第239話
「それじゃあ、あとはよろしくお願いしますー」
電話越しに大塚さんに頭を下げ、電話を切る。
刀剣類所持許可証はあるんだけど、武器の輸入は許可がいるって話なので大塚さんにお願いして色々面倒そうな処理をやってもらうことになった。
久しぶりの連絡がこんなお願いで、ちと申し訳なくなるが……まあ、そこはお互い持ちつ持たれつということでっ。
「とりあえず個室にぶっこんでおいて、許可でたら中村に上げるとしよう」
個室から取り出して渡そうとしなければ、大丈夫ぽい。
うっかり俺が犯罪者になっちゃたまったもんじゃないからねっ。
「っと、そろそろ夕飯……BBQが待ってるぞっと。どんだけBBQ好きなんだ」
別にも俺も一日一食ぐらいであれば別に良いんだけどね。
日本に居てもそんな感じだったし。
ただ米軍の人らっておそらく三食全てBBQ広場で飯食ってるぽいんだよなー。
よく飽きないなーと思う……まあ、うちらだって違いはあれど三食似たようなもの食べてるっちゃ食べているし、味付けとか変われば飽きないものなのかも知れない。
BBQに対する考えもうちらと違いそうだしね。
こっちは特別な時にしか食べないもので、向こうはよく食べるもの? そんな感じなのかも。
マーシーがちょっと神格化してるのがうける。
ま、とりあえず食べにいこう。
今日が一緒に食べる最終日になるんだし、遅刻はまずかろうなのだ。
最終日だからと冒険したのがいけなかった。
「胸やけがする……」
ちょっと気になっていたものを、つい出来心で食べてしまったせいで、俺は今猛烈な胸やけに襲われている。
「あんなの食べるからー……」
「もう絶対たべない」
バターフライ許すまじ。
重すぎんよあれ。
ほぼバターじゃねえかっ。
あとで胃薬……いや、むしろ今すぐ飲んだほうが良いな、これ。
マーシーあたりに言えば貰えないだろうか、それともポーションで治るのかな? なんて腹をさすりながら考えていたら、俺たちに近づいてくる人影が二つ。タイミングが……っ。
「島津さん。お疲れさまでした」
「あ、どうもお疲れ様です」
吐き気をこらえながら、決して表情にださず挨拶をかえす。
人影の正体はウィリアムさんとエマさんだ。決してベジタリアンではない。なんか未だにトラウマなってるぽくて、近付いてくることすら無い。
なんの用かなーって思ったら、最終日だしご一緒しましょってことらしい。
いや、最終日とか関係なくなんだかんだで毎日一緒だった気がしなくもないですが。
まあいいや。
とりあえず適当に席を空けて一緒に食事をとろう。
お肉は……今日はもういいかな。あっさりしたものと、胃薬貰ってこよう。
「こんな短期間でこれだけレベル上がるとは、正直思っていませんでした」
食後のデザート? にジャーキーを齧っていると、ウィリアムさんがそんな話をふってきた。
一週間かそこらでレベルが二つ上がるってのは、結構なハイペースだろう。
これで米軍の人らもだいぶ攻略が楽になると思う。
でも、このままじゃいずれまたどこかの階層で詰まるだろうね。
「あとはカードが揃えば、ばっちりですね。とは言ってもカードは集めるのきついと思いますが……あと、強化素材はもっとヤバいかなと」
俺とクロは勿論、隊員さんたちと比べても米軍のカードの普及率は相当低い。
カードが揃ってないなら、当然宝石とかの強化素材も足りてないだろうし……もし、このまま煤んdね20階に突入してしまったら、下手すりゃ全滅とかありそうだ。
「やはりでませんか? 我々も強化素材は欲しいのですけどね……」
「出ないですね。俺とクロは今回の狩りみたいに毎度大量に狩ってますけど、これまでに2~3回しか出てないです」
その分、強力だけどね。
とくに土蜘蛛はヤバい。
頭部とかに直撃したら、たいていの奴は一撃で屠れるし……冷静に考えるとヤバすぎんな?
まあ、その頭部とかにあてるのが大変なんだけどねー。
頭部狙うと、自然と噛みつきやらブレスやら、威力高い攻撃に身を晒すことになるし……だから足を潰したりとか、そんなのに使うことが多い。
連打は効かないし、使いすぎるとくっそ怠くなるけど……どこかに当たれば、当たった部分を確実につぶせるって、やっぱ強力だよな。
最初のほうに使えるようになって本当に良かった。
これがなければドラゴン戦は死んでた可能性高いし……土蜘蛛さまさまだね。絶対会いたくないけど。
んまあ、多少……けっこう運が絡むけど、米軍さんも死んだ目で狩りまくればいずれ出るでっしょ。
精神死にそうだけどねっ。
米軍は犬とか導入せんのかな。
そうじゃないときっついと思うけど。
「あれをずっと続ける……いえ、大丈夫です。我々にはBBQがついていますから」
「おー……?」
大丈夫かな?
米軍の人らが毎日BBQしていたのは、ダンジョンで擦り減った精神を回復させるためだったのか……すげえな、さすがアメリカだぜ。
なんて、俺が一人関心していると、今度はエマさんがじりじりと迫ってきた。やだ、こわい。
「島津さんともこれでお別れですね」
「ええ、でもまあいずれまた会う機会もあると思いますよ」
「ええ、そうですね……」
嘘じゃねーですよ。
たぶん、そのうちまた理由つけて今回みたいなイベントやるでしょ、たぶん。
それに俺とクロが呼ばれないってのはたぶんない。だからまたいずれ……一年以内とかにまた会えるんじゃないかなーと思ってる。
「……島津さんのことは、映像でみたことあって」
「ん?」
急になんの話だろ。
映像っつーとあれか、俺とクロがダンジョンで撮影した映像のことかな。
やっぱ米軍にも渡ってたか。まあ、別に気にしないけど。
「すごく強くて、会ってみたいと思っていたんですよ。前の私はずっと弱かったから……だから今回の任務も受けたんです」
「エマさん……」
おう……そんな理由があったのか。
ってか、任務ってこれ思いっきりゲロってないかい。
「次は、任務とかなしで会いたいですね」
「……ええ、そうですね。ぜひ」
いやー……最後にそんなこと言うのは反則じゃなかろうか。
そんなの嫌だなんて言えないし、いやもちろん俺だってまた会うのはやぶさかではないしー……おぅっ。
「あの、北上さん……ちょっと指がめり込んでるんですけど」
あばらとあばらの間に指突っ込むのやめてくだせえ。
「付き合った直後に浮気かー。このこのっ」
「そんなんじゃ……すんませんでした」
ここは素直に謝ろう。言い訳はしないのだ。
しかし、ぷりぷりした北上さんも可愛いな。
なんて考えてたら指が増えた。
ごめんてっ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます