第187話

「ステージ2であれってことは、ステージ3は相当厳しいんじゃないか?」


「期間内で誰か攻略出来れば良い、ぐらいの難易度にしてくるかも……」


2の時点で難易度高いんだよなあ。


「メタ読みになっちゃいますけど、道中のアイテムを溜めて一気に使わないと攻略出来ないようなのが来るんじゃないかと。なので道中は一切アイテムを使わずに行かないとダメかなって」


「それはありそうだ」


これ、ドラゴンもそうだったからね。

色々装備とか用意して、初めて倒せる的な……まあ、あの時は気合で倒したけど。


だからと言ってこの限定ダンジョンで同じことをする必要はない。

道中アイテムを入手できるのだから、それをステージ3で全部使ってしまえば良いなのだ。




「ふむ……とりあえず飯にするか?」


「さっきから匂いヤバかったっす」


そういえばそろそろお昼時だ。

色々見て回ってる間に結構時間が経っていたらしい。


限定ダンジョンは混んでるし、少し時間おいてからかな。



会場内にあるフードコーナー的な場所に向かうと、昼時という事もあってここも人混みが凄い。

ダンジョン産の素材を使ってるってこともあるし、とりあえず食っとけみたいな乗りで皆来てそう。


お店は……ほぼほぼダンジョン側のお店だね。

なんかマーシーぽいのが色々作ってる姿が見える。


「鳥が丸ごと串に刺さってる」


基本BBQ仕様な料理が多いので、豪快なのばかりだ。

あんな鳥が大量に並んで焼かれてるのとか初めてみたよ。


「美味しそう……10羽ぐらい買っておきます?」


最近鶏肉食べてないので、久しぶりに鳥食べたい。

がぶって齧り付きたいんじゃよ。


「さすがに10羽は多いだろ、半分にして貰って一人あたり半身もあれば良いんじゃないか?」


「他にも色々あるもんねー」


むう。

半身で我慢するか……。


確かに他にも色々ある。

どうせなら普段食べてないものを中心に買いたいところだが。



「煮玉子ちょう食いたいんっすけど」


「煮玉子なんて……まじであったよ」


良い色の煮卵が山になってる。

美味しそう。


ラーメンとかに入れると美味しいやつだ……って、ラーメンも売ってるな?


「あのラーメンもしかして……」


「例の肥料のやつか?……ならそこの通りに並んでるのは全部そうか」


よく見たらこの列だけダンジョン側のお店じゃない。

どこかで見たパン屋の人とかおるし、麺類とか粉もんとか、主に小麦使った料理のお店が並んでるね。


……あの小麦って麺に向いてるやつだったっけ?


まあ、美味しければ良いか……適当に何品か買っておこう。



さて、ほかに何があるかなー…………んっ???


「……やべえ、やべえの見付けちゃった」


「え、なになにー……まじ?」


これあれだ。

今朝のニュースでちらっと見えたやつ。

記憶から消えかけてたけど、見間違いじゃなかったか……。



「うぉぉぉおおお!?ドラゴン!!?」


「中村声でかい」


「だって、おまっ……ドラゴンだぞ、ドラゴン!なんで串に刺さって回転してんだよっ」


「そりゃ食べるからでしょ。美味しいよドラゴン」


あれだ、お魚を串にぶっさして焼く感じで、ドラゴンが串に刺さった状態で焼かれてた。

それも5匹ぐらい。圧巻だね!!


てか、ちょっと見た目グロいんですけど、それは良いのか。

いや、良くないか。ちょっとした壁で囲んでるし、これ目隠しだよなたぶん。


てか、中村の反応がやかましいぞっ。

あんた食べたことあるでしょっ。……あるよね?


