第17話 トオル「博士、行ってくるよ! 熱血ポニーテールは任せて!」

 次の日。

 母と眼帯メイドこと、めいちゃん、に見送られながら玄関で靴を履く。


「それじゃ、カーさん! めいちゃん! 行ってくるねー!」

「はい。行ってらっしゃい。旅に出るためにしっかりホンダさんに教えてもらうのよ?」

「はーい! めいちゃんもカーさんを宜しくね!」


 めいちゃんはこくんっとうなづく。

 フリフリとした白と黒の服がなんとも愛らしい。

 母はホンダの連れてきた眼帯メイドにめいちゃんなんてニックネームまでつけてしまっうくらいに気に入ったようだ。

 二人に見送られて、元気よく家を飛び出した。

 トオルはホンダ家に着き、ドアのチャイムを鳴らす。


 ――誰も出ない。


 もう一回鳴らす。


 ――やはり出ない


(博士、出かけてるのかな?)


 不思議な顔をして、トオルはホンダの家を離れようとする。

 その時、家の中でガタガタと物音がした。


(あれ? 博士いるの?)


 恐る恐るドアノブに手をかけてみる。

 と、鍵はかかっておらず開いてしまった。

 勝手に家に入ると、やはりガタガタという物音がする。

 音の方に忍び足で近づく。

 どうやら、昨日の研究室の方から音がしているようだ。


(どうしたんだろう?)


 トオルは隠れながらこっそりと研究室の中を伺う。

 つば付きの帽子を深く被った子が何やら物を弄っているようだ。

 

(帽子で顔は良く見ないな……僕と同じ位の歳の子なのかな?)


 村でも見たことはない子。

 その子の横で倒れるホンダが見えた。


「博士!?」


 思わず声を出して博士の近くに駆け寄った。

 僕に驚いた子供はびくりと反応する。

 すると、機械を弄ったあと、カプセルの中からでてきた熱血ポニーテールを抱えて部屋を出て行ってしまった。


「あっ! 博士の熱血ポニーテールが!? でも……!!! 博士、大丈夫ですか!!?」

「――う、うぅ、ト、トオル君か……私は良い……熱血ポニーテールを頼む。」


 博士は少し意識を取り戻すと机を指途切れの言葉で語りかける。


「――あ、あそこにムスメッセンジャーとムスメリングがある……君のだ。熱血ポニーテールを頼んだ……ぞ」


 また、博士は意識を失ってしまう。


「博士!!!」


(どうしよう――まずは、この状況を伝えないと!!!)


 博士の家の電話を使い家に連絡をする。

 何度かコール音が続いた後、母が電話に出る。


 ――カーさん、僕だよ。トオル。今博士の家で大変なことが起こってて

 ――うん

 ――うん

 ――博士が気を失って……

 ――そう

 ――僕は追いかけるから


 電話を終えても母も甲高い声が響いている。

 トオルは博士から指さされた机から道具を取り出しムスメッセンジャーを腕に巻いて出発の準備を始めた。


「博士、行ってくるよ! 熱血ポニーテールは任せて!」


 気を失った博士に話かけて部屋を後にする。

 そして、熱血ポニーテールを連れていった犯人を追いかけた。


 その子は急いで逃げたためか、くっきりと足跡が残っている。

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