第7話 全員登場
「驚かせてしまって申し訳ない。正直に話しましょう」僕はブローチを拾って、ゆっくり胸元に付けた。
「近くに行ってもいいですか?」僕は許可をとり、岩田美月に近づいた。
自分が天使で、どういう状況で今に至っているかを説明した。
岩田美月は驚きなのか怒りなのか、終始不安定な表情をしていた。
「その気にさせないで」岩田美月の第一声だった。
「SNSで優しい言葉で近づいて女をその気にさせるなんて紳士じゃないわ」岩田美月は泣きそうな顔だった。
「まず天使という事に驚いていないぜ」パールが僕にだけ聞こえる声で云った。
紳士じゃない……それは僕にはダメージの大きい言葉だった。
「お前もおかしいから」パールだけが冷静だった。
ガサッ。ベンチの陰から音がした。誰か来る。
現れたのは、橋本叶奈だ。どうしてここに?
「叶奈? どうしてここに?」岩田美月が驚く。
「美月ごめん、私美月の裏アカウント見てた。TLで知らない男とやりとりしてたのにある日それが途切れた。怪しいと思って田中くんに……ハッキングを頼んだ」橋本叶奈が泣きそうな声で云った。
「私のアカウントをハッキングしたって事!? ありえないでしょ、プライバシーの侵害じゃない」岩田美月が声を張り上げた。
「ごめんなさい、心配だったの。今日も心配で見に来た」橋本叶奈は涙ぐんでいた。
「私を馬鹿にしてるの!?」岩田美月が叫んだ。
ベンチの陰にもう一人居る。
多分橋本叶奈のボーイフレンドの田中くんだろう。
岩田美月が知らない男と会うのを心配したと云っていた。
男友達を連れてきたのは賢明な判断だ。
そしてベンチから出てこない田中くんも、賢明だ。
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