第11話 レイジ「俺が守ってやる、だから一緒に来てくれ!」

 まず動いたのはツバサ君だった。


「おっしゃーーー! こんなん気合いや! 気合い!」


 ツバサ君はクー子に、声をかける。


「な、なぉ、クー子? 俺はツバサっていうもんなんやけど ……ちゃうちゃう。なんやねん。博士が変なこと言うから変な感じになってもうたやん……」


 おたおたしているツバサにクー子が言う。


「おとこのこなら、もっとはきはきしてよね。」


 クー子はそう言うと、長い黒髪は靡かせて、澄ました顔を向ける。

 その振る舞いと凛とした顔に引き込まれてしまい、ツバサの動きが止まる。


 ふぅー――


 ツバサが大きく深呼吸をする。


「クー子、あんがとな! 率直に行くわ。クー子、これから俺と旅をしてください! お願いします!!!」


 ツバサは深々と頭を下げて、指輪を持った手を前に差し出す。


「やればできるじゃない。」


 ツバサの手からムスメリングを摘み上げる。

 リングがツバサからクー子の手に渡った瞬間、ツバサ君はハッと顔を上げて、クー子の様子を黙って見つめる。

 皆が見る中、クー子も顔を少し赤らめながら、「そんなにみつめないでよ。」っと言いながらリングを自身の左手の薬指にはめた。


「つばさくん、けいやくだよ。たび、がんばろう。」


 左手の薬指にはめたムスメリングをツバサ君に見せながら、クー子は微笑む。

 次の瞬間、クラッカーの弾ける音がする。

 ホンダと眼帯メイドがクラッカーを鳴らしたようだ。

 ホンダが拍手をしながらツバサに祝福の言葉を投げる。


「おめでとう! これでツバサ君はクー子とパートナーになったわけだ。」

「おっしゃーーーー!!!!!」

「おめでとう。ツバサ君!!」


 ガッツポーズで喜ぶツバサ君にトオルは祝福を述べる。


「次は俺の番だな。」


 レイジが前に乗り出す。


「わたしは、あいのこくはくなんていらないわ」


 赤い顔をプイッと横に向けて、つんけんどんな対応をしている。


「ツンデレ娘。」

「あわっ!」


 レイジはツンデレ娘の肩を掴み、顔を近づける。

 ビクっとしながら、ツンデレ娘は「もうっ! ごういんなんだからっ!」と文句を言う。しかし、その顔は満更でも無いようだ。


 レイジは文句を言うツンデレ娘の目をじっと見る。

 ツンデレ娘の方が顔をそっぽ向けてしまうが、横目でチラチラとレイジの方をしきりに見返しているようだ。


「俺が守ってやる、だから一緒に来てくれ!」

「はわわ……」


 ツンデレ娘は、レイジの真っ直ぐな言葉によって、顔を赤面させて戸惑いながら一度こくんっとうなづいた。

 レイジはツンデレ娘の手を取り、指にムスメリングをはめる。


「しょ、しょうがないわね。わたしがれいじをたすけてあげる。」


 顔を更に紅く染めて満更でもない顔と声でツンデレ娘はレイジに応える。

 まるで恋愛ドラマのプロボーズのワンシーンのような光景だった。

 そんなシーンを見て、トオルとツバサは呆けてしまっていた。

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