第2話 ホンダ「何も持たずにこの林に入るなぞ自殺行為じゃぞ。」
母の依頼されてトオルはバタバタと外に出た。
隣町までは、舗装された道を辿っていけば着ける。
トオルは考え事をしながら通いなれた道を歩き出した。
「僕もムスメと仲良くなってムスメイトバトルがしてみたいなぁ…… レイジやツバサは着々と準備を進めてるのかなぁ。 でもカーさんの説得は難しそうだ…」
自問自答をしながらはぁ……と大きなため息を吐いたとき、周囲の環境が見慣れない木々に覆われている事に気が付いた。
「んあ! もしかして、林の中にはいっちゃった!? やばっ!?」
道から外れるとそこにはムスメが生息している危険地帯である。
「何も持たずに樹林に入るな」と良く母親から注意されていた。
自分の将来を考えていて注意散漫になってしまっていた為か、トオルは舗装された道を外れて、少し深い林の中に入り込んでしまっていた。
「きゃ♡ きゃっ♡」
何かクスクスと笑われているような、声が聞こえて此方を伺う視線を感じる。
「誰!?」
村の大人たちに危険と言われている雑木林の中で感じる視線……まさかムスメ!!?
気が付いた時には少し遅かった。
ばさっ!!!
草むらが揺れると一人のムスメが僕の目の前に現れたっ!!!
黒い小さな羽と悪魔の尻尾を生やした少女。
暗い中でも目立つ金髪で二つ結びのツインテールが目立つ。
瞳は赤く、笑った口から少し見える八重歯があどけなさを残していた。
黒くてひらひらとしたスカートに小さい胸を隠す黒い布、それよりも多く肌色が露出している。
人よりも小さい身長……まるで人形のようだ。
ムスメは微笑みを絶やさず、まるで獲物を見つけた目で見つめられる。
「きゃ♡ きゃっ♡」
気づいた時には時遅し、そのムスメは笑いながらたいあたりをしてきた。
小さい身体に似合わぬ力強く、トオルはなすべなく倒されてしまった。
すると、ムスメは添い寝をするように出し眼れたまま、トオルの胸元に顔を埋めるとグリグリと頭を押し付けてきた。
いい匂いが鼻をかすめる。心臓の鼓動は早まりドキドキと大きな心音が自分の耳にまで届く。
襲われた恐怖と、くすぐったいような、恥ずかしいような、不思議な感情が僕に渦巻く。
ムスメは顔をあげてトオルの方を見る。
その表情はなんていうんだろう……見た目にそぐわない妖艶さを纏っていた。
「あなた、おす♡ わたし、おす、すき! いただきまーす♡」
「た、たすけてーーーー!!!!!!!」
食べられる……
ムスメの顔がトオルの首筋に近づく。
目を瞑り、覚悟を決めた。
……すると、「うおおおお!!!!!」と、こちらに近づく大きな声。
ふと横目にみると、スポーティな恰好をした赤髪のポニーテールの少女がこちらに目掛けて突進をしてきていた。
その攻撃が見事にあたり、悪魔の姿をしたムスメは、「きゅー……」と声を上げながら吹き飛ばされてしまったようだ。
「助かった?」
少女は武術の構えをしながら大きく息を吐き出す。
一連の動作が終わると赤いポニーテールを揺らしながら倒れたトオルに近づき手を差し伸べる。
「だいじょうぶ?」
「う、うん……」
少女に手を取られて立ち上がった。
遅れて一人の老人が姿を見せる。とても息を切らしている。
お爺さんに気が付いたポニーテールの少女はお爺さんに近づき甘えるように頭をぐりぐりとこすりつける。
お爺さんが、少女の頭を優しくなでながら、「良くやったの。【熱血ポニーテル】」と言いながら何かの機械を操作すると、少女は消えてしまった。
その光景を呆然と見ていたトオルにお爺さんが話しかける。
「少年、大丈夫だったかのぅ? それにしても、何も持たずにこの林に入るなぞ自殺行為じゃぞ。」
「えっと? お爺さんは?」
「儂はムスメの研究をしているホンダじゃ。半年くらい前にここいらに引っ越してきた者じゃ。」
「あっ! もしかしてレイジのお爺さんですか?」
「うん!? レイジを知っておるのか? そうか。もしや君が最近レイジと仲良くしてくれているトオル君か?」
「そうです! 僕トオルです。 あの…助けてくれてありがとうございました。」
「そうか。そうか。君がのぅ。」
「はい! 僕、前から本当はホンダさんと話したかった――」
ホンダは口に指をあてながら、「ここは危ない。道まで案内しよう。一緒に行こうぞ?」という。
その顔はとても優しく、ニコニコと微笑んでいた。
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