88.順番に集めていく

 装備強化に向けて素材を集める。

 リストアップされた素材は、どれも一筋縄ではいかない物ばかりだった。

 机の上に置かれた紙を見ながら、さらに話を進めていく。


「基本的にはクエストを受注しながら、素材も一緒に集めるっていうスタンスになると思う」


「どれから集めるんだ?」


 キリエが尋ねてきた。

 俺は紙を示しながら話す。


「順番的には、最初に雪山エリアのクエストを優先したいかな」


「何でだ?」


「雪山エリアなら、今の装備でも攻略できるからだよ。逆に他は、このエリアで取れる素材がないと厳しい」


 俺の中での予定では、雪山、砂漠、火山、熱帯林という順番で進めていくつもりだ。

 参考にしたのは環境因子と距離。

 一番重要視したのはやっぱり環境因子のほうだな。

 特に火山エリアは、雪山と砂漠で採取できる素材がないと、入ることすら危険だ。


「というわけで、最初は雪山エリアのクエストを探そう」


「ほーい。まだ残ってるかな~」


 キリエが一番に立ち上がり、クエストボードへと目を向ける。

 話が長引いたこともあり、ボード前の人ごみは落ち着いていた。

 人が減ったということは、同時にクエストも減っていることを意味している。

 ただ、今回に限っては大丈夫だろう。

 これから俺たちが行こうとしているエリアは、どこも極めて厳しい環境ばかりだ。

 報酬はともかく、あえて選ばないパーティーが多い。

 

 俺たちはクエストボード前に移動した。

 張り出されている依頼書の数は二十を下回っている。

 普段よりも残っていないほうだ。

 ボードを眺めながら、ユイが小さな声でつぶやく。


「全然残ってないね」


「だな。ちゃんとあるのか?」


「どうだろう? あっ、でも雪山エリアのクエストならあるよ!」


 ミアが一枚の依頼書を指差す。

 全員の視線が集まり、ミレイナが依頼書に書かれた内容を読み上げる。


「雷獣の爪一個の納品……これ丁度わたしたちがほしい素材ですね」


「ホントだ! これでいいんじゃないのか?」


 キリエがそう言いながら、視線で俺に同意を求めてくる。

 俺はこくりと頷き、依頼書を手に取る。


「じゃあこれに決まりだな。さっそく出発の準備をしよう」


 こうして、俺たちはクエストを決めた。

 雪山エリアには入るのは、俺も含めてこれが初めてになる。

 未体験のエリアに行くというのは、何度経験しても緊張するものだ。

 念入りに準備はした方がいい。

 ということで、俺たちは一旦ギルド会館を出て、アンディー道具屋へ向かうことにした。


「いらっしゃい!」


「こんにちは、アンディーさん」


「何だシンクか、最近またよく来るな。今日は何がいる?」


「雪山エリアに行くので、防寒具一式がほしいです」


「防寒具だな、ちょっと待ってろ」


 ここは道具屋だけど、武器や防具も取り揃えている。

 雪山エリアは極寒だから、防寒対策はしっかりしていかないとな。

 そうして準備を進め、正午を過ぎた頃に街を出る。

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