第188話
「しかもよく見たらクロも居るな」
え、まじ?
……あ、いた。隅っこで丸くなってるのがそうか。
島津擬きがピンチになったら出て来るのかな……やっと追い詰めたと思ったら戦力が倍になるとか、挑戦する側にとっては悪夢でしかないなっ。
「無理ゲー過ぎる」
「せめて参加側を島津達と同レベルまで引き上げるとか無いと……戦いにもならんぞ」
確かに。
レベル引き上げれば、あとは装備とかの差になるから……まあ、ドラゴン系で強化しちゃってるから。その差自体がでかいんだけども……。
しかも障壁あるでしょ。
仮に障壁を突破しても、ダメージまともに通るかどうか……うーん。
「運営よりお知らせです。現在開催中のトップランカーの強さを知ろう!のコーナーですが、難易度に調整が入ります。より楽しんで頂けるよう調整しますので、ぜひ皆様のご参加を心待ちにしてます」
「またタイムリーな……」
さては運営ここの会話聞いてたな?
「……出て来るのが島津かクロどちらかだけになる……後はレベルの引き上げ……この会話聞いてたのか?」
他の人もそう考えたらしい。
……んー、あれかな。
「そこのスタッフ?じゃないかなー」
割と近くで人を捌いてるスタッフが居たから、彼?が情報上げたんでないかなーと思う。
「あ、そうっぽいね」
こっちみてペコリと頭下げたので、あってたっぽいね。
ふむん。
内容見る限りは大分難易度下がるけど……さてどうなるかな?
さっきまでの虐殺ショーのせいで、みんな参加するのに及び腰になっとんのよな。
……おう?
「かなりガチっぽいメンバーが来たね」
ガチムチ坊主集団が来たぞ。
見学じゃ無くて参加するっぽい。
「たしか……13階で活動してる連中だな。装備も大分揃っていたはずだ」
「お、じゃあ良い勝負になるかもねー?」
なるほど、隊員さん……それも結構攻略進んでる組らしい。
装備の差を数で埋めれば行けるかも知れないぞっ。
擬きとは言え、自分がやられるのを見るのは複雑だけど……このままじゃイベント的にもちょっとあれだし、ここは挑戦する側を応援しておこうか。
クロ擬きが相手だったら、クロ擬きを応援するけどな!
戦闘は開幕ブレスから始まった。
ただこれは隊員さんも予想はしていたのだろう、前方に石壁を幾つもの発生させ、それと盾と障壁を使いどうにか乗り切っていた。
ただ、雷属性乗っているもんで、直後に飛んできたナイフを避けきれず数人突き刺さる。
当たり所が良かったらしく、それで死亡判定とはならなかったようだ。
俺擬きが接近するのを魔法などで牽制している間に治療し、どうにか体勢を立て直す。
そこからは防御に重点をおいて、持久戦に突入した。
隊員さんは俺が使うスキルについてある程度は知っているのだろう。
常に距離を取って中距離か遠距離攻撃で攻撃。
もし狙われた場合は防御するのではなく、回避に専念している。
衝撃波は防御しても食らうし、土蜘蛛は……防御しても貫いてくるだろうしで、防御してもあまり意味が無い。
まあ、土蜘蛛は接近しないと使わないので、俺擬きも基本的に衝撃波を放つか、魔法を使って攻撃してる感じだ。
「あの電撃ってこの間の宝石ですか?」
「ですです」
「今度オークションで見掛けたら狙ってみるか」
「だねー」
「防御しても食らうってのがえげつないな」
なので基本的には互角で行けるのかなーって思ったのだけど、雷属性乗るのがかなりきついようだ。
衝撃波が掠めても動きが止まるし、ダメージも入るので、このまま行くその内でかいのを食らってしまいそうな予感がする。
もしかすると隊員さんは羊カードをまだ入手してないのかも知れないね。
あれがあると大分違うし……あとは羊の素材使った後付けのやつもあると良いね。
でも直ぐに用意できるもんでも無いし……うーん、じり貧だ。
「おおっ捨て身でいった」
まあ、見てる側そう思うってことは、戦う側も分かってる訳で、隊員さんたちが一斉に俺擬きに飛び掛かった。
結果的に、一人が土蜘蛛をまともに食らって死亡判定を受けた。
でも残りのメンバーが動きを止めたり、一斉に攻撃を仕掛けて片腕を潰すことに成功していた。
たぶん、腕を潰したのは何かのスキルだと思う。
他の攻撃はあまりダメージ通ってなかったのに、あれは一撃で腕がぐちゃってなったしね。
「一人減ったけど片腕潰した……これいけんじゃね?」
「いやー……」
片腕がダメになると、相当戦力落ちるはず……なんだけどねえ。
俺擬きってことは再生もあると言うことでして。
たぶん隊員さんは再生する前に倒しきるつもりだったんだろう、でも俺擬きが自分ごと隊員さんをブレスで吹き飛ばしてしまった。
そして直ぐに距離をとり……ブレスのダメージは勿論、ぐちゃった腕も直ぐに元通りになってしまう。
「はっ!?腕治ってるし!反則じゃね??」
確かに……客観的に見るとそうだよねえ。
トロールカードの再生はマジでヤバいよねー……しかも。
「……なんか外見が変わってね?」
「竜化まで使うのか」
まだ竜化してなかったみたい。
まともなダメージ入ったから、何か切り替わったんだろう。
「やはりドラゴンカードが強力だな……」
「あれまじでやべーですからね」
竜化してからも隊員さんは少し粘ったが、やはり一人減ったのと敵が全快してしまったのが大きく、全員やられてしまった。
「なあ、あれって倒せるの?無理じゃね?」
「んー……」
倒せるか?かー……無理では無いはずなんだけどなあ。
「参考までに聞きたいが、実際どうすれば倒せると思う?」
「んんん」
皆に問われて考え込む俺だが……ちょっと自分を殺す方法を考えるのって、ちょっとどうかと思わなくも無い。
……まあ考えるけど。
うーん。
うーんうーん。
…………うーん。
「……実際倒すとなると、竜化する前に何人か犠牲にして動きを止めて、頭潰すしかないかなあ」
「頭……」
下手な攻撃はあまり意味が無い……って訳じゃ無いんだけど、足にダメージ入れば、少しの間動きが鈍くなりはするしね。
でも俺だったら、ヤバいと思ったらさっき俺擬きがやったみたいに、ブレス吐いて距離を取っちゃうんだよな。
どうにか拘束すれば良いけど、拘束手段が……分銅付きの鎖とか良いかなーって思ったけど、普通に避けそうだし、当たっても切られそう。あと電撃くらう。
まあ、大人数で一気に掛かれば止められるのは分かってるので、竜化する前にどうにか動きを止めて、頭を一撃で確実潰すっきゃない。
一撃で確実に潰すかー……さっきの隊員さんが使ったスキルだとまだ威力足りないかも知れない。
「首をはねるじゃダメなのか?」
あー、首か。
首ねえ……。
「首はねても……たぶん再生すると思う。潰すのも中途半端だと再生するかも」
首をはねてもブレス吐いて飛んでいくかも知れない。
別に肺から何かを吐き出してるって訳じゃ無いし……吐き気がするだけで、要はスキル発動してるだけだしね。
頭部が残っていれば吐けると思う。
「ドン引きだよ!」
ダヨネー。
俺もそう思います。
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