて、いくぶん売り場が狭いが……うん、結構種類あるぞ。


「この色、ダンジョンの素材使ってるなー……これ、全部? 多いな」


驚いたのは置いてあるナイフの内、半分はダンジョンの素材を使用しているってことだ。

先を進んでいるはずの日本でも、まだそこまで広まってないはずなんだけどなー。


……なんだろね、規制とかユルユルなんだろうか?


「まあ、中村んとこの会社の参考にもなるし……すみませーん、これ全部ください!」


全部買っちゃおう!


つっても、1種類につき1つだけどね。

さすがに買い占めたりはしないぞっと。



「おし、帰るぞー!


買い物は無事終わったので、さくっと戻ることにした。


特にイベントは起きなかったね、襲撃イベントとか。

別に期待していた訳じゃないんだけど……何も起こらないとそれはそれでちょっとねえ?


まあ、いいや。

とりあえず休憩所に戻ろう。

夕飯はまたBBQらしいけど……結局毎日BBQだったな。



休憩所に入ると、中では北上さんとクロがくつろいでいた。

もしかして俺が帰ってくるのを待っていたのだろうか、ありがてえ。


「おかえりー。またいっぱい買ったねえ」


「せっかくだからねー。どうせ全部個室にぶっこむだけだし、買っちゃった」


どれだけ買い込んでも個室にぽいっと入れておけば、日本に帰ってから取り出せるからね。まじ便利。


密輸とかそういうのにも使えそうだけど……まあ、アマツにはどうやってもバレバレだし。ペナ食らうだろうから……まあ、たぶんやらないんじゃないかな。ていうかやった時点でダンジョン出禁になって、物を回収できないとかなりそう。

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