第5話 土曜日、夕方六時
岩田美月から返事が来た。
次の土曜日、夕方六時に公園という指定だ。
『ちょっと薄暗い時間帯だけど、大丈夫?』僕は心の底から思った返信をした。
『薄暗い時間に会いましょう。明るい時間だと顔がよく見えて恥ずかしいから』岩田美月からの返事だった。
岩田美月の指定した公園は大通りに面している。
土曜の夕方は、たくさんの人通りがあるだろう。
公園の中を散歩している人もいるかもしれない。
女の子として、安全ゾーンだろう。僕もホッとした。
「いやいやいやいや、美月からの返事、確実に狙ってるだろう」パールがチーズを食べながら云った。
何を狙っているというのだろう。僕はきょとんとした。
「顔が見えて恥ずかしいから……なんて、少女漫画でしか聞かない台詞だぜ? 確実にお前を男として狙っているって事だよ」パールが珍しく真剣だった。
「パール……いつ少女漫画を読んだんだ?」僕は本気で尋ねた。
「女心を掴む為に、参考になるものは片っ端から読んだんだよ」パールは最後のチーズを口に入れた。
土曜日、僕は人間の姿になった。
人間の姿といっても、顔は天使の時と大差は無いのだが。
髪型とファッションは人間界のものにする。
この人間の姿を維持する為にはパールの協力が必要になる。
パールはブローチとなって、僕の胸元に居る。
一応眼鏡をかけておく。パワーを抑えるためだ。
約束の六時少し前、公園で岩田美月を待つ。
女の子三人組が通る。僕を見ている。
「何あの子、綺麗な顔~ジャニーズみたい」
「一人って事は、彼女待ちじゃない?」
「スタイルも良いし、見れただけでラッキー」
僕は天使なので、離れた人間の声が聞こえる。
……僕って、人間界で「綺麗な顔」になるのか。
「安心しろ、人間から見たら天使は全員、美形になる」パールがぽつりと云った。
その瞬間、人間の気配がした。
「来た……」二人同時に思った。
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