第121話


「やべーよあの巨体」


全体的に太いし、おそらく俺の鉈じゃ一刀両断!とはいかないと思う。

あと腕がかなり長いから手に持ってる棍棒も合わせると、リーチがかなりあるね。

射程に注意しないと攻撃食らう可能性がある。



しかし、こいつ何なんだろうね。

前の階層は俺の知識には無い相手だったけど、こいつはたぶん……あれだな。


「……トロールかなあ?結構タフそうな気がする。パワーもありそうだし、気を付けていこうね」


たぶんトロールだと思う。

たぶんだけどね。


今度この手のモンスター載った図鑑とか買ってみようかな?何か参考になるかもだし。



ま、戦うとしますか。


クロに声をかけると、こちらもやる気は十分らしく。

扉の前で今にも飛び出しそうな感じでお尻ふりふりしてる。



だけど最初に入るのは俺からである。盾持ちだかんね。




盾を構え部屋に飛び込んだ俺は、真っ直ぐにトロールに向かい駆けていく。


トロールは近付いてきた俺を見ると、おもむろに棍棒を高く振りかぶると、一気にこちらに叩きつけてきた。


「うおっと」


速度はそれなり。

巨体過ぎて距離感が狂うのがあれだけど、問題なく避けられるレベルだ。


これが避けられない速度だったらかなり苦戦しただろうね。

何せ棍棒を叩きつけた地面が爆発する様に割れていたから……あれは防御しても防ぎ切れずにダメージ食らう奴だ。


あの棍棒、ただの木じゃなさそうだね。



相手の攻撃は避けられると分かったので、今度はこちらが攻撃する番である。

狙いは腕……と見せかけて攻撃を掻い潜ってからの、胴への一撃だ。



「刃が途中で止まる……」


皮膚はそれなりに堅いが刃は問題なく通る。

問題になるのは肉厚過ぎて途中で刃の動きが止まるところである。振り切れないのだ。


下手に深く食い込むと抜けなくなる可能性もあるので、ちまちま攻撃するしかないか?




「クロも同じかな」


クロの方へと視線を向けると、クロは主に敵の下半身を集中的に狙って攻撃していた。

足などから派手に血飛沫が舞っているが、切断するには至ってないのでクロも似たような状況らしい。



「クロの攻撃かなり強くなってるよね。やっぱあのカード強いわ」


クロの観察をして分かったけど、前の階層で手に入れたカードが結構仕事している感じだ。


クロの攻撃は切れ味は良いけど、重さが足りないって感じで、あまり深手にはなりにくかったんだけど、派手に血飛沫が舞っているから分かるように、トロールにはかなり深い傷を与えている様である。


この分ならすぐに倒せるだろうな。




……なんて思っていたのだけど。なぜかこいつ一向に倒れる気配がしないのだ。


「妙にタフい……傷治ってる?」


おかしいと思い、攻撃した箇所をよく観察すると……深手を負って血を盛大に流していたはずが、すぐに出血が止まっていたのだ。

強力な自己治癒能力持ちってことか。


「なら脳みそ潰す」


そうなると一撃で仕留めるしか無いのだけど……首は太すぎて一撃で刎ねられるか微妙。そうなると脳みそを潰すのが良いかなと思う。ただ頭が高くて土蜘蛛うまく当てられるかってのがね……衝撃波でいいか。外れても何度か撃てばその内当たるだろうし。


そんな訳で頭爆散して死ぬが良いなのだ。



「ふんっ」


気合い入れて鉈をぶん回し、衝撃波を放って頭を狙う。

相手も動くし、当たるか不安ではあったけど……トロールはビクリと身を竦ませ、鼻や耳からドプリと液体が漏れる。見事に命中したようだ。


タフかったけど、どうにかなって良かったなー。





「うぉっ!?」


脳みそを潰したんだから倒したと思い込んでた。

一瞬だけど動きを止めたトロールだけど、すぐに再起動して俺に向かい棍棒を振るってきたのだ。



「脳みそ潰したじゃん!こいつおかしい!」


ぎりっぎりだけど避けることが出来た。

正直アレは食らいたくないからね……てか脳みそを潰されてるのに生きてるっておかしいでしょ。


ちょっと潰したぐらいじゃダメなのか?もっと本当に爆散するぐらいダメージを与えないとダメなのだろうか。



ならば使ってあげよう土蜘蛛を。

今度こそ爆散するが良いのだ。


「土蜘蛛!」


腕に飛び乗ってからの顔面への一撃。

ある程度近付いてしまえば外れることは無い。

蜘蛛の一撃は見事にトロールの頭を爆散させるに至った。


至ったが……。



「……まだ再生するか」


頭を失ったトロールはb倒れること無く蠅を追い払うかのように腕を振り回す。


俺は何となく嫌な予感がしていたので、警戒を怠っていなかった。なので攻撃は食らっていない。


そしてトロールから距離を取り、観察していると……逆再生するように頭が再生してしまう。


治癒能力……てか再生能力高過ぎでしょ。




「頭は弱点じゃない……?」


嫌な予感が確信に変わる。

体動かすのは反射でもなければ脳みそな訳で、いくら何でも潰された直後に動けるのはおかしい。


なので頭は弱点じゃない……と言うか脳みそに当たる部分が他にもある気がする。



でも、ぱっと見てもそれらしい物は無いんだよな……いや、待てよ。


「背中と腹に何かある……クロも分かる?」


よぉーっく観察すると、背中と腹に違和感を覚える。

たぶんだけど、あそこが頭以外の弱点じゃないかな?


クロにも聞いてみると、にゃーと返ってくる。

クロもあそこが弱点だと言っているのだ。


「3箇所一気に潰そう。そうすれば再生止まるかも知れない」


1箇所潰してダメなら全部潰せばいい。

俺もクロも潰す手段は持っているし、頑張れば何とかなるでしょ。たぶん。


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