第141話
まあ……とりあえず羽生えるだけっぽいし、俺もやってみるかね。
クロを実験台にしたみたいでちょっと申し訳ない気持ちが……。
「それじゃ俺も竜化してみる」
どうやって竜化するかは何となく感覚的に分かる。
言葉にするのは難しいけど、なんかこう……全身を漲らせる?みたいな感じ。
と言うことなので、早速やってみるか。
「…………メキメキメキ?」
こう、クロの時みたいに全身がぷるぷる震えるのかなー……って思っていたら、なぜか全身からメキメキメキと音がしだした。
むっちゃメキメキいってる。
「え、ちょ、ま……えぇ」
おかしい。
全身がザワザワするし、変化が起きてるのは体だけじゃない。
装備にもなぜか変化が起きている。
形状はそこまで大きく変化していないけれど、元の装備から素材が明らかに別物に変わっていってる。
なんでだよっ。
クロは羽だけだったのにナンデ?ナンデ!??
混乱している間にも竜化は進む。
竜化するのに掛かった時間はせいぜい10秒かそこらであった。
まさか全身が変化するとは思わなかったので、半端じゃなく焦ったが……とりあえずは無事?竜化は完了したようだ。
「装備の見た目まで変わっちゃってまあ……元に戻るよねこれ?」
今更だけど、この竜化って元に戻るんだよね……?日に3回って説明あったし、戻るとは思うけど……問題は装備まで変わってることだよな。
とりあえずどこまで変わったか確認しよう。
「鏡……あるわけもなく。端末でいいや」
自分の恰好を確認しようと……鏡はないので、端末で良いか。
そこまではっきり見える訳じゃないけど、ざっくり確認するだけなら端末に映り込んだのでも十分だ。
で、端末に映った俺の恰好だけど……まず装備が全体的に竜っぽくなっている。
色は昨日倒したドラゴンに近いかな、
布は皮のようになっていて、靴やプロテクターは甲殻ぽくなっている。フェイスガードは竜の顔のようで、ヘルメットは一部が甲殻に、それ以外は鱗が浮かんでいる……猫耳はイカ耳のように寝ていて、内側が竜の皮で外側は甲殻かな……あ、尻尾はあまり変わってないな。
鉈は格好良くなってる。盾も鱗びっしりで強そう。
クロとえらい違うけど、どういうことなの。
まあ、これでクロの見た目が俺みたいに変わってしまったら、それはそれで嫌なので、ここはアマツぐっじょぶと言っておこうか。
……あとはあれだな。
「げっ」
中身がどうなっているかと気になってグローブ外してみたら……生えてましたよ鱗が。
これ全部脱ぐの怖いなあ……でも脱いじゃう。気になるんだもん。
「なっるほどねー」
結論から言うと、中身はどちらかと言うと人よりだった。
鱗が多いのは手足と首回りかな。あと体の一部がちょいちょい鱗で覆われている……翼はなかったよ。なんでだろね?
あとは目が爬虫類だなあ……歯も鋭くなっている。
顔はまあ俺だって分かるけどね。
人が7で竜が3ぐらいな感じかね。
「ふむ……あとで皆に見せて驚かせよう」
みんなの前で竜化したらきっと驚くことだろう。
驚き過ぎて退治されそうになったりしてね。ハハハ。
……これ、ほんっとに元に戻るよね??
……そのまま待っても中々もとに戻らなかったので、竜化した状態でどれだけ強くなっているのか確認しようと思う。
試し切りはトロールくん、君に決めた。
ドラゴンでも良いとは思うんだけどね、ただ慣れるまではトロールで良いかなーって……程よくタフだし。
「大幅に向上って本当に向上してるねこれ。武器なしで余裕で倒せるな」
竜化した状態の身体能力は半端じゃなく上がっていた。
たぶんカードをセットした時よりも上昇幅大きいんじゃないかな?
素手でトロールぶん殴ったら、殴った周囲が爆ぜたもん。
これ、常時土蜘蛛使ってるぐらいの威力出てる気がする。
ちなみにこの状態で土蜘蛛を使うとどうなるか、だけど……こっちも素手で殴ったのとほぼ変わらない結果となった。
これって素手と土蜘蛛が威力同じって訳じゃなくて、トロールが柔すぎて差が分からないんだと思う。
ドラゴン相手に使えば違うんじゃないかなー?
あ、そうそう竜化だけど、10分経ったあたりで元に戻ったよ。
時間制限式だったらしい。
装備の見た目も元に戻ったし、体に生えた鱗なんかは砂みたいに崩れて、パラパラと落ちてった。
無事戻れてよかったよかった。
そのままだったらまじで泣いてた。
しっかし、ドラゴンのカードむちゃくちゃ強力だなあ。
「……これ、次の階層のゲートキーパーが怖すぎるんだけど」
ただそれが何を意味するかと言うと、ドラゴンの次に出てくる相手がそれだけヤバイってことなんだよね。
「よし、一度戻ろうか?ドラゴンの素材使って装備強化しないとだし」
さらには俺たちにはまだ、素材を使って装備を強化するのが残っている。
そこまでしないと戦えない相手が来るって考えるともうね。
……まあ、あのドラゴンは壁として用意したって話だし、あそこまで酷いことにはならないと思うけど。
フラグじゃないよ。
そんなフラグはアマツの顔面に突き立ててくれる。
「いや、その前にドラゴンの素材回収しなきゃじゃん……あれ全部って絶対入らないよね」
戻って素材で強化しよーって思ったけど、そもそも素材回収してなかった。
ドラゴンって今までの相手よりずっとでかいから、どう考えてもほとんどの素材を置いてくことになるんだよな……いや、後で回収出来るってことは何回かに分けて回収しろと……?
「呼んだかい!?」
「呼んでないです」
アマツが生えた。
「あっれー??おかしいなあ」
おかしいのはお前じゃい。
頭の中でも読んでるんじゃないだろうね……。
じとーってアマツを見つめてみるが、アマツはそれに気づいてないのか、それとも気にしてないのか、手をぽんっと合わせると言葉を続ける。
「まあ良いや!二人に良いニュースがあるよ!そのバックパックの容量アップしておいたから、ドラゴンも1体丸々入るからね」
「おおおお」
これは嬉しいニュースだ!
素材を放置する度に、どれだけもっとバックパックの容量が大きければ……と思ったことか。
ドラゴンの巨体が丸々入るって相当容量増えてるぞこれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます