第108話
「頭を障壁でガードは必須。クロは避けて、俺は弾くのが一番かな」
対峙したミノタウロスの首を刎ね、そう呟く俺。
もう何体目なのかは忘れてしまったが、何体ものミノタウロスと戦い、例の攻撃がどういった物か凡そ掴むことが出来た。
まず振るった武器の延長線上に直進する衝撃波見たいのが放たれている事。これは拡散したりはせず、武器の投影面積ぐらいの衝撃波がまっすぐ飛んでくる感じ。
連打は出来ないらしく、4~5回に一回衝撃波が飛んでくる。
はじいて武器の軌道を変えると、衝撃波の軌道も変わる。
腕や足に当たったぐらいではそこまで大ダメージにはならない。でも痛いには痛いし、2発食らえば回復するまで使い物にならなくなる……ぐらいの威力はある。
衝撃波を防ぐには宝石を使って防具を強化し、障壁を付けるしか今のところは無さそう。
今後魔法とかで防御魔法とかが追加されるかもだけど、今のところは無いしね。
障壁を使った防御についてはクロが検証を手伝ってくれた。
何度もわざと衝撃波を食らう事になるので、かなり負担だったと思う……後できっちりお礼をしなければ。
結果としては普通の障壁であれば、衝撃波を2回まで防ぐことが出来た。
クロはさらに強化して金剛とかになっているので、そちらであれば何度食らってもダメージを受ける事はない。
たぶん、障壁って防げるダメージ量が決まっていて……例えば100まで耐えられるとして、それを削り切らない限りは本体にダメージがいかないんだと思う。
さらには時間経過で削り取った分が徐々に回復すると……なので金剛まで強化すると、回復量がダメージを上回ってずっと無効化出来るんだと思う。
なので俺はヘルメットを宝石で強化して障壁を付け、クロはもう強化済みなので問題なしだ。
対ミノタウルスに関して言えば、よほど大勢に囲まれない限りは致命傷を負う事はないだろう。
ただ厄介な能力であることには変わりない。
厄介ではあるけど……たぶんカードをゲットしたら使える様になるんじゃないかなーって思ってたりする。
自分で使う分には便利な能力なので、ぜひカードを入手したいところだ。
……さて検証も終わったし、そろそろご飯の時間だ。
もう帰るんだし、最後に鎧と武器も一つだけ持って帰ろうかな?バックパックに入らなくても、抱えて持っていく事はなんとか出来るだろう。
そう考えミノタウロスから装備を全て引っぺがしていたのだけど、ふとある考えが浮かんでくる。
「ミノタウロスねえ……ファンタジー物の小説だと、お肉扱いだったりするけど」
小説によるけどね。
オークとかミノタウロスはお肉扱いなのもあったりする。
ミノタウロスは3mを超す巨体だ。
もしお肉がとれるなら、量も確保出来るし味が良ければ牛さんに代わるお肉として……。
なんて思ったのだけどね。
「いや、これ無理だ。体部分はほぼ人じゃん……」
鎧を脱がして初めて分かったけど、こいつらの体って牛よりも大分人間に近いんだ。
ちょっとさすがにこれを解体したり、食べたりってのは遠慮したい……。
これがまだ腕と足を切り落としたら見た目は牛です!とかならいけた可能性もあるけど、これはねーちょっとねー。
興味が無かった訳では無いんだけどねえ。
まあ、20階に行けばまた4足の出てくるだろうし、もっと美味しい牛さん居るかも知れないしね。
食べることは諦めて、とりあえず持って帰れるだけ持って帰ろうっと。
「とりあえず各種装備を1つと……角を持って帰るかな」
角は高い気がするから、もう一つぐらい持って帰ろう。
てかね、倒す敵の数に対して持って帰れる量が少なすぎると思うんだよね。
もうちょっとバックパックの容量とかなんとかならないもんかねー。
このへんもアマツに相談すりゃ何かしら対策してくれる……と良いなあ。
「お、角も良いポイントになるね。1万超えか。あとは装備が2万……鎧が3万超えているけど……持って帰るのきついんだよなあ」
休憩所へと戻り、端末を起動し剥ぎ取ったものを売ると、どれも良いポイントになってくれた。
特に装備はかなりの高ポイントである。
さっきも言ったけど、やっぱもう少し持って帰れる量を増やしたいよね。
角だって装備ほどでは無いけど場所とるし、そこまで大量に持って帰れる訳ではない。
それかその場で売却が出来るようにしてもらうか……そう言えば第一回の打ち合わせは終わったんだよな。ってことは今アマツはフリーだったり?
