128.熱帯林エリア

 火山エリアから三日が経過した。

 いつも通り休養をとった俺たちは、次なるエリア探索に向けて準備を進める。

 と言っても、熱帯林エリアへの特別な準備は必要ない。

 これまでに作成した魔道具と装備があれば、環境に適応するくらいへっちゃらだ。

 久しぶりに休養を休みとして満喫して、気力と体力も満タンに回復している。


「よーし、全員揃ってるな?」


「おう!」


 キリエが真っ先に返事をくれた。

 ミルアとユイの表情を見ると、しっかり休めたのが伝わる。

 少し遅れてやってきたミレイナも、落ち着いた様子で変わりない。


「さっそく出発しよう。まずは火山エリアを超えないといけないからな」


「うぇ~ またあの暑いとこ通るのか……」


「私もあんまり好きじゃないな~」


 出発前からげんなりするミルアとキリエ。

 そんな二人に俺は言う。


「心配するな。今回は通るだけだから、専用の馬車を借りてある。中は快適だぞ?」


「ホント!?」


「ああ」


「良かったぁ~ 戦う前から汗だくになりたくないもんね」


 まったく同意見だが、環境に文句を言っていては、これからの探索も大変だぞ。

 何せ残っている海岸エリアと孤島エリアは、まだ知られていないことだらけだからな。

 それに……


「熱帯林エリアって普通だけど普通じゃないんでしょ?」


「どういう質問だそれ? まぁ大体合ってるけど」


 キリエの質問に呆れながら答える。

 熱帯林エリアは、文字通り暑い森林地帯だ。

 暑いと言っても、今遠いっている火山エリアには遠く及ばないし、砂漠エリアよりマシな程度。

 しいて言えばジメジメしているくらいか。

 だけど、危険度で言えば他のエリアよりも高い。

 あそこは特殊な能力を持つモンスターの宝庫だからな。


 ユイがぼそりと尋ねてくる。


「木とか、植物も珍しいって聞いた」


「そうだな。普通の環境だと育たない種類ばかりらしいよ」


「毒、食虫植物も?」


「あるだろうな。食虫ですめばいいけど」

 

 中にはモンスターを捕食する植物もいるとか。

 俺たちにも襲い掛かってきそうだし、道中はモンスター以外にも警戒がいりそうだ。


 そうして火山エリアを抜け、荒れた荒野をしばらく進み、視界を覆うほどの森が見えてくる。

 生い茂る木々は、すでに見慣れない形のものばかり。

 湖なのか沼なのかわからない水源が、チラホラ見受けられる。


「到着だ」


「おぉ~ なんか緑って感じだな!」


「生命にあふれていますね」


 ミレイナさんが言うと、より深みが増す。

 モンスターの宝庫であり、同時に生物の楽園でもあるエリア。

 はたして同じ生命である俺たちを歓迎してくれるのか?

 あまり期待していないけど。


 俺たちは熱帯林へと足を踏み入れる。

 メインの目標は森を統べる大蛇と、空を駆ける獅子だ。

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