第13話
カウンター気味にでかウサギへと鉈を振るうが、ズキンと蹴られた箇所が痛み振り切ることが出来ず、脚を掠めるに終わる。
その後もウサギの蹴りを捌いては攻撃を仕掛けるが傷が痛み中々倒すことが出来ないでいた。
「はぁー……はぁー……」
……結局倒すまで数分掛かってしまった。
息が切れてる事から分かる様にポーションの効果も切れている。
そして最悪なのは骨をへし折られた部分がまだ痛むと言うこと。でかウサギ2匹を倒すのにポーション一つでは足りないのだ。
(どうする、どうすれば良い?? このままじゃレベル上がりきる前にポーション使い切っちゃう)
レベルが上がれば2匹同時に相手をしても被弾しなくはなるだろう。
だが今までの経験から言ってそれまでに相当な数のでかウサギを倒す必要がある。
クロと一緒であればまず通路の敵を倒しまくってレベルを上げ、次に数の少ない小部屋を……と段階を踏んで強くなっていくことが出来たのだが、俺一人では最初の通路の時点で詰んでいる。 ポーションの在庫は50近くあるがレベルを上げるまでに使い切ってしまうだろう。
(2階で……ダメだ時間が掛かりすぎる)
2階でレベルを上げると言う手もあるが、同じ敵をずっと倒していると段々とレベルが上がりにくくなるのだ……2階でレベルを上げるとなるとかなり時間を消費するはずだ。 時間に余裕があるときならとにかく今はダメだ。
(攻撃はまだ避けきれないし、防いでも軽減するだけでダメージはある…………あ)
悶々と悩んでいた俺だが、ここである考えに至る。
「っ防具!! 防具付ければ良いじゃん!?」
最初にホームセンター行っても防具は揃わないだろうと、それに防具が無くてもここまで来られていた事からすっかり頭の中から抜け落ちていた。
だとしても何でそんな簡単な事にすぐ思い至らなかったのか、自分でも疑問ではあるが……そこまで頭が回らない程に動揺していたのかな、と思う。
(クロの事で動揺してる、ちょっと落ち着いて考えないとっ)
落ち着いて考えてみれば身を守る防具は購入しようと思えば購入できる。
簡易的なもので良ければスポーツ品店で売っているだろう。
しっかりしたものだと俺には思い浮かばないが、これネットで検索すれば出てくるんじゃないだろうか?
ただ通販であれば少し時間が掛かる、出来れば実店舗で揃えたい。 これも恐らく調べれば分かるだろう。
「……今日は戻る。 そして俺でも買える防具を探して明日買いに行く。 攻略を進めるのはそれからだ……」
気持ちは今すぐ敵を倒して強くなって先に進みたい。
でも冷静になった頭がそれじゃダメだと言っている。
俺は2階へと引き返し、可能な限りウサギを倒して1階の休憩所へと戻っていった。
「クロ、ただいま」
俺が休憩所に入るとクロが出迎えに来てくれていた。
それだけで落ち込んでいた気持ちがすっと楽になる。
俺はクロを満足するまで撫で回し、簡単な食事にする事にした。
「……ん? これ、防具だよ。 さすがにそろそろ有っても良いよなーって、明日用意しようと思っているんだ」
食後にスマホで購入できそうな防具を調べていると、クロが画面を覗き込んできた。
俺の話を聞いたクロはじっと俺の顔を見つめてくる。
「ん、大丈夫無茶はしないから」
そう答えて頭を撫でてあげるとクロはにゃんと鳴いて毛布の上に丸くなる。
無茶はしない。
……無理はするけど。
翌朝、俺はクロに買い物に行くことを告げ、ある店まで来ていた。
「ここか……疲れた」
慣れない運転で緊張したけれど、事故ることもなくついて良かったと思う。
とりあえずお店に入ろう、出来るだけ早く買いたい。
「いらっしゃいませーぇ!」
店員がシャッターを開けたので俺は一番乗りで店へと入店する。
俺に気が付いた店員が朝からテンション高く声を掛けてくる。
自分で探すと時間掛かりそうだし、ここは店員さんにお願いした方がいいだろね。
そう考えた俺は店員さんに向かい手を上げ声を掛ける。
「あ、すみません。 ホームページを見たんですが、軍用品って今でも扱っているのでしょうか?」
「はい、御座いますよー。 サバゲー用ですか?」
あ、扱ってるのか、良かった。
「はい、そうです。 これから始めるのですが、折角なら一式全部本物で揃えようかと思いまして……一式揃いますか?」
「ええ、一式ですね……そうなると、今有る在庫ですと米軍のであれば一式御座いますぅ」
俺が買いに来たはミリタリーショップと呼ばれるところだ。
最初はサバゲー用のレプリカだとなあ……とあまり買う気は無かったが、よくよく見て行くと中には本物の軍装備もある事が分かった。
これならダンジョンでも使えるんじゃないかと思い買いに来たのだ。
店員さんにサイズを告げると次々に店内から商品が集まってくる。
5分かそこらで俺の前にテレビなどで見かけるあの米軍の装備一式が揃っていたのである。
あ、さすがに銃は本物じゃ無いからね?
本物が使えるなら絶対買うけど……あの速度で動き回るウサギに当てる自信はない。
「おぉ」
「つけてみますか?」
「良いんですか?」
「ええ、どーぞどーぞぅ」
いざ実物を見るとこう……何かワクワク感がある。
それが俺の表情にも出ていたのだろう、俺は店員さんの言葉に甘えて装備をつけてみることにした。
装着はそこまで難しくはなかった……つけるの大変だと軍人さん大変だろうし、そりゃそうだよね。
「ここ、鉄板入ってるんですね」
「そちらセラミックとなってますぅ」
「あ、そうなんだ」
胸の辺りに堅い板状の物が入っている。
最初は鉄板かと思ったが違ったらしい、軽く話を聞くとこのプレートは弾を防ぐようで昔は鉄板が主流だったが今は違うとのこと。
「ええ、あとこちらヘルメットとフェイスガードですぅー」
「ありがとうございます」
フェイスガードごついな……でもこれならウサギの蹴りも結構軽減してくれそうだ。
「よくお似合いですよぅ」
「そ、そうかな……それじゃ、これ一式買いますんでお会計お願いします」
「はい、かしこまりましたぁー!」
似合っていると言うのはお世辞だろう、何せ装備の見た目に対して中の人が貧弱すぎる。
……筋トレしようかな、レベルアップの恩恵で身体能力上がっているけれど、そこに素の筋力も加わればもっと強くなるよね。
うん、そうしよう。 スポーツ店にも寄って筋トレ道具も揃えるとしよう。
とりあえず会計済ませますかね。
「ん?」
会計のためレジに向かった俺だが、ふと視界にあるものを捉え、足が止まる。
「……あの、これって」
「それですかぁ? そちらは軍のものでは無いですが、特殊警察などが使う暴徒鎮圧用のシールドですねぇ。 銃弾ぐらいなら防ぐそうですよぅ?」
「……これもください、あとこのプロテクターも」
「かしこまりましたぁー!」
取り扱っているのは軍の物だけでは無かったらしい。
盾があれば攻撃を防ぐのは大分楽になるだろう、それにパッドが入って居ない箇所をプロテクターで保護すれば防御面は大分ましになると思う。
帰ったらすぐ試さないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます