第106話
とりあえず今分かっているのは、どうやら遠距離攻撃手段はないってこと。
そして装備が良いので、あまり近接やりたくないなーってことかな。
「遠距離攻撃なさそうだし、最初に魔法撃ってもらってもいい?」
俺の言葉にクロはうにゃんと鳴くと、魔法を撃つための準備を始める。
……準備と言っても姿勢を低くして、お尻をふりふりしてるだけなんだけどね。
これ、魔法というより飛び掛かる準備のような気がしなくも無い……。
ま、まあ良いや。
俺も投げナイフがあるのでクロが魔法を放つのに合わせて投擲しちゃおう。
全身をしっかり鎧で覆っていて、盾を持っている相手にどこまで通じるかは疑問ではあるけど、ないよりはましだろう。
運が良ければ鎧の隙間とかに刺さるかもだしね。
小部屋に突入すると同時に、クロが魔法を放つ。
俺もそれに合わせてナイフを全て投げつけるが、鎧に弾かれてしまう。
て言うかナイフを気にもとめて無い感じだ。
魔法を防ぐのだけに集中していそう……現に氷礫は躱すか、鎧部分にあたり、火球は盾で防がれてしまう。
火がなかなか消えないので、盾を手放したが本体へのダメージはほとんど無いだろう。
「きっちり防ぐかー……っと」
思っていたより厄介な相手かも知れない。
俺が一言呟いた直後には、既に目の前に居て武器を振りかぶっているしさ。
体がでかいからと言って遅いわけじゃ無いんだよな。
腕だって長いから、先端の速度とか恐ろしい事になるし、遠いところから攻撃届くし……まあ、でも対応できない程では無い。
ミノタウロスの武器は斧だけど、それが俺の頭目がけて振り下ろされたので、俺は盾を構え……少し体を横にずらして攻撃へ備える。
止められるなら良し。止められないなら受け流してどうにかすれば良し。
大体オーガの倍ぐらいの威力だろうか?
何とか防げる威力だったようで、俺はミノタウロスの一撃をしっかりと盾で受け止めていた。
もう少し強かったら受け止められなかった。
盾がなかったら腕が切断……はしないだろうけど、間違いなく折れてただろうなって感じの威力だ。
当然それだけの一撃を受けたとなると、盾越しでも衝撃が伝わってくる。
それは腕から肩へ、そして胴体を通って足元へ抜けていき、地面を盛大に砕いた。
「がふっ!?」
衝撃が体を通った直後、痛みと共に喉の奥から血が溢れてきた。
ちょっと待て!?盾で防いだのになんでこんなダメージ受けてるのっ!??
ヤバい、ヤバいぞ。
……俺が何が起きたのか分からず混乱していると、それをチャンスだと思ったのだろう。ミノタウロスは再び武器を振り上げていた。
ダメージのせいで避けるのは難しそうだ。
ただ盾でガードは出来る……ガードしたとしてもさっきのがまた来るだけじゃないか?なら受け流すか……受け流したとして、あれも防げるかは分からない。
ただ、防がなければもっと不味いことになるのは確かである。
俺は覚悟を決めて、盾を構えるが……再び衝撃がやって来る事はなかった。代わりに来たのは奴の悲鳴だ。
クロがミノタウロスの武器を持つ腕を、土蜘蛛の牙で食いちぎっていた。
「っ土蜘蛛ォ!!」
武器を失い、盾も手放したミノタウロスは丸腰だ。
まだ角があるけど……そんな時間を与えるつもりは無い。
クロの攻撃を受けひるんだ所に思いっきりスキルを叩きつける。
ミノタウロスは残った腕でどうにか防ごうとするが、それぐらいで防げるような物ではない。
土蜘蛛の爪が、腕を引き裂き、ミノタウロスの喉元へと突き刺さった。
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