第237話

と、いった具合に騒いでいたのだけど……当然ながら敵にとってはそんなの関係あるわけもなく。

こちらへと急接近すると、口をがばっと開いて噛みついてくる。


口内がばっちり見えて、正直かなりきもい。


「おーっと」


俺はもちろん、隊員さんや米軍の人らもそんな攻撃を受けるつもりなんてさらさら無い。

なので騒ぎながらもきっちり回避はしていたりする。


口が閉じると、とても生物が出したとは思えないほど、硬くて重い音があたりに響いた。


「噛み付きが強力だな」


「こいつのカード効果はなんでしょうね」


「んー……噛み付く力が上がるとか?」


カードの効果は、大体モンスターの特徴がよく出たものになる。

例外もありそうだけどね。


こいつは見た目とか攻撃パターンからいって、たぶん口を使った攻撃に関するものだと思う。

うーん?


「そんなのあっても……あ」


一瞬そんなのいらないって思ってしまったけど、うちなら有効に使えるじゃん。


「クロには効果ありそう……もし出たら俺の手持ちのカードと交換とかでどうです?」


「ぜひお願いします……と言っても実際の効果を見てからですが」


「そりゃそうっすね」


この階層の敵なら、カードの効果もそこそこ良いはずだ。

できれば手に入れておきたいところだ……おそらく米軍では使い道はあまりないはずなので、それなりのカードで交換出来るんじゃないだろうか。


まあ、実際にカードが出て、効果を確認してからだけどね。



そんなこんなでその日の午後。


「まじで噛みつきだった」


マジで出たし、効果も予想通りだった。


『噛みつき時のダメージ10%アップ』


手持ちのキモイやつのカードと交換できたので、結構うれしい。

効果は三枚まで有効らしいので、できればあと二枚ほしいけど……期間中にそろえるのはキツイかな。


これでクロがますます強くなっちゃうな!

なんてカードを手にしながら、鼻歌交じりにクロの額にカードを乗せて遊んでいると、何かを思いついたように北上さんが『ぽんっ』と手を合わせる。


え、なになに。

クロさん、それ食べ物じゃないからね? 穴あいちゃうっ。



「あ、うちも欲しいかも」


え? でも使う人って……あ、そゆこと?


「なんでこっちみた!?」


「ごめんなさい!」


違った!

太田さんじゃなかったか……歯が丈夫そうだったからつい。


しかし、太田さんじゃないとなると誰だ……あ、そっか。


「ああ、太郎の分か」


「あたりまえだっ!」


太郎は犬だもんね!


そりゃ太田さんが起こるのも当然だ。

すまねえ。


「余ってるカードあれば交渉してみるとか」


「ああ、そうしよう」


自衛隊はカード集めを熱心にやっているから、たぶん余っているカードもあるだろう。

それなら交換もできるはず……うーん。こりゃ三枚集めるのキツイか。


「タイムアタックしようかなあ」


「なにそれ」


時間あるときに、サクッと潜って集めようかなと思ったのだけど、それに隊員さんが食いついてきた。

別に隠すことでもないし、さくっと説明しちゃおう。


「なるほど、短時間ならいけそうっす」


長時間やると心が死ぬからねっ。

なにせ一人で潜るもんで、俺でもあまり長時間やるのは無理なのだ。


その後、夕飯まで狩りを続けたけれど結局出たのはさきほどの一枚のみだった。

やっぱ人数少なくして狩らないと確率がほんと渋いんだよねえ。


とりあえずご飯食べて、時間あればソロで狩ってくるかな。

今日のご飯はなにかなー。



「今日はBBQですよ!」


なんかエマさん張り切っとるな。


「今日はというか、今日ものような」


「毎日だねえ」


「美味しいから仕方ありませんわ」


さすがに毎日BBQはどうかと思う俺や隊員の面々であるが、エマさん……というか米軍はそうではないらしい。

みんな嬉しそうである。


「それでは、よい席を確保しなければならないので!」


「はーい、いってらっしゃーい」


ほんと張り切ってんね。

またベロベロに酔わなきゃいいけど……。

エマさんも最初と印象だいぶ変わったよな。あと二日だけど、仲良くしたいもんである。




夕飯もがっつりお肉を食べて、苦しくなった腹をさすりながら布団に倒れこみ……スマホをながめるが、特にこれといって見るものは無かった。


ないと困るんだよなあ。


「……結局、中村からあのあと連絡きてないよなあ」


これだけ時間経って何も連絡ないとか不安しかねえぞ……。


「これで返事来なかったら……あ、きた」


アマツに頼むしかないか? と思ったタイミングで中村からメッセージがきた。

心配したじゃないかっ。


さて、どんな内容かな……あの生首が何かやらかしてなきゃいいけど。



「眠くて死にそうって、まさか徹夜でゲームでもした?」


まじで遊んだだけかい。

しかも徹夜とか。元気だな中村も生首も……ん?


「げ」


最後のほうにやったゲームのタイトル書いてあったんだけど、これはまずい。


「ダンジョン造りの参考にしそうで怖い。てか絶対するよな」


入るたびに地形が変わるあのダンジョンゲームだ。

……面白いんだけどね。あくまでゲームとしてやる分には。


「罠と空腹要素……ほかにも色々ありそう。運ゲーになりそうだし、きついだろうな」


ただ実際に体験するとなると、かなり厳しいゲームだと思う。

罠もがっつりあるし、敵もえぐいの多いし、空腹とかもきつい。


あと装備ロストとかありそうなのが本当にやばい。


ただね。ほんとね。

ゲームとしては面白いんだよ……だからやばい。




「……なるべく温そうなゲームやらせておいてねっと」


メッセージ送信。これでよし。



……とはいかないよなあ。


頭ひっぱたいたら記憶失ったりしませんかね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る