第8話 欲望と花

「女の喧嘩は割り込まないのが正解だ」パールが云った。

「女の子、な。僕も同意見だ。田中くんも、出てこない方がいいぞ」僕は田中くんに云った。田中くんは頷いた。


「叶奈だって、オタクに逃げてるんじゃないの? 自分は田中くんが居るからいいよね」岩田美月が感情をむき出しにしていた。


 橋本叶奈の哀しみメーターがマックスに達した。

 僕は女の子の哀しみメーターに反応する。本能だろう。


 僕は二人に近づいた。二人の感情を鎮めるために。

「君たちを観察してしまったお詫びというか、お礼です」僕は二人に花を渡した。

 

 岩田美月にはピンクの花。

 橋本叶奈には黄色の花。


 色は、二人を見て決めた。


「なんで花……キザめ」パールが呟きながら眺めている。


 僕は眼鏡を外した。

 この花は、記憶を消す。そして本来自分がやりたい事をやろうという意思を手伝う効力がある。


 二人の欲望が見える。


 岩田美月の欲望は、自分が着たい服を着る。

 周りの目なんか気にしないで、好きなお洒落を愉しみたい。

 そして男の子と遊びたい。


「私、ずっと装ってきた。男の子受けするファッションと髪型で。興味の無いアニメを見て、必死で男の子と仲良くなるチャンスを狙っていたの」岩田美月が云った。


「岩田美月さん、あなたの努力は相当なものだ。あなたの外見は丁寧に手入れされているのが解る。可愛らしい、ピンクがよく似合う」僕は岩田美月に云った。

 

 女の子の良い所は、口に出して本人に伝える。

 いつもやっている事だった。


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