第6話 美月と会う

 ヒールの靴で歩きづらそうにこちらに向かってくる一人の女の子。

 多分、岩田美月だ。

 近づいてきた、顔がはっきり見える。

 頬が上気して、少し笑っている。


「あ……」岩田美月が何かを云いかけた。


 その瞬間、岩田美月のヒールは地面にのめり込み、彼女の歩くリズムを崩した。

 岩田美月はつまづき、僕の胸に飛び込んできた。

 その衝撃で、僕のブローチが外れた。

 ブローチが地面に転がる。衝撃で、パールはすぐに立ち上がれない。

 

「しまった……」パールは細目で僕を見ている。


 同時に、岩田美月が倒れないように、僕は彼女を抱きしめた。

 慣れないヒールを履いてきたのか? なんていじらしいんだ。

 そして、可愛い……。

 女の子の【可愛い】に触れたら僕はどうにかなってしまいそうだ。


 しかしいつまでも彼女を抱きしめている訳にはいかない。

 不可抗力とはいえ、許可なく女の子を抱きしめるなんて紳士のする事ではない。

 僕は岩田美月を自分から離した。

 僕の頬はポッとなった。

 

 次の瞬間、僕は宙に浮いていた。

 ブローチ(パール)を身に着けていないと、人間の姿を保てないのだ。


「う、浮いてる!?」岩田美月が驚愕の表情で僕を見ている。


 僕は無表情を保っている。

 そしてゆっくり着地した。

 ここで僕が何らかの表情を見せる事は、岩田美月に不安を与えると思ったからだ。

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