第107話

ミノタウロスの首が千切れ、頭が飛んでいく。

音を立て崩れ落ちるミノタウロス……さすがに頭を飛ばされて生きている生物は居ないだろう。


とりえあずはこちらの勝利だ。



勝利はしたが……ダメージがちょっときつい。

体の内部が痛いし、なんか気持ち悪い。


呼吸もし難いし、これ肺とかグチャッてそう。



「あー……未だかつて味わった事のない痛みが…………よし、治った」


幸いなのは事前に飲んでおいたポーションで治る程度の傷だった事か。

飲んだのは15階で開放された一番良いポーションである……これで完全に治らなかったら不味い事になってたな。



「しっかしなあ……」


そう呟いてじとーっとミノタウロスに視線を向ける俺。

そして次いで足元の砕けた地面へと視線を向ける。



「なんか衝撃だけ飛ばしてる?盾で防御してもダメージ受けるとか勘弁して欲しい……てか、これ頭に食らったら死んでたかも」


なんかさ、このダンジョン初見殺し的なのが結構あるよね……。

油断していた訳じゃないのにこんだけダメージ受けるとか勘弁して欲しい。


事前に情報が分かっていれば対処出来るレベルだから、まだ良いのかも知れないけど。

……まあ、俺たちがダンジョン攻略一番進んでいる訳だし、仕方のない事ではあるんだけどねー。




「クロは……攻撃を受け止める事はまず無いと思うけど、回避しても攻撃の直線状に居るだけでダメージくらいそうだから、気を付けてね」


衝撃は斧の軌道にそって飛んできた。

なので攻撃の直線状にいなければまず食らう事はないだろう。

クロの場合はスウェー?で避ける感じの時が危ないんで、そこだけ気を付ければ良いかな?


俺は……避けれなくは無いと思うんだけど、華麗に避けるのは無理かなー。

避けるのに専念みたいになっちゃいそうだし、弾いたほうが良いかも?


問題は弾いたとして、あの攻撃……衝撃波みたいの?あれがどうなるかだよなあ。

斧の軌道にそって、衝撃もそれてくれれば良いけど。衝撃だけ真っすぐ飛んで来たら、痛いじゃ済まないかも知れないし。


ま、これは要検証だね。




「スキルで倒しちゃったし、通常攻撃がどれぐらい通るか確かめよっか」


検証と言えば、通常攻撃で倒せるのかも確認しておかないとだ。

土蜘蛛は強すぎだからねぇ……そのおかげですっごい助かってるけども。


スキルである以上は全部の戦闘で使うとか出来ないし、あれはいざって時用だよな、どっちかって言うと。


とりあえず、持っていけそうな装備を剥いでおくかな。


「鎧高そうだけど、でか過ぎて無理!」


ミノタウロスでかいから装備もでかいんだよ。

鎧欲しいけどこれは無理だ……とりあえず籠手と兜に靴あたりか?盾は1個ぐらいなら抱えられるかも知れない。

検証終わったら確保しておこう。


あとは角が高そうなので……ちょうど頭取れてるし、これも持って帰ろう。

俺の方は一杯だからクロの方でお願いね。


最初はバックパックに頭を入れるの嫌がってたクロだけど、牛さんでひたすら頭回収してたせいか、最近ではまったく気にしなくなってるのよね。


慣れって怖いねっ。




さて、大体回収したところで次の階層行ってみますかね。


「やっぱフィールドタイプかー……1体の狙っていこう」


16階に続き、17階もフィールドタイプだった。

ミノタウロスだし、元ネタ的にもしかすると迷宮ぽいのかなーって考えたけど、そうじゃなかったね。


ただ、フィールドタイプとは言っても……こう、遺跡みたいのが崩れて更地になった様な感じっていうのかな。

ところどころ建造物が残っていたりして、それが大まかな道に見たいになってる感じだ。



「地図も大丈夫だね。クロ、いくよー」


地図のオートマッピングも機能しているし、早速行きますかー。

地面でごろごろしているクロに声を掛け、俺たちは慎重に先へと進み始めた。






「防具の上からでもダメージは通る、だけど切断まではいかない、と」


とりあえず見つけた第一村人……ではなく、第一モンスターを不意打ち気味に襲撃してみた。


防具の上からの攻撃だけど、一発で切断するまでは行かなかった。

かなり防具の性能が良いのと、ミノタウロス自身の腕が太くて骨も堅いもんで、刃が止まってしまったのだ。


頭部を狙えば一撃でいけそうだけど、でかくて狙うのは大変。

なので足に一撃を入れて、それから頭部狙いが良いかな?



とりあえず通常攻撃でも行けるのが分かったし、あとはコボルトカードの検証をしよう。

カード自体は俺とクロの装備にセット済みである。


どうやって使うかだけど……毒を使って攻撃するぞ!って考えると、刃部分に毒がぬめって出てくる感じ。

毒付与ってこう言う風になるのね……まあ、そうだよね。


なんかこう、毒っぽい色に刃がぼんやり光ったりとか、そう言うのちょっと期待してたけど、そうじゃなかった。




「毒はかなりやばい効果だなあ。次の毒が出るまでクールタイムっぽいのあるけど、最初の1体は確実に無力化出来る」


で、結果のほうだけど。

切り付けてすぐに悶え苦しんで、1分も経たずに絶命したよ。


やべー毒ですわこれ。


ただ強力が故に連続では使えないらしい。

一度切りつけると、再び毒が出てくるまで10秒ぐらい間があった。


まあ、これだけでも最初の1体を確実に無力化出来るし、有用だよね。


……クロ的にはちょっと不評だったみたいだけど。


クロの武器って不可視なんだけど、それが毒付与すると何かあるのが分かっちゃうんだよねー。

それがお気に召さなかったらしい……でも有用なので使う、との事だ。



「投げナイフのレベルが上がったら、投げナイフにカードセットするのもありだな」


15階で買ったナイフもその内レベルが上がればカードをセット出来るようになるし、そうなったらコボルトカードをセットしても良さそうだ。

4本あるし、うまく行けば一気に4体を無力化出来ちゃう。


あたればだけどなっ。



さて、カードの検証終わったし……あとはミノタウロスのあの攻撃……あれの検証やらないといけないだろうね。

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