「お土産もって行ってみるか」
ご飯食べたらアマツのところに行こう。
手ぶらで行くのもあれだし、ケーキでもお土産にしようかな。
疲れているかもだし、甘いものがよかろうなのだ。
2時間後。
俺は市内で一番人気のケーキ屋さんでしこたまケーキを買いあさり、5階へと向かっていた。
行くのは俺だけね、クロはお腹いっぱいでお昼寝タイムです。
「アマツさんいるー?」
「いるとも!」
いたいた。
とりあえずお土産を渡してっと。
「これ、お土産のケーキ。よかったら食べてね」
「おお!ありがとうありがとう!」
ケーキの箱を受け取り、お礼を言うや否やお皿とお茶を用意するアマツ。
俺の皿もあるっぽいので一緒に食べるつもりらしい。
ケーキ久しぶり……でもないな、カフェルームで食ってたわ。ケーキは好きなのでありがたく頂きますがっ。
「買った本人が言うのもあれだけど、このケーキうまいね」
「美味しいね!」
さすが市内で一番人気なだけはある。
カフェルームで食べたのと比べると一味も二味も違う……もうちょい買っておけば良かったか?いや、それだと買い占めになっちゃうし、夕飯がある事も考えたらこれぐらが丁度良いだろう。うんうん。
「ところで今日は何の用だったんだい?」
「あ」
ケーキに夢中で当初の目的忘れてたぜい。
「ちょっとダンジョン関係で要望がありましてー」
「おお、ぜひとも教えてほしいね!応えられるかは分からないけれど、善処するよ」
善処……ま、まあ良いや。
せっかくだから以前から聞こうと思ってたことも言ってしまおう。
ええと、なんだっけ。まずアイテムをもっと持って帰りたいってのと、装備の強さを目安でも良いので数値化してほしい。
あとは端末の画面をみんなで見やすくして欲しい、空間にホログラム表示したりとか。
こんなもんだっけ?
……あ、虫は出さないほうが良いってのもあったか。
「なるほどなるほど」
とりあえず、ざーっと思いついた事を話すと、アマツは少し考えるそぶりを見せる。
持って帰る量はバランス調整難しそうだからなあ……どうなるかなー。
「いまちょっと確認したけど、確かにあまり持って帰れてないみたいだね。こちらについてはマジックバッグの容量を増やすよ……ただ、他のダンジョンとの兼ね合いもあってね、それで決定って訳じゃなくて、今後さらに変更になる可能性もあるから、そこは納得して欲しいかな」
「はい、大丈夫ですよー」
他のダンジョンの兼ね合い……なんだろ。思いつかないぞ。
バッグの容量が不足するってのはどのダンジョンでも変わりない気がするけども。
「大きいダンジョンは車両も入れるからね。この間の打ち合わせの時に少し話題が出たのだけどね、アイテム運搬用の車両を用いるつもりらしいんだよ」
「あーなるほど」
そっか、そういうのもあるか。
バッグの容量増やしすぎると車両いらないじゃんってなって、メーカーさんが涙目になる。
でバッグの容量が微妙だと、車両の入れないダンジョンだと持って帰る量が減って……つまり俺たちが涙目になる。
確かにバランス大事かも。
ま、その辺はアマツとかお偉いさんにしっかり考えて貰おう。
……それだけじゃちょっと不安もあるから、実施に潜る者目線ってことで、俺もちょいちょい要望ださんとだな。
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