第122話

「クロ、こっちは頭と背中狙うね」


うにゃんと言う返事を聞いた俺は、トロールに対し円を描くように動く。

それを見てトロールも体の向きを変えるが、ガクリとその動きが止まる。


クロがトロールの足に向かい氷礫を放っていたのだ。



だが、一瞬動きを止めたトロールだが、濡れた嫌な音と共に再び動き出す。


再生能力が高いからかその分痛みにも鈍いのだろう。

トロールは凍り付いた足を無理矢理引き剥がしていた。皮や肉が剥がれるなんてお構いなしである。


このままじゃ完全に自由になってしまう……が、氷礫は俺も使えるのだ。


「氷礫!」


俺が放った氷礫はクロと同じ所に着弾した。

そして今度こそトロールの動きを止める事に成功する。


足を上げた状態からじゃ力が入り難かろ?




俺はトロールの背に向かい飛び掛かると、鉈を突き立て飛び掛かった勢いで体ごと鉈を捻る。

やはりそこも急所だったのだろう。トロールがビクンッと一瞬痙攣をした。



「うぉっりゃ!」


そして体を捻った勢いで蹴りをトロールに脳天に、衝撃波付きで叩きつけた。


かなりアクロバティックな動きだったけど、上手く行って良かった。



背中は抉られ、耳や鼻から液体を流すトロール……あとはクロがお腹の弱点をどうにかすれば倒せるに違いない。


そしてクロの様子を確認する間もなく、トロールは地響きを立て倒れ込む。




「クロ、あんがとね」


倒れたトロールのお腹から、大量の臓物が溢れていた。


懐に潜り込んだクロが、お腹をむちゃくちゃに掻き毟ったらしい。




鼻息荒く、撫でろと訴えてきたクロを撫でながらトロールの様子を確認するが……。


「……死んだ?念の為心臓も潰そう」


再生する様子は見られなかったので、たぶん死んでると思うが念の為止めはさしておこう。


こっそり復活されて、背後から襲われでもしたら面倒だからね。

とりあえず心臓目がけて土蜘蛛を叩きつけておこう。






「タフすぎとか言うレベルじゃないなこれ。弱点に気付かなかったらどうやって倒すんだこれ……」


俺とクロはまあ行けたけど……弱点に気が付かなければどうやって倒すのか分からないよねこいつ。


血は出ていたから出血狙いで行けるかも知れない?でもすぐ傷が塞がるからすっごい時間掛かるね。


その内集中力が切れて一撃くらってノックアウトー。とかなりそうで嫌だ。



「弱点分かったの尻尾のおかげかな……うむ、やはり素晴らしい」


俺とクロがいけた理由はやはり尻尾の有無だろう。

あれって可愛いだけじゃないからね。


クロが装備すればカードもセットできちゃうし。

俺が装備したとしても弱点看破の効果が付いている。


ダンジョン潜るのに猫の尻尾は必須装備と言えよう。

全世界に普及すること間違いなしだ。


トロールの映像付きで猫の尻尾は必須だと皆に言っておかないとだね。




さてと、剥ぎ取って次の階層に……剥ぎ取って?


「剥ぎ取りどーすんだこれ」


どこを剥ぎ取れと言うのか。

例によって腰みのはあるけど……持って帰りたくない。

クロのバックパックに入れたら本気で噛まれそう。


あとは棍棒ぐらいか。

ぱっと見は木だけど、ただの木じゃ無いのは確かだし……まあ、ポイントにはなるだろう。



「てかこいつも首相の依頼に入るのかな」


あと思い出しちゃったけど、首相の依頼を考えたらこいつも丸ごと持って帰らないといかんのか。



「しゃーない持って帰るか」


なら次の階層覗いてから持って帰ろう。

少しの間なら置いといても消えないしね。



あ、そうそう。

首相の依頼で各階層のモンスターを持って帰ってるんだけどね、ここのダンジョンって入り口狭いじゃ無い?


バックパックにはダンジョン産のものなら入れて外に出られるから、ある程度の大きさのは外に出せるんだけど、そもそもバックパックに入りきらないのが多くてねー……容量アップはよって感じだ。


んで、外に出せないやつをどうするかだけど、休憩所にメーカーから派遣された人が来て、解体して外に出してるんだ。

すごいよ、血液とかもきっちり回収してたからねー。


そんな訳で次の階層にいって帰るとしよう。

今のうち一報入れておけばメーカーの人も丁度良いタイミングで来そうだし。








「まじか、やったぜ」


ちなみに次の階層だけどすんごい薄暗いとこだったよ。

これは死蔵していたゴブリンカードが役に立つ日が来たようだ。



あとね、もっと重要なのが……トロールの弱点だけど、個体によって場所が違う。

これはまじで尻尾が必須装備になりそうで嬉し……じゃなくて、凄く嬉しいですね。


そんな感じで無事次の階層に行けた俺とクロはスキップしそうな勢いで帰還するのであった。






そんな事が有った翌朝のこと。

遅めの朝食にフ〇グラを食べているとスマホに着信がくる。


誰かなーと思い手に取ると、相手は都丸さんであった。

これは次の階層に行くお話かな?



俺はクロがすすすっと前足で押し出したカリカリを口に放り込んで、カリカリと……まって、なんかこれ凄い勘違いされそうだ。



決してカリカリが好きで食っている訳じゃないからね?


フ〇グラを食べてるとね、どうもクロからはカリカリを食べている様に見えるらしく……最初はこいつ何食ってんだって顔していたんだけど、その内自分のカリカリをお裾分けしてくれるようになったんだ。


食わないって選択肢はないでしょ。


まあ味は薄くて微妙だけど、歯ごたえは良いので食えなくはない。



……はて、何をしようとしてたんだっけ?

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