第18話 トオル「あっ、君はあの時の!?」
トオルはホンダの逃げた子の足跡をたどって、村人から目撃証言を聞いて村の中を歩く。
あの盗人のあるいた道を辿っていくと、その足跡は村の外を抜けて林の中に続いていた。
(あの子は樹林の中に入ったのかな……)
そこは入ってはいけないと言わる危険地帯。
野生のムスメが居るだけじゃなくて、何人もの村民が消えてと言われる場所。
ごくりと息を飲み込み、トオルは意を決する。
(僕が、僕が行かなきゃ……)
ホンダの家から持ってきたムスメッセンジャーを触って、緊張をほぐす。
――トオルは林の中に突入した。
林の奥深くは、日が少ししか入らず、全体的に陰険な空気感が漂っていた。
幸いなことに、林の中の足跡は消えていない。
おぼつない足で、足跡を目印に進む。
歩き続けていると少し開けた場所に辿りついた。
「はぁ……はぁ……」と息遣いが聞こえる。
トオルは身を潜めて物音を立てないように慎重に伺う。
こっそりと見てみると、帽子を被った子供が項垂れて木陰で休んでいた。
(あの子は、博士の家に居た子だ! どうしよう……)
色々考えた結果、トオルは話しかけることにした。
「ねぇ、君、博士の家から熱血ポニーテールを連れていったでしょ? その子は博士の大切なムスメなんだ。返してよ。」
「――ぁっ、さっきの……」
子供は驚いた声を上げる。
トオルに気がつくと、帽子を深くかぶり直した。
「あとね。この樹林は危険なんだ。早く出よう? 僕も一緒に博士に謝ってあげるよ。」
「……君は一人で追いかけてきたの?」
「そうだよ!」
「そっか……なら……」
トオルの返事を聞いて子供は立ち上がる。
ぼそぼそと何かをつぶやいた後、腕につけていたピンク色のムスメッセンジャーが光った。
「いけ! アサシン!!!」
子供が叫ぶとムスメッセンジャーの中から、紫色の服装にマスクをつけたムスメが飛び出してきた。
忍者みたいなムスメだ。
出てくるなり、そのムスメはくないを構える。
ムスメのポニーテールに結われた髪の毛がふわりと揺らめく。
(いきなり!?)
「アサシン! 《かげぬい》!!」
子供の合図で、忍者のムスメはくないをトオル目掛けて投擲する。
――(やられる!)
僕は思わず目をつぶり身構える。
少し待つも特に体に痛みは無い……
「きゃっきゃっ!!」
何処かで聞いた事のある笑い声。恐る恐る目を開けるとトオルの目の前にはムスメが立っていた。
「あっ、君はあの時の!?」
くないを受け止めたのはあの時の――一昨日、樹林の中でトオルを襲ったアクマムスメ。
無邪気な笑顔をしながら、トオルと相手の間に立っていた。
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