第9話
戦闘も終わったので先ほど蹴られた箇所を確認してみる。
蹴られた箇所は赤く腫れており、腕を動かしても痛みは無いが触れるとズキンと鈍い痛みがある。 折れてはないけれど明日には青くなっていそうな気がする。
「まさかあんな飛ぶとは……腫れてきてるし。 クロは大丈夫? 念のためポーション使おうか」
まあポーションあるんですけどね。
怪しげな液体を蹴られた箇所にぬりぬりすると腫れがスッと消えていく。試しに触れて見ても痛みは無い、完治だね。
念の為クロの前に残りのポーションを置いて見るが、クロはちらっと一瞥するとふいっと顔を背ける。
いらないってことかな。
「んー」
治療を終えて落ち着いたところで改めて部屋を見渡してみる。
ぱっと見はこれまで見てきた小部屋と変わりは無い、奥に続く通路も無さそうだし……まさかここで終わり?と一瞬思ったが、その直後にガコンと音がして、最初にウサギ達が居た辺りの床がゆっくりと沈み始めた。
「……階段だ。 良かった、ちらっと覗いて今日は戻ろうか」
近寄り確認すると、そこには下へと続く階段が出来ていた。
階段の先には廊下が見えており、この先もダンジョンが続いている事が分かる。
1階だけではなく2階もあることに少し嬉しくなった俺はクロに声を掛けると階段を降り始めた。
「んー? 見た目は1階と変わらないね? 休憩所あるのかな……あるかどうか確認したら上に戻ろうか」
下りた先は1階とほぼ同じ見た目の廊下が続いており、ある程度で行ったところで曲がり角や十字路があるところも1階と同じであった。
まさか1階と同じ構造じゃないだろうな……と思いながら俺は十字路へと向かいゆっくりと歩を進める。
結論から言うと休憩所はなかった。
1階で休憩所のあったところには廊下と少し行ったところにT字路があるのだけ確認できた。
もしかするともっと探せばどこかに有るのかも知れないが、結構良い時間だったし、一度休憩所で休みを取らないといけない事を考え、今日はそこできっちり切り上げる事にしたよ。
「さて、夕飯はっと……」
戻って風呂に入り汗を流した俺は、夕食を作る……のは面倒だったので冷蔵庫の余り物をチンして夕食を済ませることにした。
毎回一人分作るのは手間なので多めに作って余りを冷蔵庫に入れてあるんだよね。
「休憩所なかったねえ……んー、毎回階段まで行くのは結構面倒だなー……」
ちょっと行儀悪いけど、ご飯を食べながら完成したマップを見てそう話す俺。
……独り言ではないよ? すぐそばでクロがご飯食べてるし、時折尻尾を振って聞いてるよアピールしてくれてるし……本当は一緒に見て欲しいところだけど、クロからしたら飯終わってから話せよ言ったところだろうか。
……はい、ごめんなさい。
食事終わってから見ることにします。
「……まあ、でも30分ぐらいだし……そうでもないかな?」
食事を終えたので改めてクロと一緒にマップを見てみる。
さっき毎回階段まで行くのは面倒だと言ったけど、よく考えれば歩いて30分そこらなので言うほどでも無かったね。
本当は2階にも休憩所があって、そこが1階の休憩所と繋がっていればなーとか思っていたのだけど、そう上手くは行かないようだ。 まあ、これぐらいの距離なら素直に歩きましょ。
その日はテレビを見ながらダラダラと過ごし、眠くなったところで就寝となった。
そしてその翌日……は友達と遊びに行ったので、そのさらに翌日。
俺とクロは再びダンジョンへと潜っていた。
今日の目的は2階での探索である。 俺とクロは1階を駆け足で抜け、階段へ寄り道せずに向かった。
「あ、いないね」
もしかすると扉の先のウサギ達が復活しているんじゃ……と考えたが、扉の先にウサギの姿はなかった。
道中の小部屋のネズミは復活していたのでここだけ特別なんだろう。
(もし他の人が来たらどうなるんだろ、このままなのかな?)
おそらくあのウサギ達は2階へと続く階段の門番的な存在なんだと思う。
俺とクロが倒してしまい今も復活していないとなると、今後俺達以外の誰かがこのダンジョンに来た場合素通り出来てしまうのだが……とそこまで考えて続きを考えるのはやめた。
今は俺達以外に潜る人は居ないし、確かめようがないからだ。
そんなので悩むより先に進んだ方が良いだろう。
「むっ」
2階へと続く階段を降りてすぐ、2階最初の敵と遭遇した。
「やっぱ2階の敵はウサギかー」
曲がり角から飛び出してそっこーでクロに足を噛まれて転び、そこに俺の鉈を頭に受けたちょっぴり可哀想な敵、それはウサギであった。
階段守ってたのがウサギだった時点でこの先の敵もウサギなんだろうなーと思っていたんだよね。
廊下で会う敵がせいぜい2匹なんだよね、だから門番を倒せないようじゃこの先進む資格はないぞ、的な?
……しかし、ネズミに続いてウサギねえ。
前にこの手の動物限定なダンジョンなのかーって考えたけど、もしそうならこの先豚とか牛が出て来てもおかしくないわけで……。
そう考えちらっとウサギの死体を見る俺。
「……ウサギって美味しいんだっけ?」
ネズミはさすがに嫌だけど、ウサギって国によっては普通に食ってた気がするんだよね。 フランスだっけ?
食えそうなお肉をひたすら放置するってのもちょっと気が引けるんだよねえ……。
「あ、いらないです」
なんて考えてたらクロがウサギの死体を咥えて俺の足元に持って来たではないですか。
思わず真顔でいらないって言っちゃったじゃないかい。
ちょっと捌けないから無理かな……それにウサギと言ってもダンジョンに出てくるウサギである。本当に食えるか分からないしね。
俺が断るとクロはそう?見たいな感じで首を傾げ、そのまま気にした様子なく、スタスタと奥に進み始める。
俺は置いて行かれないようにその後を追うのであった。
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