「てか中村も食ったこと……あ、ないかも」


「おおぃっ!?」


ちょっと記憶が曖昧だ。

食わせたような気がしなくもないけど、食わせてない気もする。


「シーサーペントはあるよ。この前の鍋ね」


「おまっ、なんつーもん食わせて……美味かったけどさあっ」


でもシーサーペントはちゃんと食わせてあるよ。

最近だからまだ覚えてる。


「まあ、お腹空いたし席はー……お、あそこ空いてるね」


ドラゴンの丸焼き周辺は席が空いていたので助かった。

まあ、普通はこんなの目の前にして食事したくないわなっ。


ちなみに俺たちは皆平気でした。一人除く。




「鳥美味いな」


「さすがマーシー」


ダンジョン産の鳥といっても、割と浅い階層らしいので味は普通の鳥と同じ……つまり普通に美味しい。

しかも作ってるのはマーシーだからね。不味い訳がない。


鳥だけ目当てに他のダンジョン行くのもありだな。

深い階層で出るならさらに良し。


「麺類全部うめーんですけど!」


「パンもいけるし、甘いのもいける」


小麦粉製品も全部いけるね。

こっちは一般のお客さんも買ってる姿を確認出来るので、評判は良さそうな気がする。

モンスター素材のほうは……ドラゴンがちょっと人が少ないかな。


でも味は抜群に良いので、噂が広まればすぐ人気になると思う。



「おまたー。切り分けて貰ってきたよー」


「ドラゴン安いね。一人前1000円だって」


「あざっす!」


空いてたので取ってくるのも楽ちんだった。


1000円もしくは1000ポイントで、皿にお肉がでんっ、付け合わせがでんって感じの山盛りお肉が食べられる。これかなり安いよね。


……む、首元がもぞもぞしとるぞ。


「ん、クロも食べる?」


「おま……どこに入れてんの」


クロが帽子からもぞもぞとはい出てきて……そして辺りを見渡して、また引っ込んでしまった。


「割と居心地良いらしい……人多いからなあ」


周りに人がいっぱい居るので、あまり出たくないそうだ。


「ん、ちゅーるのメーカー?ああ、ご飯食べたらいってみる?」


「ちゅーるってあのちゅーるか?……本当に居るな」


「半分は社員が食べて、余ったのは売っちゃって良いって事にしたそうで。行けば食えると……」


ただ、おなかは空いたのでご飯は食べたい……ちゅーるであれば帽子の中で食える……食えるの??

すっごい汚れそうな予感がするけど……ま、まあクロがそれで良いなら……。




と、言うわけで一通り食い終わったところで、ちゅーるのスペースへとやってきた訳ですが。

ここはここで結構人が多いな?まあ、他よりはましだけど……っと、こっちがん見してる人がおるぞ。


「っ!!おお、クロさん!?それに……島津さんと、パーティーの方ですかな?」


「どうもお邪魔します。……クロがちゅーる食べたいときかなくて」


「おお!どうぞどうぞまだ在庫は沢山ありますからね!ささ、こちらに」


メーカーの人だった。

まあ、ここで店員してるんだから当然なんだけど……たぶん、ちゅーる開発に関わってる人なんだろう。

むっちゃクロに対する対応が丁寧と言うか何というか……。


んま、お言葉に甘えて休憩スペースっぽいところに行こうっと。

ここなら外からあまり見えないし、クロも落ち着けるだろう。



「めっちゃ売れてますね」


落ち着いたところでちょっと話を振ってみる。

実際ちゅーるの売れ方としては相当売れてると思うんだよね。

並んでまで買わないでしょ、普通。


「ええ、お陰様で……飼い猫用と、それにご自分で食べるようにと買われるお客様が多いですね」


「……自分で」


「や、意外といけるんよこれがさ」


薄味だけどね。

中村も一つ食べてみるといいよ!ってことで1個押し付けておこう。

遠慮せず食うと良い。


「バフが少し付くのか、それなら買いたい奴は多いだろう」


ほら、都丸さんだって食べてるじゃん!

あとはさすがドラゴンのお肉だね、ちゅーるになってもバフ効果は一応残ってるぽい。


ステーキにするよりは大分効果落ちてるけど、ちゅーるだしこれ。十分だよね。



さて、クロの食事も終わったし、ちゅーるもいくつか買ったしそろそろ次に行こうかなー……って思ったんだけど。


「クロ?……ここで待つ?人多すぎて疲れたかな……ごめんねえ」


クロが人混みに酔ったぽい

どこ見ても人、人、人だかんねえ……むむ。


ちらっとメーカーの人を見てみるけど……?


「その、すみません。少しの間だけクロを休ませて貰っても良いでしょうか……?」


「ええ、もちろん構いませんとも!」

にこって笑ってくれたので、クロを休ませて貰うことにした。

俺もついてようと思ったんだけど、しっしっしって追い払われたぞ。ひどい。



「なんか人間より待遇よくね……?」


それ以上いけない。

報酬の話しとか聞いたらほんと泣いちゃうぞ。




ちゅーるのスペースを後にして、残りのほかのスペースを見に行こうかと歩いていたのだけど……北上さんが、ふと足を止めて1点を見つめている。


「ねーねー。島津くん」


「……なんでしょ」


とっても嫌な予感がするんです。


「ちゃんとこっちみようか。あっちで面白そうなのやってるよ」


「うぅ……あまり見たくない……」


見たくないから目をそらしたのに……うぐぐ。


薄目でそろーってそっちを見ると……ああ、やっぱそうだ。

北上さんの先にはこれまたでかいディスプレイがあって、そこでは戦闘シーンの映像を流している。


で、その先頭シーンなんだけど……1体のモンスター?に対して人間側が複数人で対峙してて……人間側が見せ場も何もなく瞬殺されて終わる。そんな映像だった。



「これはひどい」


「開幕ブレスとかひどい」


「盾ごと斬るとかひどい」


「ひどい」


「俺は悪くないと声を大にして言いたい」


まじで俺が悪いんじゃないかんね!

悪いのこんなの企画したアマツだからっ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る